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12話 海を見に行こう

「おっっっはようございまーす!!!」


唯ちゃんはいつもと同じ様に髪を纏め、私が用意した服を来て元気良く部屋から出てきて私とラミの部屋へと入ってきた。


「一日休んだらすっかり元気になりました!さ、次の試練にレッツゴー!!」


いつもより…ううん、いつも以上に元気の良い彼女の目は真っ赤になっているのがわかった。試練を終えた後、一日だけ休ませてほしいと言ってきた。きっと、ずっと泣いてたんだ…どんな事をされたかはわからないけど辛くて苦しくて折れそうになったと思う。それでも、この子は前を向いて願いの為にまた立ち上がった。


私は…この子が大切な人の為に頑張るのが嬉しかった。この子が大切な人の為に苦しむのが悲しかった。出来る事なら自分の為に生きて欲しいと思った。


でも、きっとそれは私の願いであってこの子は喜ばない。この子はもう立ち止まれないから。


「ねぇ、セーナさん次はどこに行けば良いと思う?」


「えっ、あ、うん…そうね、また大きな聖堂がある街に行ってみれば手掛かりがあるかもしれないけど…」


「て言っても、試練を受ける場所は色々あるんだろ?毎回街の中で受けられるとは限らないんじゃないかい?」


「えー、じゃあラミさんはどこが良いと思うの?」


「あぁ?んなもん、適当に歩いてりゃ見つかるんじゃないか?」


「また、そうやって雑な事を言うんだから…やっぱりセーナさんの言う通りにしてみようよ!」


でも、ラミの言うことも一理ある。願望者の試練は導かれるように受けるものだと言う説も聞いたことがあるし…


「…んー、そうね。それも良いかも知れないけど…ね、唯ちゃんはどこか言ってみたい場所とか無いのかしら?もしかしたらそこで試練を受けられるかも。」


「んー、私の行きたい場所…海とか美味しい物がある街とか。」


「おいおい、遊びに行きたいだけじゃねーか。」


「ふふ、まぁまぁ…それならちょうど良い街があるしそこに向かいましょうか。」


(もし、試練が無くても唯ちゃんが元気になれば良いじゃない。ここは任せてみるのが一番よ。)


(ま、そういう事ならあたしも賛成だよ。空元気なわていつまでも続かないしね。)




それから、海があって食べ物が美味しい街エノマへと旅立ち3日が立った。途中にあった小さな関所で休み峠を越えると塩の匂いが混じった風が流れてきた。


「あ、ねぇ!もしかして、もうすぐじゃない!?早く行こうよ二人共!」


私は二人を置いて走りだし、しばらくすると見晴らしの良い場所に出た。そこから見えたのは大きくてどこまでも青色が続いていく海と幾つもの船が止まっている街だった。


「わぁ…すっごい…」


それは、昔、物語でしか見たことが無い中世の世界そのものでつい感動して言葉が出てしまった。私が感激のあまり立ち止まっていると二人は追い付いてきて横に並び立つ。


「どう?びっくりした?エノマは世界でも一、二を争うほど栄えた港町なのよ?」


「商人やら船乗りやら傭兵やら、中には海賊とかマフィアとかろくでもない連中もいるから気を付けろよ?」


「もう、そんな脅かすような事を言わなくていいじゃない!…とりあえず、街に着いたらすぐご飯にしましょうか。」


「…あ、うん!なんか、凄すぎてびっくりしちゃった。」


そのまま道を歩き、どんどん街へと近づいていく。街の中はどんな様子なんだろう。美味しい海鮮料理が待っている。ビーチで遊んだりも出来るかも。


キャァァァァ!!誰か!だれかー!!


道の先から突然悲鳴が聞こえてくる。木々に覆われて様子はわからないけど女の人の悲鳴が。


「ラミ!」


「あぁ!わかってるよ!」


すぐにラミさんが駆け出し悲鳴の元へと行く。わたしとセーナさんは少し遅れて進んでいくと、大きな鳥に襲われている女の人がいた。


「助けて!助けてください!!」


「待ってな、すぐ、追っ払ってやるよ!」


ラミさんが女の人の元へと駆け寄り剣を振り回して鳥を払いのける。


「今だ!やれぇ!セーナ!」


鳥が二人から離れるとセーナさんが氷の魔法で狙い撃ちした。つららが何本も飛び鳥の羽を貫いて、鳥は飛べなくなり地面へと落ちた。


「ラミ!止めを!」


そして、ラミさんが鳥の心臓を目掛けて剣を突き立てた。一瞬鳥は苦しむがすぐにパタリと動かなくなった。


たぶん、悲鳴を聞いてから三分も立っていない間の出来事だった。相手が一匹とはいえ二人のコンビネーションであっという間にやっつけてしまった。途中、お互いに声を掛け合ってたけど実はそれより早くお互いが動いていたのに私は気付いた。


「格好いい…」


二人の動きは同じ女の私ですら見とれてしまうぐらいだった。本当にこの二人は頼りになる。


「あ…す、すみません…危ないところをありがとうございます…大したお礼も出来ませんが…」


「いーよいーよそんなの。ほら、立てるか?」


ラミさんが手を差し伸ばすと、女の人はそれを何度か空振りした後に掴んだ。ラミさんにゆっくり引っ張られながら杖をついて立ち上がった。


「ん、あんた…もしかして目が見えないのか?」


「あ、はい…そうなんです…すみません…」


「あ、そ、それじゃあこのまま私達と一緒にエノマへ行きましょうよ!もう、すぐ近くですけど…」


「え…でも、それじゃ皆さんにご迷惑がかかるのでは…」


「気にしない気にしない!ほら、行きましょう!あ、私は唯って言います!」


「す、すみません…あっ…私はマリアンと…」


そうして、私はマリアンの手を引きラミさんとセーナさん四人で街へと入っていった。



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