乱れ
陽一の気配に乱れがある。
晶は食後にテレビを見ていたのだが、体を起こした。
「晶さま?」
「陽一がハンターと接触をしたようだ」
「えっ」
舞がびくっとして身を震わせた。
「行ってはなりませぬ」
「しかし、陽一の身に何かあってはならぬゆえ」
晶がゆっくり体を起こすと俊介が立ちはだかった。
「俺も一緒に行きます」
晶は何事か考えていたが、仕方ないと頷いた。
「舞はここで待っておるのだぞ」
「はい…」
本当は一緒に行きたかったが、舞は言い出せなかった。
自分には晶を守る力はない。
晶の身辺のお世話をするしかないのだ。
「お兄様、晶さまをお願いいたします」
「当然のこと」
晶が俊介の肩に手を置いて、二人は消えた。
俊介と晶が降り立った場所は、以前のマンションの近くだった。
「陽一はマンションに向かっていたのだな」
気配を手繰って少し進むと、陽一が道の真ん中で茫然と立っていた。
「何をしているのだ?」
晶が首を傾げた。
「姫さまハンターは」
「うむ」
用心して気配をさぐったが、誰もいない。
「大丈夫じゃ。接触してすぐに消えた」
晶はそう言うと、陽一の方へ歩いて行った。
「陽一」
「あっ」
陽一は、晶を見て目を見張った。すぐに、背後にいる俊介に気づく。
「誰、そいつ」
俊介がむっとしたのが分かった。晶は小さく振り向いて俊介をなだめた。
「この者は舞の兄だ」
「舞ちゃんのお兄さん…」
舞の名が出たのに、陽一の反応が薄い。
「陽一、ここで何をしておるのだ」
「お前に会いに行こうと思ったんだよ」
陽一が吐き捨てるように言った。
晶はどきりとした。
「なぜ?」
「なぜって…」
陽一は少しためらってからスマホを見せた。
「これだよっ」
晶は首を傾げてスマホを見た。
「我の写真か。なかなか綺麗に撮れておるだろう」
にこりと笑う。陽一は動揺した顔で少し体を離した。
「これを見て分かったんだ。お前がうぐいす姫だって」
晶が目を見開く。
「どうして嘘をついたんだよ。俺が間違っているのを知ってバカにしていたんだろう」
晶は首を振ったが、声が出なかった。
「そんなつもりはない…」
「なら、初めて会った日に訂正するべきだったんだ」
「陽一とやら」
俊介がたまりかねて口を挟んだ。
陽一は、俊介に驚いて肩をすくめた。
「な、何ですか」
「姫さまはそんなお方ではない。そもそも間違えたのはそなたであろう」
「あ、あんたも、うぐいす姫の部下なのか」
晶をじろりと睨む。
俊介が晶を庇うように立ちはだかった。
「姫さまを愚弄するようなら許さぬぞ」
「よせ、俊介」
晶がため息をついた。
「陽一、我が悪かった。お主を笑っておったのではない。舞を気に入ったのであれば、それでよいと思ったのじゃ。我はお主が幸せならそれでよいのじゃ」
陽一は顔を真っ赤にさせた。
何か言おうとして、唇を噛みしめた。
「それでいいんだな?」
「…え?」
「うぐいす姫と俺は出会うべきだったんだろう。でも、お前はそれを否定した。俺とお前は運命の相手じゃないってことだろ!」
陽一は何だか傷ついているように見えた。
「すまぬ」
「そのすまぬってなんだよ、はっきり言え」
陽一が手を伸ばして晶の手首を握った。陽一に握られた手首が熱く燃える。
「わっ」
陽一が驚いて手を引っ込めると、晶の手が焼けただれていた。
拙作をお読みくださりありがとうございます。
こちらの作品は、2024年よりカクヨム様にて推敲しなおして、再度連載を始めました。
まだ、なろう様の方の部分の方がかなり進んでいるのですが、もし、ご興味がありましたら、カクヨム様にて読んでいただけると幸いです。
ありがとうございました。




