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20. 現れる

大変お待たせいたしました。

工事現場、突入です。

 †


 ――ご迷惑をお掛けします


 そんな一言と共に工事現場で一度は見かける、ヘルメット姿の作業員が頭を下げているイラスト。それを横目に、俺たちは工事現場へと侵入した。

 先頭はお銀さん。次いで、カナ姉。雲璃さんに由良、モケ子、そして殿が俺。

 カナ姉が開けてくれた出入り口を抜ける瞬間、液体の幕を潜り抜けたような感触がした。


『な、なんでしょう今の感覚は……』

「普通の空間から、封印された領域へと入り込んだのじゃ」


 魔術的な結界の内部に入り込むと、たまにこういう感覚を得ることがある。

 

 簡単に言えば、結界とは≪擬似的・一時的な異世界構築≫であるという。≪界≫を結ぶことで≪こちら側≫と≪あちら側≫を区別する。区別された≪あちら側≫は、こちら側とは違う何らかの法則(ルール)が施術者によって課せられていることが多い。

 ……身近な結界の例で言えば、神社だろうか。

 神社を囲う仕切りの内側を、≪境内≫という。境の、内側。

 それは世俗と神域を区別するための、ある種の結界なのだ。


「上手い術者が仕掛けた結界だと、くぐった時の今みたいな違和感が殆ど無いと聞いたことがありますが……」

「そうだな。術者の腕にもよるし、結界の規模や種類、あるいは目的にもよるだろう。縄張に獲物を誘い込む目的ならば、今のような違和感はない方が良いに決まっている」


 由良の質問に答えたのは雲璃さんだ。さらにカナ姉が続ける。


「もっとも、今回の場合は別に術者の腕がどうこうって感じではなさそうなのだけどね」

「そうなのか?」

「うん。さっき結界を解いていて思ったんだけど、外の結界とこの封印って……なんか別の人が仕込んだような感じがするのよねぇ」

「ふむ、術者が二人おる、と?」

「なんとなく、クセが違っていた気がしますねぇー。特にこの封印の場合ですと、雑というか……慌てて急いで拵えたような印象を受けましたよ。普段奇麗な字を書く人が、慌ててメモを殴り書きした、みたいな。それに比べると外の結界と隠蔽は急いでいるなりにもっと丁寧な仕事をしていたように思います」

「ふむ。記憶に留めておこう」


 お銀さんはそう言うと、辺りを見回した。皆もそれに倣う。


 そこに広がっている光景は、なんと言うか――工事現場だった。

 いや、工事現場であるのは勿論その通りなのだが、何か違和感が残る。


 野球場くらいの広ささにそこに、俺たちはその半ばほどまで入り込んでいる。

 端の方にはプレハブ小屋が見える。

 むき出しの地面。重機やトラックを入れるために、荒くだが均されている。

 伐採されて端に纏められている木々。

 向こうの方には、夏だというのに枯れ葉すら残っていない木々の森。

 そして、巨大な岩が二つ、森の手前に転がっている。


 そこかしこにある重機は物言わぬオブジェと化し、物静かなこの空間の中で異様な空気を醸し出す役割を担っていた。照りつける太陽にすべてのものは色がくっきりと出ているのに、その影だけは黒々と際立っていて――


「……変な空気じゃの」

「どうなされた、社長」

「鼻が詰まったような感じがしてたまらんわい」


 雲璃さんとお銀さんがそんな話をしている一方、


『……ぞ、象さんも今日はお休みなのですかね?』

「象?」


 モケ子の言葉に思わず聞き返すと、『アレですよ』と指さしたのはショベルカーだった。あれが、象? 鋼鉄の一本腕が鼻として……なるほど、伝聞でしか象というものを知らなければそういう勘違いもあるのかもな。


「あれは象じゃないぞ。あれはショベルカーと言ってだな……」


 俺がそうモケ子に説明をしようとすると、由良が遮るようにお銀さんに話しかけた。


「おかしくありませんか?」

「む、どうした?」

「蝉の声が、しません」


 ――言われてみれば。

 さっきまで煩いほどジィジィ鳴いていたものが、ピタリと鳴きやんでいる。


「こういう空間範囲を指定しての結界や封印だったら小動物やそれこそ蝉ごと内部に取り込むものだと思うのですが――」


「……そもそも、何でここは封印されているのだ?」


 この場に結界と封印、果ては隠蔽術まで施した者の正体も真意も、今は不明だ。

 だが意図はハッキリしている。ここに誰も立ち入ってほしくなかったからカギを掛けて隠した。


 そして。


 ここにある何か、あるいはここにいる何かが外に出てはマズいから、封じた。


 だが見たところ異様な雰囲気ではあるが、この工事現場を魔術的に二重三重に封鎖しなければならない何かは、パッと見では見当たらない。


「……要。どうだ?」

「――何もいませんね」

 

 カナ姉が答える。彼女はいつの間にかその額だけでなく、頬や肩は勿論、細い腕にもむき出しの脚にも、大小無数の瞳を開いていた。その一つひとつがキョロキョロと辺りを見回している。

 先ほどまでの眠そうな顔などどこへ行ったのか、これ以上ない真剣な顔つきで彼女はみんなに告げた。


「異常事態です。これだけの広い範囲に、私たち以外の生命活動を検知できません。蝉の一匹、小鳥の一羽すら。向こうの木々も、完全に立ち枯れて――いえ、訂正します」


 そこ――と、カナ姉が指さした先に、何かがいた(、、、、、)


 濁った(、、、)半透明の(、、、、)粘液の(、、、)()


 それが地面から、ズル、ジュルという音を伴って、湧き出てきている。直感的に思うのは、ここの封印も結界も、コイツのためだということだった。

コイツを封じて外に出さないために――


 粘液の塊から感じるのは、明確な妖気である。

 だが、お銀さんやカナ姉から感じる妖気のように鋭く透き通ったような感じは全くしない。粘液の色同様濁ったドロドロとした感じ。

 幾ばくかの知識と経験から、妖気に透明感がある場合、その妖怪には理性があることを期待できることを俺は知っている――理性的だからと言って好戦的でないとか人間を襲わないとかはまた別の話だけど。


 しかし、妖気が濁っている時には話が変わる。


 濁った妖気の妖怪は、理性など殆どなく、凶悪で、躊躇いなく周囲に襲いかかる。要は魔獣とか魔物とかと総称すべき存在である。


 目の前の≪スライム≫が、まさにそれだった。


「――退くぞ!!」


 お銀さんが叫ぶのと同時に、ソイツは動いた。



  †



 一般に≪スライム≫と言えば、某有名RPGの青いザコ敵を思い浮かべる人も多いことだろう。序盤も序盤に出てきて、操作キャラの経験知稼ぎのために狩られる存在。


 だがよく考えてほしい。

 なぜスライムは、ザコ扱いなのか。


 もちろん、その位置づけであるとゲームシステム的に決定してあるから――という答え方もできる。


 しかしもう一歩踏み込んで考えたときに俺が思うのは、あのスライム、スライムと言いながら実はゼリーのような固体であるからではないか、だ。であるからこそヒノキの棒やこん棒、あるいは刃物で簡単に退治できる。

 

 実際のところは分からない。あんな笑っているのかいないのかわからない顔のモンスターなんて存在しないからな。 

 だが、もっと踏み込んで考えてみて、スライムというものが本来の通りに、≪粘液で構成された化け物≫であれば、序盤の雑魚なんていう低い難易度には収まらないということは簡単に想像できる。


 何せ物理攻撃が効かない。

 

 ヒノキの棒どころか必死の思いで貯めた金で買った鋼の剣も、いくら叩きつけても飛沫を飛び散らすばかり。斬っても殴っても飛び散ってはまた元に戻るとなれば――

 冒険を始めたばかりの主人公たちにとって、スライムは、絶望の代名詞となるだろう。


 もちろん、対策はいくらでもある。

 物理攻撃が効かなくて絶望するのはゲーム開始直後のRPGの例え話であって、俺達のことじゃない。


 物理が効かないなら、魔法を使えばいいのだ。



  †



「うおおおッ」

 

 お銀さんが、こちらに向かってくるスライムに向かって吼えた。

 夏の陽光を反射してきらめく銀髪が、同じ色の妖気を纏って揺らめいて――彼女が隠していた耳と尻尾が現れる。

 尻尾の数は、三本。

 九尾の狐であるお銀さんは、その名の通り本来は九つの尻尾を持っている。だが、ある理由から彼女は自らに封印を施しており、その状態では本来の力の三分の一までしか振るうことができない。そしてその封印は自分で解くことはできない。

 つまり、この三本の尻尾は現在の自分では最大限の力をもって当たるべき危険と判断した証しとなる。そのことが俺たちにとって雄弁な警告となった。

 その尻尾から銀色の妖気が溢れだし、それは高熱を発する銀色の妖炎となった。


 粘液質な音を立てながらスライムが寄ってくる。速い。


 俺たちはお銀さんを先頭に左右に展開する。俺はお銀さんの右に、由良は左に。

 物理戦闘特化の雲璃さんは殿、そしてうろたえるモケ子を守るようにお銀さんの後ろにカナ姉が構える。


「――布留部ノ銀孤が放つ狐火、たんと食らうが良い!」


 膨大な熱量を有する銀色の焔が波打つように、目前に迫っていたスライムに襲いかかる。

 灼けた石に水をぶちまけたような音と、強烈な異臭を伴う煙が発生する。スライムであっても痛みは感じるのか、今のでスライムの動きは止まった。


「今の内に下がるのじゃ!」


 お銀さんの言葉に、全体が油断なくスライムを見据えながら後ろへと下がる。由良はいつの間にか取り出した鉄扇を広げ、俺は両腕に充分な量の霊気を宿して。

 お銀さんの声に含まれているのは警戒。一時的に動きは止めたが、まだヤツは生きている。大量の煙を吹いてはいるが、その体積はまだ半分にも減ってはいないのだ。

 ゲームと違って、戦闘は本当の命のやり取りだ。予定外のモンスターとの不期遭遇戦など本来はするべきではない。そもそも俺やお銀さんはモケ子について調べにここまで来たのだ。戦闘用の装備など有ろうはずも無い。


「……社長。マズイことになっています」


 カナ姉の、緊張を孕んだ声が耳に届く。


「先ほど、このスライムが現れる直前まで私にも捕捉できなかった理由がわかりました」

「それは?」

「地面です。そこに現れたのは、ヤツの全体にとって一部でしかありません。この工事現場一帯の地面に、奴は染み込んでいます。私たちはヤツの上に立っているも同然です」

「「「な――!?」」」

『……?』


 その言葉にモケ子を除く俺たち全員が絶句する。

 同時に炎を浴びてもがいているスライムに動きがあった。周辺の土から、再び溢れだす様にスライムが――大量に。


『な、う、後ろにもいますよ!?』

「何ッ!?」


 モケ子の言葉にいち早く反応して見せたのは雲璃さんだった。

 いつの間にか音も無く現れていたスライムが飛びかからんとする場面だった。


「クソッ、舐めるな!」


 受け止めるかのように前に広げられた、雲璃さんの両手。その間には巨大な蜘蛛の巣が張られていた――妖気を帯びた蜘蛛の巣はスライムの突進を見事に受け止めた。焼かれ、異臭と煙が広がる。

 その頃には俺もまた、正面にスライムの塊が現れてその相手をするハメになっていた。


「くッ、そッ!」


 霊気で両手をガードしていればスライムを掴んだり殴ったりすることができる。単なる物理攻撃では飛び散るだけでも、霊気が触れた部分だけは焼き潰せる。あんまり効率的な方法ではないが――なんとか攻撃を防ぐことはできなくもないか。


 そして、俺たち一行の中で最も効率よくスライムにダメージを与えたのはお銀さんと、意外なことに由良である。


「――急急、如律令!!」


 あいつは今回、この工事現場を調査する目的でやって来ていたからな。最低限の備えとして武器を持ってきている。

 あの鉄扇を構成する七枚の鉄鋼版は特別製で、それぞれに呪文を特殊な方法で刻みこんであるらしい。霊気を流し込むだけで、その鉄板に対応した術を起動することができる。お銀さんの符術が一回限りの使い捨てなのに対して、こちらは制限回数無しで、威力も高い。その分消費霊力も多いとのことだったが――


 由良の、術を起動させる結句に応じて発動したのは、極低温の冷気だった。範囲指定の超局所的ブリザードが、由良の前にいるスライムを一瞬で凍りつかせ、醜悪な色をした氷柱へと変える。

 ピシリ、と音がしたかと思うと氷柱は粉々に砕け散った。

 キラキラと夏の太陽に輝く氷粒が場違いな幻想さを演出する。

 しかし、それを成し遂げた由良の横顔に達成感や勝利の余韻など微塵も存在しない。砕けて地面に散らばった氷の欠片を飲みこむようにしみ出てくるのは、今しがた氷柱となったそれに倍する大きさのスライムであるからだ。

 

 いや、一体だけではない――


 粘液質な音を立てて、右にも、左にも。スライム達が現れる。

 お銀さんの振るう業炎がいくら襲いかかろうと、由良の氷術で氷塊と化そうと。俺と雲璃さんの術では奴らの体積を効率よく削ることができないのが厳しい。


「くそ、このままじゃジリ貧だぜ……!」


 先ほどから、移動速度が落ちていた。前からだけでなく、後ろにもスライムがいるせいだ。完全に陣形を間違えた結果だ。最も相性のいい由良かお銀さんと雲璃さんの位置を入れ替えて、強引に突破するのが正解だった。

 悔いても、遅い。


「くそッ……」


 悪態をついたところで事態は全く好転することは無い。俺の前に伸ばされて来た触手を手刀で叩き落とす。触手の先端は地面に落ちてのたうっていたが、地面の中へと溶けて染み込んで行く。


「剣ちゃん、左からッ!!」


 背後からカナ姉の声が飛んできた。目の前のスライム二体の触手を捌くのに集中していた俺の視界の端に、また別方向からの触手――


「うお――ッ!?」


 いや、その質量は触手などと呼べる範疇ではなかった。成人男性ほどの大きさのスライムが、身体ごと突っ込んできた様なものだった。それも恐ろしい速さでもって。

 とても手刀で捌き切れる質量じゃない。

 俺は咄嗟に地面に身を投げ出す。頭上をスライムの塊が通過するのを、文字通りの紙一重で避けた。

 しかし一回転して身を起こした瞬間。


「――ッ!?」


 地面から、無数の触手が飛び出して来る。

 両腕を振るって数本を叩き斬るが、そんなのでは間に合わない数の触手。

 腕と言わず脚と言わず、無数の触手が俺の身体に纏わりつき、恐ろしい力で地面に縫いとめる。


「くそ、動けな――……ッ!?」


 そして気がついた。


 コイツ――直に触れている部分から、霊力を吸っていやがる。


 その証拠に触れられた部分から何かが流れ出て行くような脱力感が俺を襲う。同時に、出力が不安定になって両腕に纏っていた霊力が霧散してしまった。

 瞬間、気がついた。


 食われる(、、、、)――


 心の底から湧き上がる感情は、紛れもない恐怖だった。

 今まで≪シルバーカンパニィ≫の業務で大怪我を負いそうになって背筋が冷たくなったことは何度もある。


 だが、これは違う。

 身の危険を感じるのとは違う、死の恐怖とも少し意味が異なる。


 捕食される恐怖。

 弱肉強食の摂理に於いて、あらゆる生命体の本能に刻み込まれている恐怖だ。


「う、うわぁあぁぁぁぁあああッ!!」


 思わず叫んだ俺は、霊気をありったけ賦活させる。全身から溢れだした霊力が身体にまとわりつく触手を焼き切る。異臭が全身を包むが、構ってられない。

 しかし、スライムもまたようやく捕まえた獲物を逃すつもりは無いようだ。

 俺が全身に霊気を巡らせて触手を焼き潰す――その速度を遥かに上回る数の触手が、次々に地面から伸びて来ては巻きついてくる。


「くそ、動けない……! 誰か――!!」


 最早、拘束などというレベルではなかった。あっという間に全身にスライムに覆い被られ、丸ごと飲み込まれようとしている。霊気の燃焼が止まれば俺は一気に飲み込まれ、霊力と生命力を吸い取られて――死ぬ。

 この工事現場で作業員が襲われた霊障の正体が、このスライムだったのだ。

 

「剣斗!!」

「古部くん!?」

『剣斗さんッ!!』


 三人の声が聞えた。その時既に俺は全身の殆どをスライムに呑み込まれかけている。


「しばし目を閉じておれ! 少し熱い位は我慢せいよ――!!」


 言うが早いか、お銀さんが特大の狐火を俺に向かって放った。

 えっ、ちょっ、待っ、心の準備がまだ――


「急急如律令!!」


 同時に由良の霊術が迸る。

 お前もかよ!?


「――ッぅあっっっち冷てぇ!!」


 俺は右半身を銀色の火焔に、左半身を極寒の冷気に同時に炙られるという非常に稀有な経験を強制されることになった。しかし命がけのこの瞬間に於いて、四の五の我儘言っている場合でも無い。全身に纏わりつくスライムが焼けて沸き立ち凍って砕け散る。

 

『剣斗さん、手を――ッ』


 モケ子が叫ぶ。

 凍り付いたスライムが剥がれる左腕をモケ子が掴んで引っ張ってくれた。焼かれたスライムが流れ落ちる右腕を振るって、なおも追いすがろうとするスライムの触手を切り払う。

 なんとか脱出できたという安心感と、効率ガン無視で突然ありったけの霊気を活性化・全身に巡らせるという荒技を使ったせいで、俺はよろめいた。酷い立ちくらみの時のような脱力感。

 モケ子ともつれ込む様に倒れそうになったところを、カナ姉が支えてくれた。


「剣ちゃん!」

「た、助かったぜみんな」


 直火で炙って冷水で締めるのはカツオのタタキだったか? しかし世のカツオだって炙り氷結なんて技法を食らったことはあるまい。調理された気分だよ、なんて 減らず口を叩く余裕も有りゃしない。助けてもらった手前、文句も言えないし。


『いえ、そ、それよりも――』


 モケ子の口調に混じる、焦りの感情。

 周囲を見回して、俺は言葉を失いかけた。


 スライムの海と、触手の林。


 そう表現すべき、工事現場の半分以上を埋め尽くす大量のスライムとその触手。

 出口まで残り十数メートル。

 普通ならば歩いて三十秒の距離は、今や絶体絶命の隔たりと化していた。


 しかも。


「――足元が!!」


 そう。

 もはや大地は土で構成されたそれではなくなっていた。

 ぬかるんだ泥のような状態と化していて、この晴れた夏の日に地面をぬかるませているのが何かなどこの場面で考える間でもない。

 ――私たちは、ヤツの上に立っているも同然です。


 先ほどのカナ姉の言葉が文字通りに実現していた。



おかしい。

この作品はコメディだったはずだが……コメディどこ行った。

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