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第三話 飛鳥出港

9月10日

東京港 有明埠頭三番バース

大型帆船飛鳥 船橋甲板


祐司は船橋甲板に立ち、風力計を見ていた


「・・・(本日の東京港は、快晴!風は北西から吹いている、申し分ない風向きだ)」


「船長!出港準備完了です!」


義信が出港の準備が完了したことを告げる


「よし!掌帆長!総員呼集!出港配備!」


「了解だ船長・・・さて、総員、出港配置だ!急げぇ!」


靖彦の号令で乗組員が慌ただしく動く


「航海長!マストに信号!〔抜錨出帆〕!」


「了~解ィ!」


飛鳥のマストに旗旒信号が翻る


祐司はさらに的確に命令する


「掌帆長!展帆作業はじめ!」


「第一解帆手、登檣!メインコーススル、フォーコーススル、ミズンコーススル!ジブ、スパンカーを揚げろ!もたもたするんじゃねぇ!!」


靖彦は大声で指示をする、乗組員たちはスルスルとマストの高みを目指して縄梯子を上り始める。


ちなみに飛鳥は四本のマストをもっているその帆装はバーク型と呼ばれるもので、マストの名称は船首からフォアマスト、メインマスト、ミズンマスト、シガーマストと呼ばれている、此処で靖彦が叫んでいるのは帆の名称であり、メインマストの場合は下から順番にメイン・コーススル、メイン・ロワー・トップスル、メイン・アッパー・トップスル、メイン・ロワー・トゲルンスル、メイン・アッパー・トゲルンスル、メイン・ロイヤルと呼ばれているちなみにだがフォアマストの場合「メイン」の部分を「フォア」に置き換える。


話を戻す・・・


靖彦は全員が配置に着いたのを見ると


「解帆!」


と号令を掛けた


「曳船より発行信号!〔コレヨリ貴船ヲ港外マデ曳航ス〕」


瑚太郎が接近してきた曳船からの信号を読み取る


帆船は港内で十分な回避運動が出来ないため、曳船が一隻飛鳥に近寄って発行信号で連絡する


近づいてきた曳船は第二光洋丸という300t級の曳船であった


強靭なワイヤーで飛鳥と第二光洋丸は接続され、第二光洋丸は搭載の機関をもって飛鳥を港外へ曳航する


「2ノットか・・・」


祐司は速度計を見ながらつぶやく


「まもなく、防波堤を抜けます」


飛鳥は港外を抜けるために防波堤を通過する


「曳航索解除!」


港外を抜けるのを確認し、第二光洋丸に信号を送り曳航索を解除する


「第二光洋丸より信号〔航海ノ安全ヲ祈ル〕以上です」


瑚太郎が第二光洋丸からの信号を読み取り報告する、第二光洋丸は旋回し港内に戻っていく、次の船がある、飛鳥の30分後にはロシア船籍の長距離貨物船が出港する、東京港は世界有数の貿易港であり、衝突事故が絶えないため東京港は東京港湾管制局によって完璧に管制されている出入港する船舶は常にレーダーで管制され無線電波が常に飛び交っている。


飛鳥はフォアスルとメインスル、ミズンスルを広げさらに靖彦の指示で全檣楼にロワー・トップスル、アッパー・トップスルを横帆面積広げ速度を上げる、速度は8ノットであった。


「浦賀水道に入ったな・・・掌帆長!縮帆だ!」


「了解だ船長!第一班!アッパー・トップスルを縮帆だ急げぇ!」


祐司は伝声管を使い、機関室で待機中の光玄と連絡を取る


「江坂さん、機関始動お願いします!」


『了解だ、船長・・・機関始動!』


飛鳥は東京湾から外洋に出るため浦賀水道に入った、浦賀水道は京浜工業地帯や一大消費地である東京都市圏の海の玄関口である東京湾と外洋を結ぶ、海上交通の要衝であるため飛鳥は慎重な操舵を必要とされる、そのため飛鳥は縮帆し機関を始動させる、交通量が多い浦賀水道では帆船は機関の使用が義務付けられている、これは衝突事故を予防するためであった。


「両舷前進半速!」


士官の一人がエンジンテレグラフを操作する、エンジンテレグラフはSTAND BYからAHEAD HALFを指していた


「船長!東京港湾管制局から緊急入電ですの!」


通信長の黒沢律が通信室から飛び出してくる


「うん?緊急入電!」


「そうですの、国防海軍の戦艦大和が横須賀に入港するため注意をとのことですの」


「大和!?呉での改装が終わったのか」


日本国国防海軍の象徴、戦艦大和は大東亜戦争で生き残りその後、幾多の近代改装を施し第三次世界大戦でも数々の武勲を挙げている、だが大和は第三次世界大戦でかなりの被害を受けており、横須賀港で放置状態であった5年前にようやく予算が下り、呉で第7次近代改装が行われていた。


「船長!前方十一時の方向に大和です!」


瑚太郎が双眼鏡をのぞき報告する


「面舵10!速度そのまま」


大和も面舵に舵を切り、飛鳥を回避する


「国防海軍軍艦、大和に対し敬礼!」


祐司がそう言い、マストに掲げられた日章旗が下げられる、これは艦艇と船舶の間で行われる敬礼である。


大和もそれを確認し、艦尾の軍艦旗を一瞬半旗に、数秒後元に戻す。


それを確認した船員はマストの日章旗を元に戻す


「大和より発行信号!」


瑚太郎が大和からの信号を読み取る


「〔貴船ノ航海ノ安全ヲ祈ル〕以上です!」


「そうか、一気に浦賀水道を抜けるぞ!見張りを厳に!レーダー手、レーダーから目を離すな!」


飛鳥は22ノットの速度を維持し9月10日の19時に浦賀水道を無事通過し太平洋に出た、太平洋に出ると同時に機走から帆走に変更する。次の目的地は、八丈島・・・八丈島は沖縄と並ぶ太平洋の最前線基地である太平洋に出るためにはこの島で補給をする、その補給のために飛鳥はその白い鋼鉄の船体を太平洋の闇に隠しかけていた・・・



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