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シアトリカル―素人(?)劇団  作者: 琅來
白雪姫~時と宇宙を越えてver.~
12/13

~毒林檎と死と~

「よっしゃあ! 久し振りにあたしの出番っ!」


シャーウィン(以下シャー)「……いいではないか、平和で」


千紗 「は? ……ああ、ふたわかね。あの二人、仲いいからなぁ」


シャー「……そのような問題か?」


千紗 「うん。よ~し、双葉姫も始末したことだし、これで国一番の美女はあたしで決定! 鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」


もと 「……ソレハ、双葉姫デス。オ后様」


千紗 「どうして、死んだと思っていたのに! ああ……何? このちっこいの達。そう、森の中にいるのねぇ……」


素香 「…………」


千紗 「…………」


素香 「…………」


千紗 「……ねぇ、素香。普通に喋ろうよ。あたし淋しいよ。喋る人いなくて」


素香 「…………全く、しょうがないなぁ、千紗は」


千紗 「てかさ、素香! 何これ! 可愛過ぎなんだけど! 達って元々綺麗だから、ミニマムになるとすっごく可愛い! 若葉だって、双葉と揃うと普通に姉妹だし! 若干似合ってないのも二人いるけどさ!」


素香 「そう! あたしって結局は舞台裏でしょ? 身悶えててもだ~れもいないから堪能しまくったよ!」


千紗 「い~なあ、素香……よっしゃあ! じゃああたしは、素香が見れなかった生を見てやる!」


素香 「ずる~! 千紗ずるい!」


千紗 「しょうがないじゃ~ん? だってあたし、元から毒林檎持ってく役目だし?」


素香 「あ~も~! 何であたし鏡なのっ?!」


千紗 「ふっふっふ~。そこで悔しがってろ! え~っと、シャーウィンさん、毒林檎作る場所ってどこ?」


シャー「……その、すぐ隣の部屋にあるが」


千紗 「よっしゃあ! え~っと、あ、もう火点いてる! それに毒も準備してあるじゃん! え~っと? まず、この毒を鍋に入れて、掻き混ぜて……」


グツグツ


千紗 「よし、真緑になった! で? 次は、火を中火にしてぇ、ここに更に、この黒の毒を入れて、大体混ざって来たから、とろ火で――半日っ?! ちょっとシャーウィンさん、これってどういうことっ?!」


シャー「よく見ろ。とろ火でじっくりと煮て、表面が泡立って来たらこの毒々しい色をした紫の毒を注ぎ、色が紅に変わったら火を止めて林檎を半日漬けると書いてあるではないか。其方は一行見落としただけだ」


千紗 「……よ~し、できた~」


シャー「…………御前、結局私の言ったことを聞いていなかったな」


千紗 「さ~て、半日漬けるってことは、今夜の九時頃に出せばいいんでしょ? だったら余裕だなぁ~。よ~し、明日は双葉の所に突入!」


シャー「……はあ。全く、早く父上の元に参りたいものだ……」


素香 「何ブツブツ言ってんの? 小父さん」


シャー「……もう、私に構わないでくれ……」


素香 「ちょ、千紗、いいの?」


千紗 「いいのいいの~。よし、ご都合主義発動!」


素香 「……千紗、あんた何したの?」


千紗 「時間を半日進めたの! これで待たなくて済むでしょ?」


素香 「千紗、あんたどんどん人外じみてきてるよね……」


千紗 「何とでも! さ~て、林檎の具合はどうかな? あ、ふふ……結構いい感じじゃん。毒林檎っぽくて」


シャー「……御前は魔女か」


千紗 「え? 違うの? あたし、継母って魔女だってずっと思ってたんだけど?」


シャー「そういう意味ではなく、御前自身が――」


千紗 「ま、どうでもいいや。よし、双葉の所に行くぞ! ってことで、シャーウィンさん」


シャー「な、何だ」


千紗 「先に双葉の所に行って来て」


シャー「……まあ、父上がいるだけましか……」


双葉 「残念でした。もうノワールさん達、森に出掛けちゃってるからいないわよ?」


シャー「……そうか」


双葉 「え? ちょっと、何落ち込んでるの? その歳でマザコンならぬファザコン? キモ」


シャー「ふぁざ……?」


双葉 「ん~、つまり、お父様が大好き過ぎて大好き過ぎて、どうしようもない人。マザコンはそのお母様バージョン。正直、男がマザコンとか引く。思いっきり引く」


シャー「何故だ? 母親を大事にして何が悪い」


双葉 「え~っと、そういう意味じゃないんだよなぁ。何て言うか、デートでも何でもお母様が付いて来なきゃ駄目とか、彼女よりもお母様を優先するとか、旅行でも夫婦の時間よりお母様といる時間の方が長いとか……そんなイメージかな? ファザコンは、これのお父様バージョ――」


シャー「断固として否定するっ! 父上は無実の罪で投獄され、長い間顔を合わせてはおらぬから、御会いしたかっただけだっ!!」


双葉 「ふ~ん、ならいいけどさ……」


コンコン


双葉 「は~い、誰っ……て、きゃあっ! ちょっと千紗! そこまで本格的な魔女ルックじゃなくてもいいでしょ!」


千紗 「何でそうすぐばらしちゃうのかなぁ、双葉は」


双葉 「すぐも何も、読んでる人には千紗の姿なんて見えてないんだからいいでしょ、別に! 第一話の流れからして、千紗が来ることが分かんない人はいないはずよ!」


千紗 「ちぇっ。っつうことで、以下略! はい、林檎」


双葉 「…………」


シャー「…………?」


双葉 「………………」


千紗 「……………………あのさ、双葉。何か言いたいことあるんなら、口で言ってよ」


双葉 「白雪姫ってさ、最初、腰紐でぎりぎり締め付けられて死ぬんじゃなかったっけ?」


千紗 「…………」


双葉 「でも、結局は小人が腰紐切って生き返るけど、次は毒の櫛を髪に挿して殺すよね?」


千紗 「………………まあ、原作はそうだよね」


双葉 「それでも、また小人が櫛を抜いて助かって、それから毒林檎だよね?」


千紗 「うん…………確かに、原作ではそうだよね」


シャー「ちょっと待て、御前達」


千紗&双葉「「何?」」


シャー「……これは、確か童話だったな? 子供用の話だったな?」


千紗 「うん」


双葉 「それが?」


シャー「どうして……そこまで残酷なのだ?」


双葉 「え? ラストはもっと残酷だけど? お后様は、白雪姫の結婚披露宴で焼けた靴を履かされて死ぬまで踊らされたもの。それに、初版だと継母じゃなくて実母だしね」


千紗 「それを言うなら、シンデレラだって本当は結構えぐいでしょ? そもそも舞踏会は一日じゃないし、靴だって勝手に脱げたんじゃなくって王子が階段にピッチを塗ってたからだし。おまけに最後のシンデレラ探しの時だって、継姉達は爪先とか踵とか切り落としてるし、結婚式の時は継母と継姉達は鳥に目を抉られちゃってるし」


シャー「そ、そこまで残虐な物を、童話として発行しているのかっ……!」


双葉 「ううん? 子供用は、こんなことなんて全っ然書いてないよ。第一、グリムだからね。しょうがないよ」


千紗 「うん。グリムだからね。本当は怖いグリムだからね」


シャー「……どうしてそこで遠い目をする? 御前達」


双葉 「えっと、いつだったかな……。多分、初等部三年の時かな? 『本当は怖いグリム童話』だか何だかってシリーズを読んで、ちょっと軽いトラウマなんだよね……」


千紗 「あれ、明らかに小学生が読むような話じゃないよね……」


双葉 「でも、何でだろうね。私と千紗と若葉は怖がってたのに、由梨亜だけ結構興奮して、こっちが引いても楽しんでたよね」


千紗 「……ああ、そう言えば、そうだったよね……(本当の記憶にはないけど)」


シャー「……そうだったのか」


千紗 「ってことで、双葉。はい、毒林檎。さっさと食って、さっさと終わらせよう」


双葉 「あ、は~い――ってこれ、本当に食べても大丈夫? お陀仏になって本当に生き返らないなんてことないわよね?」


千紗 「…………さあ?」


双葉 「さあって、ちょっと、千紗! ちょっとそこの小父さん、何か言って下さいよ。千紗と一緒にいたんでしょ? これ作ってた時!」


シャー「……………………」


双葉 「ちょっと、何黙ってんですが! え、待って、本当に怖いんだけどっ……!」


千紗 「いいから黙って食う!」


グイ


双葉 「あ、ちょっ――フガッ! うぐ……ちょ、ケホ……うう……」


バタッ


シャー「お、おい……倒れたぞ」


千紗 「いいんじゃない? 別に。元々こういう予定だったし。さ~て、帰ろっと」


シャー「い、いいのか……?」


千紗 「うん。だって、さっさと行かないと小人役の人が戻ってきちゃうもん」


シャー「そ、そうか……」


千紗 「そういうこと。見付かるとめんどいし。あ、一応(・・)主役が死んじゃったから、代わりにあたしが。次回は『アウトロダクション―王子様』だよ。そっか。次回でこの話は完結かぁ。何か、短かったような、長かったような……。まあ、どっちでもいいや。とにかく、次回も宜しくお願いします!」

これ以降の出番がない人達による座談会



「結局、この欄はこれ以上人が増えないままで御終いではないですか! これくらいなら、わたくしも小人役に当たりたかったですわ! そうすれば、御姉様達や千紗さんとも、もっと御話しできましたのに……」


「まあ、些南美。仕方のないことですわ。こればかりは、運ですもの。それよりも、わたくし、楽しみなことがありますのよ」


些南美「楽しみ……? それは何でしょうか? 曾御祖母様」


癒璃亜「ほら。お姫様役は双葉さんで、王子様役はよしあきさんでしょう? おまけにお二人は同母の姉弟ですわ」


些南美「あ、そうですわね。それに確か、あちらでは近親相姦が禁じられているとか……」


癒璃亜「ええ。二千年くらい前ならば、彼らの先祖の一族の異母兄弟間の結婚は普通にあったようですけれど、今は違うようですから。あの二人がどんな行動を取るのかがとても楽しみですわ。そうでしょう? みやさん」


早宮 「いやぁ、え、え~っと、えっと、その、あの……」


些南美「まあ、最後なのですから、しゃきっとして下さいまし。だらしのない」


早宮 「え、えっと、こ、これはお芝居ですので、個人的なコメントは控えさせて頂きますっ!!」


些南美「まあ、つまらない」


癒璃亜「ええ。まあ、こちらはこちら、曾祖母と曾孫、女同士で楽しもうではありませんか」


些南美「はい、曾御祖母様っ!」

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