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写真




 マンションに戻ると、俊介が夕食の支度をして待っていた。


「お兄様っ」


 舞は兄を見るなり、つかつかと近づいた。


「今日は何をしていらっしゃったのです? ちゃんと晶さまの護衛をしてくださったのでしょうね。わたくしはきっとお兄様が助けに来てくれるとばかり期待していたのに」


 俊介は静かに息を吐いた。


「俺には刺激が強すぎてね」

「はあっ?」

「まあ、どうでもいいことだ。ちゃんと姫さまのその…、見守っていたさ」


 言葉を濁すところ見ると、見守っていたのは間違いないようだ。おそらく、晶の水着姿に見惚れていたのだろう。

 舞は怒りで頭が沸騰しそうだった。


「わたくし汗を流して参りますわっ」


 風呂場へと向かって行く。

 晶は不思議そうに首を傾げた。


「なぜ、あのように怒っておるのかの」

「妹は短気ゆえ、姫さまにご迷惑をかけておりませぬか?」

「まさか、舞がおらんかったら我は生きてはいけぬ」


 晶はソファに座った。

 眠気で目をこする。


「疲れたのでございますね。水の中で泳げばそうなります。その…姫さま、次からはプールとやらはお断りなさった方がよいかと思いますが」

「そうだの。水の中で襲われたらたまらぬな」


 晶は戯言ざれごとのつもりで言ったが、いつ、何が起きるか分からない。


「腹が減ったの」

「ご用意しております」


 俊介の食事は和食が多い。舞が太るのを気にするからだ。

 俊介がテーブルに食事の用意をしていると、晶の携帯電話が鳴りだした。

 見ると、さっそく朋樹からだ。ラインを開くと、写真が欲しいとあった。


「写真?」


 晶は首を傾げた。


「俊介、写真の撮り方を知っておるか?」


 俊介は首を振った。


「ま、当然じゃな。そういえば、舞はカメラが使えたな」


 機械音痴の舞だったが、晶の姿は残しておきたいと、一時期、夢中になって晶ばかり撮っていた。

 風呂場に行って舞に尋ねる。


「舞、カメラを借りてもよいか」

「机に置いてありますけど、何に使うのですか?」


 舞が中から答えた。


「朋樹が我の写真が欲しいと申しておってな」

「えっ? あ、晶さまっ」


 水が跳ねる音がしたが、気付かず舞の部屋に入り、机の上に置いてあったカメラを手にとって部屋を出た。

 写真を確かめる。髪が長かった時の写真ばかりだ。


「仕方ないの」


 晶は呟くと、スマホとカメラをUSBケーブルでつないだ。

 俊介がそばに来てその作業を見ている。数枚を適当に選んだ。


「姫さま」

「ん?」

「俺にもその写真をください」


 俊介が真顔で言う。


「かまわぬぞ」


 朋樹に送信してから、カメラを俊介に渡した。


「好きにしろ」


 俊介はカメラをいじりながら、ため息をついた。


「どうした? ため息などついて」

「いえ…、何でもありません」


 含んだ言い方をして俊介は首を振った。


「何か、おかしな写真でもあったかの」

「そうではなくて、どれも捨てがたくて」

「そうか。しかし、なぜ、朋樹は我の写真が必要なのじゃ?」


 晶は不思議そうに首を傾げた。

 その隣で俊介は、姫さまは隙がありすぎる…と別の意味で息を吐いた。






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