表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

カミサマは突然に...?

窓の外でおっさんが浮いていた と言うのが1番イメージしやすいだろうか。


コンビニのバイトの夜勤明けの朝、眠りから覚めると、俺こと、俊彦の愛する4畳半の窓際から朝日が覗くはずの位置に、太陽を背にし、まばゆいほどの後光に包まれた何かが浮いていた。


どこかのアニメで見たような金色に光るもくもくとした煙のようなものに鎮座して、まばゆいおっさんはこちらを見下ろしている。


俊彦は直視しようか少しまよったが

仕方ないので徐々に視線をあげていくことにした、おっさんはあまり見たことのない衣装を見にまとっているようだ。


白を基調とした生地にところどころ金の刺繍がはいったバスローブのようなものを纏い、白髪に立派な白いあごひげをこしらえ、左手には木製の杖のようなものを握っている。


そこまで確認するとすぐに、俺は窓辺にすたすた近寄ると、静かにカーテンを閉めた。

どうやら最近バイトのしすぎで幻覚でも見ているらしい。


この前テレビでも「ストレスによる目眩」の特集かなんかをやっていたような...


今日も朝からバイトである

はやく、朝食を済ませて出発しなければならない

「そういえば、冷蔵庫に賞味期限切れかけのベーコンがあったような...」


そうぽつねんとつぶやいた途端、


『『ズカッシャー!!!バリリン!!』』



突然の音に振り返ると、2枚しかない俺の窓ガラスを、木製の杖が粉砕したとこだった


「...へ??」


あまりの衝撃的なシーンに唖然としているのをよそに、おっさんは窓から侵入してトコトコこっちにやってくるではないか


ちっさい。このおっさんちっさい。

身長は150cmもないだろうか

おまけに、頭がでかいせいか、3頭身のフィギュアのようだ


まるで威厳を感じない


小さなおっさんは俺の前で止まると

ガラス破片がザクザク刺さった木製の杖を俺に突きつけて肩をワナワナさせて言い放った



「無視すんなやワレィ!!ワシ無視するとはどういう神経しとんねん若造!」


ずいぶん歴史を感じる河内弁を炸裂させると、ちっさなおっさんはガラス破片の刺さった凶器を目の前でブンブンしはじめた


「ごめんなさい!なんかよくわかんないけどごめんなさい!...ってか誰!」


(ブンブン!)


そんな凶器でブンブンされたらバイトどころじゃすまないに決まってる


「ワシ怒ったら怖いねんで!どれくらい怖いかって?10万ボルトわかるやろ?!あれよりビリビリするっちゅーこっちゃ!」


なんとも安っぽい例えをかましてくるおっさんである


(ブンブンブン!.........ヒュッ!!...)



突然、小さなおっさんの手からすごい勢いで凶器がすっぽぬけた



「ヒッ!!」



(ザシュ!!)



凶器は悲鳴をあげた僕の右耳あたりを高速でかすめると

さっきまで開けようとしていた冷蔵庫の扉にぶっ刺さった


一瞬、唖然とする2人

しばし、沈黙のまま見つめ合うと

おっさんは顔を真っ赤にして怒り出した


「貴様!!我が秘宝キュラウノスをワシから奪うとは何事か!!」


小さなおっさんが冷蔵庫のほうを指差しながらわめいている


「すみませ......いや待って!理不尽な!人の家の窓ぶち割って侵入しといてなんと理不尽な!」


思わずツッコミをいれてしまった

、が、おっさんはお構いなくピッチャーの投球フォームのような姿勢をとると右手にバリバリと光る玉のようなものを作りだした


「ええい!やかましい!ワシに歯向かった罰!その身にとくと刻むがいい!」


どうやら人の話を聞くつもりは、ハナからないらしい



もう何がなんだかわからないけれど

俺ここで死ぬのかもしれない

そんな気がした


「海を裂き、空を割りし閃光!喰らうがよい!!ユピテルゥサンダァァー!!」


「え!待って!なんかそれ痛そうだから!ちょ!バリバリいってるって!」


突然のことに身構えたものの


(母さん、父さん、こんな最期で...なんかごめん)


そう念じて僕は少しに目を細めた


(...ってかこいつ誰...)


そんなこと考えながら覚悟を決めた瞬間


「...はて...ワシここに何しにきたんやっけな...」


そう言って

おっさんはゆっくりと姿勢を元にもどした。立派な白いあごひげを撫でながら頭をポリポリかいている



(さんざん殺意を俺にむけてきた挙句、こんなタイミングでボケるかよこのじじい...)


と思ったのを口に出さないよう気をつけながら

おずおずとしゃべりかけることにした


とりあえず生きるために



「あのー、すみません?」


「なんじゃ?」


あごひげを撫でながら、彼はふてぶてしい顔をこっちに向けた


「えーと、その...一応”初めまして”ですよね?」


「そうじゃな、愚民ごときがワシの要件とはなんぞや」



「そのー...その愚民ごときが聞くのもあれなんですが、、どちら様でしょうか?」


小さなおっさんは目をきょとんとさせた


「そういえば身分を明かしておらんかったかの......ならば、聞いて驚け!!」


おっさんちょっと嬉しそうである


そして3頭身は偉そうに腰を手に当てると


「我が名はゼウス!!オリュンポスを統べる神にして、すべての存在の上に君臨するものなり!!」



(ぴしゃーん、ごろごろ)


「......」



嫌な予感はしていた

人ではないっぽいことはわかってたけど



そう思いつつも、身長だけは負ける気がしない3頭身に

残念ながら威厳のカケラもらなかった


(ゼウスってなんか偉い神様だったような......もしかしたら願い事とか聞いてくれるかもしれない)


もともとずる賢いことに自信のある俺はすぐさま思考回路を加速させてみる


「あのー、、、カミサマ?」


まさかの猫なで声である


「む、なんじゃ?」


こいつはまだ腰に手を当てたまんまである


「立派なカミサマに出会えてまことに光栄です!あなた様に会えたこともきっとなにかの導きかとお思いします。僕の願いご...」


「嫌じゃ」


即答


「帰れや、じじい」


こちらも即答


「貴様ァァ!!誰に向かって口を聞いておるんじゃ!!ユゥピテルゥゥゥ!!...(バリバリバリッ)」



「ちょっ!タイムタイム!なんでそんなカミサマがウチにくるんですか?!」


ゼウスは呆れた顔をしながら

振り上げた右手をさげた


「...それも説明せねばならんのか...お主今朝、手紙かなにか届かなかったかのう?」


「手紙??」


実感はわかないが、とりあえず玄関先の郵便受けをチェックしにいってみる


アルミ製の板をあけ、中を覗いてみると


トゲのような突起がいっぱいついたグルグルの大きな巻き貝が1つはいっていた


(なにこれ...)


見たこともない貝である


取り出して見てみると、同時に青い手紙がはらりと床に落ちた


屈んでそれを拾いあげてみると


宛名欄に


”ゼウス様へ”


と達筆な筆で書いてある



おっさんはこっちにやってくると、俺の手から手紙をむしりとった


「やはり来ておるではないか!あいつめ!憎いことをしおるのう!」


少し嬉しそうにしている白髪を横目に、

俺はさっきの見慣れない貝に、文字が彫られていることに気づいた



(なになに...トリトンより...?)


どこかで見たことあるような名前に

少し気になりながらも

俺は窓ガラスの散漫した四畳半を見渡した


なんでこうなったのか、わからない。

隣で、あごひげがチャーミングなじじいがまだ手紙を見ながらニヤニヤしている


ベーコンを取りにいくはずだった冷蔵庫には、謎の杖という名の凶器が刺さったままだ


この悲惨とも言える状況を見て言えることは1つだった


「今日はバイト...休もうかな」


隣で「ゼウス」と名乗ったおっさんのニヤニヤは、しばらく止まりそうになかった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ