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第二話 飛鳥出港前日

9月9日

東京港 有明埠頭3番バース


出港を目前に控えた大型帆船飛鳥は、最後のブリーフィングを行っていた


「皆集まったな」


祐司が会議室に集まった人物を見渡す


祐司から見て手前左側の席から・・・


副長  栗原 義信

航海長 天上院瑚太郎

掌帆長 吉野 靖彦

機関長 江坂 光玄


右側の手前から


砲術長 空席

通信長 黒沢 律

補給長 槇野 凜音

衛生長 泊  静流


「よし、始めよう」


祐司が言うと全員が書類のメージをめくりだす


「まず、補給物資の積み込み状況は、補給長」


祐司が補給長の槇野凜音を指名する


「はい、船長、まず補給物資に関しては予定通り積み込みが完了しました」


「よし」


「あと、最新型の32式自動小銃20挺と弾丸2万発、拳銃12挺が本日の早朝に搬入されましたが・・・」


「拳銃・・・それは聞いていないな」


「はい、士官の自衛用にと搬入されました」


祐司は少し顔をしかめる


「まぁ、いい、よし次だ、衛生長、全乗組員の健康状態はどうだ」


祐司が衛生長の泊静流を指名する


「ゆーじ、全員問題ない、きわめて健康」


「よし、ならいい、航海中の乗組員の健康状態は静流にかかっているからなよろしく頼む」


「了解した」


「よし、後は・・・現在空席の砲術長についてだ」


祐司がそう言った途端全員が頭を抱える


「皆の知ってのとおりだが、本船は現在、砲術長の席が空席の状態である、出航を目前に控えた今、士官候補生や下士官から探すほか手段はなくなってしまったと思うのだが」


「そうだな、此処にいる奴らの射撃能力は、御世辞にもいいとはいえねぇからな」


掌帆長の吉野靖彦があざ笑うように言う


「よく言うぜ、吉野、吉野が一番成績悪かったじゃねぇか」


同じ高校に通っていた、航海長の瑚太郎が靖彦をからかう


「フッ・・・俺は遠距離から相手を一方的にするなんてずるがしこいことはできねぇのさ」


「そんな事はどうでも良い、問題は出港が明日に迫っているというのに、いまだ砲術長の席が空いていると言う事ではないのかね」


飛鳥の中で最年長のベテラン機関士、江坂光玄が言う、祐司が唯一頭の上がらない人物でもある


「確かにな・・・副長」


「はい、船長、士官候補生及び下士官を上層甲板に集めておきます」


副長の栗原義信、幼少時代からの祐司の悪友である


「おう、そうしてくれ・・・江坂さん、機関の調子はどうですか」


「順調ですな、昨夜試験始動をしてみたが、いい音をしてる」


「そうですか、しっかり頼みます」


「了解です船長」


「よし、後は・・・これくらいかな・・解散」


祐司は会議の解散を宣言し、制帽をかぶり退出するその後に続いて副長以下士官たちが、持ち場に戻った



大型帆船飛鳥

上層甲板


上層甲板には、士官候補生3名と下士官15名が集まっていた


「集まったな・・・おい副長ちょっと来い」


祐司は集まった18人を見て、眉をひそめた


「はいなんでしょうか」


「なぜ、万里候補生がこの中にいるんだ・・・コソコソ」


「なんでって・・・士官候補生だから・・・コソコソ」


「まったく・・・ゴホンッ!さて今回は聞いているだろうが、砲術長の適正試験を受けてもらう、副長後はたのんだ」


「はい船長・・・・聞いてのとおり、これから砲術長への承認試験を受けてもらうことになった、これに合格すると士官の仲間入りだ、頑張ってほしい、ではこれより、本船の主砲射撃指揮所に案内する」


飛鳥の主砲射撃指揮所は船橋甲板の前部航海船橋の後方にある、光学式の2m測距儀が1基と射撃方位盤を始め数多くの最新設備、航海レーダーと連動し射撃をするため理論的には素晴らしい、はずなのだが操作する人員の腕が悪いと命中率は極端に低下する、実際に飛鳥の乗組員の射撃技術はお世辞にもいいとはいえない・・・



「こちらが、本船の主砲射撃指揮所だ・・・」


義信は士官候補生3名と下士官15名を主砲射撃指揮所に入れる


何人かがその設備を見てたじろぐ


「さて、誰から動かしてみるか?」


義信は言った途端一人が手を挙げた


「おっ!万里士官候補生か・・・よしやってみろ」


「分かりました」


朱音は素早く席に座り、射撃管制システムを起動させる


「括目しなさい!私の力に!」


朱音は素早く、キーボードを操作し、公試運転以来眠っていた、射撃管制システムを目覚めさせる


「副長・・・目標指示をお願い」


「えッ!・・・目標・・・左舷10時の方向!廃船!弾種鉄鋼!一番三番主砲!撃ち方始め!」


義信は海面を見渡し、第三次世界大戦で沈み擱座放棄された廃船を目標に定める


朱音は目標の座標を入力し測距儀で目標を確認、同時に一番主砲と三番主砲の自動装填装置が起動し下層の弾薬庫から76mm徹甲弾が揚弾機によって揚げられる、そしてラマーで砲弾が装填され、閉鎖機が作動し射撃準備が完了する、此処までの動作は完全に無人で行われる、だが有事の際は一門につき3名の船員がつき不測の事態に当たることになる。


「撃ぇぇッ!!」


朱音は掛け声と同時に主砲発射のスイッチを入れる


ドォン!!ドォン!!



そのころ、祐司は瑚太郎と共に海図室に入り今回の航路を設定していた


「やはり、日精丸は魔の海域に入ったのでしょうか」


「分からん、だが、最後の目撃情報はハワイだからな・・・」


ドォン!!ドォン!!


「な、なんだ!?」


瑚太郎は急に轟いた砲声にびっくりする


「この砲声は・・・まさか?!」


祐司は駆け足で主砲射撃指揮所に向かう


「何をしたんだ!俺は射撃許可なんて出してないぞ!副長!」


祐司は主砲射撃指揮所についた途端怒鳴り散らす


「ハッ!船長!」


祐司の剣幕に義信はとっさに敬礼をして答える


「一体どういう事だ!」


「ハッ!演習の為、左舷の1番3番主砲を使用し、目標の元高麗籍の廃船を撃破しました!」


「・・・・・これからは、報告しろよ・・・万里候補生、後で俺の部屋に来い」


「了解です」


「分かったわ」


祐司は少し機嫌を直して、主砲射撃指揮所を出て行った


「副長、どうでしたか」


瑚太郎が義信と雑談を始める


「流石にビビったな、だが船長の扱い型はだいたいわかっているからな」


「流石です、副長」


「まぁ、長い付き合いだしな」


「お~い!航海長!」


「ほら、船長が呼んでいるぞ!」


「はいぃ!」


瑚太郎は弾かれたように海図室に戻る



大型帆船飛鳥 船長室


祐司は、出港に関しての最終報告書を読んでいた


「うむ・・・やはり、北周りでアメリカを目指すか・・・」


船の安全を考えるとやはり、北周りの航路が最善だ・・・しかし日精丸のことを考えると、南回りの航路がいいだろう、だが南回り航路は超常現象、異常気象が群発する魔の海域だ補給のことを考えると北回り航路でハワイに寄港し、サンフランシスコに寄港し親書を渡す、そして帰りのルートとして、南回り航路を使用する・・・・


「よし・・・往路で乗組員を鍛えますか・・・」


大体、航海の青写真が出来上がったとき扉がたたかれた


「・・・どうぞ」


「失礼するわ」


入室してきたのは万里朱音士官候補生であった


「来たか・・・とりあえず掛けてくれ」


朱音は椅子に無言で座る


「さて・・・・どこで砲術を習ったんだ?」


「ゲームよ」


「そうか・・・まぁそれはともかく、本船の砲術長がめでたく決定したわけだ、おめでとう」


そういって、祐司は袖章を渡した


「へ?みとめてくれるの?」


「なにがだ?」


「私を認めてくれるの」


「何だ、そんなことか」


「だって・・・」


「俺はな・・・実力のあるやつは認めるが、権力を振りかざして頂点に居るやつは絶対認めない、ただそれだけだ・・・本日から頼むぞ、万里砲術長」


「・・・・了解したわ、私に任せなさい」


「あぁ、頼りにしている」


明日、飛鳥出港・・・



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