自己証明の問題
第一問。
自分が自分であることを、五十文字以内で証明しなさい。
僕が僕である証拠は、何処にあるのか。
時々そんな突拍子もないことを考えてしまう。今ここに生きて、呼吸して、思考して、そうやって確かに存在している僕は、しかし本当に僕なのか?
そもそも僕とは何か。
この肉体のことか、この精神のことか、この記憶のことか、この経験のことか。
一体どれを取れば僕で、逆にどれを取れば僕ではないのか。
そこの君だってそうだ。
君が君であることを、君は確固たる証拠と確証と信念を持って証明出来るのか?
出来るのかもしれない。
僕は君のことをよく知らないから、ひょっとしたら君は、僕の問いに対する解答を持っているのかもしれない。
それならそれでいい。
君が君であることは、きっと良いことだ。
でも僕には、分からない。
何がなんだか分からない。
意味も分からず生まれて、意味も分からず成長して、納得のいく説明もないままに生きてきた。
人生とはそういうものだと思っていた。
今もそんなものだと思っている。
そんな僕が、僕という存在であることを証明することも出来ない僕が、生きているということに実感さえ持てない僕が、果たして僕だと言えるのか。
僕という人間はそれほどまでに空虚で、異端で、どうしようもなく終わっていて、あるいは始まってすらいない。
それが僕なのか。僕とは一体誰のことだ。
僕が僕じゃないなら、はたして僕とは誰なのだ?
確固たる回答があるだけ、数学には救いがありますね。