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4話 心境

食事も終わり長ったらしい話を聞くのにも限界を迎えそうになった頃、ようやくこの時間から解放してくれる助け船がやってきた。


「あらあら、二人とも随分楽しそうにお喋りしてるわね?」


「そう見えるか?唯が一方的に喋ってるだけなんだけど。」


「あ、ごめんなさいラミさん。だって、お兄ちゃんの話をずっと聞いてくれる人って中々いないから…」


そりゃそうだろ。ていうかこの子、誰にでも兄について語ってるのか。


(なぁ、唯って見た目は良いけどこの性格じゃ男が寄り付かなかったと思わね?)


(え…貴方がそれを言うの…?)


「ねぇ、二人して何コソコソ話してるの?そんなことより何か情報はあったのセーナさん。」


「あ、ごめんなさいね。うん、次に行く場所はこの街の教会で良いみたいよ。ただ、時間が遅いから今日はもう無理だけど。」


「そっかー、それはしょうがないかな。本当は早く終わらせたいんだけど。」


「おいおい、大した自信だな?試練って言うぐらいだからそんな簡単には行かないんじゃないか?」


「うーん、まぁ、そうだとしても私は私の願いを叶えたいから弱気にはならないかな。」


「ふふ、流石は願望者さんね。私達がどう言おうとこの子は憶さないわよラミ。」


「別にあたしはそんなつもりわねーよ。それより、明日試練を受けるってんなら早く休んどいた方が良いんじゃないかい。」


(ごめんね唯ちゃん。ラミってあんなぶっきらぼうだけど貴方の事を心配してるのよ。)


(あ、うん。それは何となくわかってた。)


「今度はあんたらが内緒話かよ。あたしは先に休んでるぜ。」


そうして、あたし達は明日に備えて早めの就寝を取った。あたしはベッドの中で考える。試練は何なのか?唯の話では最初は自分の願いそのものを問われたそうだ。心を試されたのか?ならば次は体を使った試練か?それとも頭脳とか?


そんな事を考えてもあたしやセーナが何かをするわけじゃないのに。唯の願いの為の試練なんだからあの子自信が一人で挑まなきゃいけないに決まってる…何か、あたしが何か出来るとしたら応援するがらいかな…


って、あたしはなにらしくない事かんがえてるんだか…あの子が願いを叶えてくれないとタダ働きになるんだからその為にも頑張ってもらわないと。無駄な事は考えないでとっとと寝よう。




私が(たぶん)死んでから1ヶ月。異世界に来て願いの試練がどうのこうのと言われて、最初は言われるままに思い浮かんだ事を叫んだ。そのままおじいちゃんが紹介してくれたラミさんとセーナさんと一緒に願望者としての旅が始まった。


改めて考えるとゲームとか小説みたいな話だなーって思うね。もしかしたら現実の私はまだ死んでなくて植物状態か何かで夢でも見てるのかもしれない。あ、そうだったらきっとお兄ちゃんは毎日お見舞いに来て話しかけてくれるんだろうなー。もしかしたら、私の為に医者を目指して勉強してるとか?


それはそれで嬉しいけどそれだとお兄ちゃんが笑顔で過ごしてる姿は思い浮かばないなって思うと無しだなって。


だから、私はこれが現実であって欲しい。


あ、でもそれよりも私が死んだ事が夢であって欲しいかな。


そういえば、二人はいつから知り合いなんだろう。私が話してばっかりで全然二人の話を聞いてない…。


陽奈子ちゃん元気にしてるかな?陽奈子ちゃんだけだったな私のお兄ちゃんの話をしても笑って聞いてくれたの。もしかして、お兄ちゃんの事狙ってたとか?陽奈子ちゃんは良い子だけどそれは流石にストップかな。


明日の試練って何するんだろ?あんまり痛いのはやだなぁ…でもお兄ちゃんの為だから頑張らないと。


「うん、そう頑張らないと…はぁ、緊張してるのかな。逆に頭が冴えちゃったかも。」


私は上半身だけ起こして部屋を見渡す。隣のベッドにはセーナさんが、その隣にはラミさんが寝てる。二人とももう寝付いてるのか私には気付かない。


この二人もファンタジー世界の人って感じだよね。ラミさんは真っ赤な髪で乱暴にまとめたポニーテールで鎧をちょっとだけ着けて剣を振り回してお金を貰ってる傭兵だって言ってた。真っ先に魔物と戦ってやっつけていく姿はちょっとお兄ちゃんよりカッコ良くて頼りになるかもって思っちゃったぐらいだし。あと、腹筋が凄いよ。バッキバキだよ。


セーナさんはなんと魔法使いだった!最初に見せてもらったときはライターぐらいの火を出したりそよ風を起こしたり…機械も無しに出来るのは凄いなって思ったけど本気を出したらもっと凄かった。山道で襲われた狼を一瞬で黒焦げにしたのは凄かった。おまけに美人で肩まであるストレートの銀髪は超綺麗。今度、傭兵をしてる理由を聞いてみようかな…正直そんな事しなくてもお金持ちと結婚して生きていけそうだけど…あ、ラミさんも割りと美人だけどそういのは無理かな。


二人ともすっごく頼りになってこの1ヶ月の間は助けられっぱなしだった。でもなんで二人はわたしを助けてくれるんだろう?そりゃ最初は猫被って可哀想な感じを出したけど、化けの皮が剥がれた今はそんな義理も無いだろうし…やっぱり報酬が凄いからかな?価値がどのくらいか分かんないけど0がいっぱいあったから大金なのはわかった。


うん、そうだよね。報酬が目当てで私と利害が一致してるだけだよね。


そう考えればなんだかちょっと楽になる。だって私も二人を利用してるんだから。私の願いの為にも二人は絶対必要だ。だから、最後まで付き合ってほしいな。

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