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なんと

第11話 なんと


 かあさん達も蝉に、それもラルカに関係していたなんて、これってある意味運命?それとも呪い?


「かあさん!ラルカを知っているって事は、もしかして親父との馴れ初めにラルカが関係しているとか」


『俊哉さん、そんなに問い詰めないで!お母様にはちゃんと話してもらいましょう』


「お母様、出来ましたらその辺りのお話を伺えると、今の私達の状況の参考になると思うので、是非お願いします」


「そうね、ラルカちゃんに会ったのは30年前、まだお父さんとは付き合い始めたばかりで、お互いの距離感を測っているような時期だったかしら」


 それは、もしかして、ラブラブ・イチャイチャしていた頃の話か、息子として聞くに耐えうるものなのか、少々不安になってくる。つぐみさんの方といえば、興味津々といった感じだ。


「仕事帰りに一緒に食事をしたり、休日にハイキングに行ったり少しづつ二人で過ごす時間が増えてきた時、それは起きたの。週末に夕食をした帰りに、遅くなってしまったのでお父さんが送っていくって…」


 こういったかあさんの話は、前振りが長いので、手に持ったピザをテーブルに配膳していく。つぐみさんは、ところどころ頷きながら母さんの話に没頭しているようだ。


「…で、その道で見つけた幼虫を二人で家の前の木に乗せてあげたの。羽化するところが見たいって私が言ったら、お父さんが、”かなり上まで登ってしまうから無理だろうし、そもそもお寝坊の君には間に合わないさ”、なんて言ったのよ。それで、今日寝ないで…」


「はい、母さん、ピザ冷めちゃうから、ちょっと中断。続きは食べながらでも良いよね」


「あら、ご免なさい。つぐみさんも冷えないうちに召し上がれ」


「はい、お母様。有難うございます」


と言って、俺のとなりに座らさせられている。ナイスかあさん。


「帰ってきたままの格好だったわ、着替えてくるから先に食べていてくださいね。でも、ラルカちゃんは食べられないんだったわね」


「お先に頂いています」


『なんで、お母さんの話の腰を折ったりしたの?』


『かあさんの話は、前置き長いから』


『そこに、大事なことが含まれているかも知れないじゃない』


『そうかなー』


 ふたりでピザを食べながら、絆通信?で会話を続ける。


『ラルカ?さっきから会話に参加していないようだけれど』


『殿があの娘の子とはのー』


『それってやっぱり、貴方の子孫をお母さんたちが助けたって事?』


『うむ、微妙なと頃じゃな。向かっていた木には君の子孫が羽化の準備をしていたので、一緒の場所で羽化できる筈じゃったが』


『それて、かあさんたちが幼虫拉致って、会えなくしてしまった、ってならない』


『いや、あのままノコノコ歩いておったら、踏み潰されるか、猫にでも殺られるかしておった事は確かじゃから、そばの木に付けてくれれば良かったのじゃが』


 そんな会話をしていると、かあさんが戻ってきた。家では何時も見ないような、少ししゃれた格好なのは、つぐみさんを意識してなんだろう。


「それで、お母様その後はどうなったんですか」 


「そうそう、木に幼虫をつけたところまでは話したわよね」


 それから、話は永遠と続いて、ピザ含めてテーブルの上のものが無くなりかけた頃やっとラルカの登場となった。


「それで、お父さんと過ごした朝にラルカちゃんがいたの。いまと同じ格好で、着物を着ていたわ」


 お袋には、つぐみさんと同じような感じに見えていたんだろうが、親父はどう見えていたのだろ?などと考えていると、


「こんな子供が欲しいわね、ってお父さんに声に出さないで言ったら、『ああ、そうだね』って頭のなかに返ってきたの。それが始まりね」


 この蝉の女王さまは、直ぐに絆を繋げてしまう癖でもあるのだろうか?もしかして、俗に言われている、キューピットは実は蝉でした、何て事は有って欲しくない。



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