↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うぐいす姫 ~鬼と呼ばれた姫~  作者: 春野セイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/99

第一章 終わり



 一人ぽつんと残った陽一は肩を落とした。


 いつ会えるんだろう。けれど、晶は約束した。また、会えるって。


 それに、俺……。

 自分の気持ちを伝えていなかった。


 俺、今なら、はっきり分かる。

 晶のことが好きだ。


 陽一は心で言った。言ってからひどく照れて頭を掻いた。

 この照れくさい告白が届いたかどうか分からないけれど、たぶん、分かってもらえている。


「ねえ、夜久弥」


 鬼が、夜久弥の袖を引いた。


「早く陽一をおうちへ送ってあげようよ」

「了解」


 夜久弥が言って、陽一の肩に手を置いた。


「さあ、還ろう、陽一くん」

「夜久弥さん、いろいろ迷惑かけちゃってすみませんでした」

「何言ってるの」


 夜久弥が笑う。


「僕は鬼が来てくれたから、本当に嬉しいんだ。ありがとう」


 鬼は、夜久弥のそばにくっつくように立っている。

 金色の長い髪と赤い瞳をしている鬼は、まるで幼い晶を見ているような感覚だった。


 そうだ。俺は結局、陽一郎の記憶を取り戻さなかった。


「ねえ、夜久弥さん、俺、まだ知らない事がたくさんあるような気がするんだけど」

「確かにね。ハンターたちの謎も解明できていないし。でも、これからの君はたぶん、以前の君じゃないと思うよ」

「え? それってどういう……」

「さあ、還ろうか」


 鬼が駆け寄って、陽一のシャツを小さな手でつかんだ。


「陽一、おうちに帰ろ」


 鬼が嬉しそうに笑った。




 黄泉の国へ行く時は怖い思いをしたのに、自分の家までは一呼吸だった。

 気づけば家の前にいて足が地面についているのを感じると、陽一はすぐに空を見上げた。

 月は見えない。新月だからだ。けれど、さっきまでは真っ暗だった空に小さく光る星が見えた。


「じゃあね、陽一くん」

「あ、待ってください」

「ん?」

「ありがとうございました」


 深々と頭を下げた。


「うん。よかったね」

「あ! 鬼……鬼って言いにくいな。お前も元気でな。名前、付けてもらえよ」

「バイバイ、陽一」


 鬼はそれだけ言うと、夜久弥と共に消えてしまった。


 晶……。


 名前を呼ぶ。けれど、もう地球《ここ》にはいない。

 もう一度、空を見上げる。あの空の向こうに晶はいるんだ。


「晶……」


 呟いてから、陽一は一度うつむいた。


 会いたい……。

 そう思ったら、涙が出た。

 本当にまた、会えるのかな。

 考え始めたら怖い。けれど、約束したから。

 陽一の頭の中から晶が消えることはなかった。


 俺は絶対に忘れない。忘れたりしない。忘れるものか、と、晶の名前を呼んだ。

 きっと、この声が届いていると信じている。


 俺、ずっと晶のこと思っているから。




                          第1章 終わり


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。