うぐいす姫
陽一は、自分の力に驚きながらも自信をつけていた。
欲しかった力が溢れてくるようだった。
夜琥弥は戦っても勝ち目がないと思ったのか、腕を組むと宙に浮かびあがった。
「その物騒な手を下ろしてくれ、僕は敵じゃない」
「あんたは俺の敵だ」
「君に危害を加えたくないんだ」
夜琥弥の言い方がむかつく。
陽一は、ぐっと腰を低くしてから飛び上がった。
夜琥弥のそばまで追いつく。
しかし、夜琥弥の表情は変わらずクールなままだ。
「仕方がない」
夜琥弥がため息をつくと、一瞬で辺りが真っ暗闇になった。
「なっ」
陽一は驚いてきょろきょろとまわりを見渡したが、闇に放り込まれ自分の姿すら見えない。
「な、何をしたっ」
――僕は月読命。甘く見ると痛い目を見るよ。
低い声に陽一はすくみあがった。
しかし、声はそれを最後に消えてしまった。まわりの景色が見える。
陽一はゆっくりと地上へ降りて息を吐いた。
ものすごい力に息ができなかった。
何者だろう。
月読命って聞いたことがある。きっと、朋樹なら詳しいはずだ。
陽一はスマホを取り出して朋樹に連絡しようとした。
「先客だったかの」
突然の声に驚いて振り向くと、晶が立っていた。
「晶っ」
思わず携帯を取り落としたが、晶がそれを拾ってくれた。
「ほれ、気をつけよ」
笑顔で手渡されたが、陽一は驚きで声が出なかった。
晶の髪は伸びて、巫女姿をしており、さらに角と牙まで生えていた。
「お、鬼、お前、鬼だ」
陽一が指さすと、鬼の顔が歪んだ。
「その呼び名は嫌いじゃ、我が名はうぐいす姫である」
「うぐいす姫?」
スマホを握りしめる手に力がこもった。鬼はそれに気付かず、にこにこと見ていた。
陽一はぶるるっと震えた。
「お、鬼、俺に近づくなっ」
陽一の叫びが聞こえないのか、うぐいす姫はすました顔で言った。
「陽一郎、迎えに来た。我と参ろうぞ」
「へ?」
うぐいす姫は陽一の腕をつかむと、ふっと浮かび上がった。空には月が出ていたが、ほとんど欠けていた。
「月はまぶしくて敵わぬわ」
うぐいす姫がまぶしそうに目を細めて空いた手を振ると、雲が月を覆った。
「よい」
陽一は恐怖で震えながらも、うぐいす姫の鋭い手につかまったまま逃げられずにいた。
「ど、どこへ行くんですか?」
知らずうちに敬語になる。
鬼はにたりと笑った。
「我らの社じゃ、この時を待っていたぞ」
「晶は? あいつはどこへ行ったんですか?」
「晶とは我の事、我の中に晶はおるぞ」
陽一はとっさに晶の名を呼ぼうと思った。しかし、
「無駄じゃ、晶にはもう届かぬゆえ」
うぐいす姫が淡々と言った。
どういう意味だろう。
陽一は思ったが怖くて聞けなかった。
拙作をお読みくださりありがとうございます。
こちらの作品は、2024年よりカクヨム様にて推敲しなおして、再度連載を始めました。
まだ、なろう様の方の部分の方がかなり進んでいるのですが、もし、ご興味がありましたら、カクヨム様にて読んでいただけると幸いです。
ありがとうございました。




