~小人達との出会い~
双葉 「う~ん……逃げろって言われたってねぇ、正直道分かんないし……。とにかく、進めばいいのかな? どう思います? シャーウィンさん」
シャーウィン(以下シャー)「…………知らぬ」
双葉 「ちぇ~。……あ、あった! あの家だわ!」
シャー「あ、おい、ちょっと待てっ……!」
双葉 「うっわ~、凄~い! 今の私にも、それなりに小さく見えるわ。元の身体のサイズだったら、超ミニマムじゃない! うっわ~! 楽しい! あ、奥にベッド発見~! よ~し、眠かったから寝よ!」
シャー「おい、勝手にっ……!」
双葉 「ふぁ~あ~。お休みなさ~い」
シャー「……寝た。本当に寝た。信じられぬ……」
若葉 「しょうがないですよ。双葉は自由人ですから」
シャー「き、君は……?! 何故、同じ顔がっ……!」
若葉 「え、えっと、小人その七役の若葉ですけれど……?」
富瑠美「違いますわ、若葉さん。花鴬国にはほとんど双子がいないので、それにいたとしても、二卵性双生児がほとんどですから、貴女方のように、一卵性の双子という方に、シャーウィン殿は御会いした事がないのです」
若葉 「なるほど……。そういう意味かぁ。にしても、双葉、ぐっすり眠っちゃってるなぁ……阿呆面で」
双葉 「若葉っ! 人が寝た振りしてるっつうの分かってるくせに、何抜かしてんのよ!」
若葉 「あら? 何のことかしら?」
双葉 「こんのぉ……!」
富瑠美「あの、姉妹喧嘩も宜しいのですけれど、進めませんか?」
双葉&若葉「「…………」」
双葉 「……ああ、よく寝た! って、ああ、あ、貴方達は、この家の人ですかっ?!」
若葉 「わざとらしい」
双葉 「あ~ん……? 今、何てっ――」
若葉 「進めたら?」
双葉 「くっ……! ああ、もう! 貴方方は、一体どなたですかっ!」
富瑠美「まあ、ふふ……。わたくしは、小人その一こと、先生の富瑠美ですわ」
ノワール(以下ノワ)「私は小人その二、怒りんぼのノワールだ。……それにしても、無様なやられようだな、我が息子よ」
シャー「……煩いですよ、父上……。父上だって、あの宗賽大臣にまんまとしてやられたじゃないですか……」
ノワ 「それはそれ、これはこれだ」
シャー「…………」
深沙祇「全く、野蛮人共の会話は聞くに堪えませんわ。本当に、見苦しく聞き苦しいこと」
富瑠美「あら? でしたらさっさとどこかに行ってもらえませんか? 小母様。いいえ、御婆様とでも御呼び致した方が宜しかったかしら?」
深沙祇「何なのです、その口の利き方は! 仮にも実の母親に向かって、そのような暴言っ……!」
富瑠美「ええ。『仮』、ですもの。わたくしが育てて頂いたのは貴女では御座いませぬし、長じてからも、何かと気に掛けて下さったのも別の方ですわ。貴女はただ、自らの血を引く人間が王位に即けば、それでよいのですもの。わたくしを見ていた、わたくしを気に掛けていたとは、到底申せませんわ」
深沙祇「なっ……!」
柚希夜「え~っと、富瑠美異母姉上? ……どうやら御取り込み中のようですので、進めさせて頂きますね。先程の御方は、小人その三にして幸せの深沙祇妃です。私は小人その四にしてねぼすけの柚希夜と申します」
双葉 「ええっと……ノワールさんと深沙祇妃って、性格が逆なんじゃないの? 『ハッピー』って言う割には、すっごく怒ってるように見えるんだけど……」
柚希夜「それは性格ですから、役とそぐわないのは致し方ないことかと。それに、深沙祇妃と富瑠美異母姉上の仲が御悪いのは、昔からですし」
双葉 「あ、そう……」
香麻 「え~っと、俺は小人その五、照れ屋の香麻だ。宜しくな」
双葉 「……その堂々とした態度の、一体どこが照れ屋なの? ちょっとは役に合った性格と言うか、雰囲気を出してもいいんじゃないかな?」
香麻 「いや~、ちょっと面倒臭いから、遠慮させて下さいよ、内親王殿下」
双葉 「……そこでわざわざ『内親王』って言う所に、そこはかとない悪意を感じるんですけど」
香麻 「気のせいじゃないですか? な、奏谷?」
奏谷 「(ヒッ!)あ、いや、そのぉ……た、多分?」
香麻 「何だよ、多分って」
奏谷 「い、いやぁ……何となく、って言うか? ……っつうか、俺にも自己紹介させろよっ!!」
香麻 「ああ、どうぞ」
双葉 「ご自由に、ご勝手に?」
奏谷 「何だよ、こいつら……。普通人の俺には、理解できねぇ……。はぁ。俺は小人その六で、くしゃみの奏谷だ。宜しく……」
若葉 「それで、最後が私ね。さっきもしたけれど、私は小人その七でおとぼけの若葉よ。宜しくね、お姉様?」
双葉 「うっわ、そこで言う? お姉様って。双子の姉妹のくせして」
若葉 「あら? 私達には戸籍がないけど、間違いなく、お父様とお母様の第一子は双葉という女の子で、第二子は若葉っていう女の子よ?」
双葉 「何ですってぇ……?」
若葉 「何よぉ……?」
柚希夜「ああ、落ち着いて下さい。双葉さんも、若葉さんも」
双葉&若葉「「でもぉ……!」」
柚希夜「こういうことは、さっさと終わらせるのが吉ですよ?」
若葉 「そうね……確かに、それもそうだわ」
双葉 「え~……。つまんないのぉ」
若葉 「ちょ、双葉! ごろごろしないの! ほら、皺くちゃになっちゃったじゃない! ああもう!」
双葉 「え~、別にいいじゃん……」
若葉 「駄目! あ、香麻さん、それと、奏谷さんだったかしら? この馬鹿の下でシワシワになったシーツを引っ張り出すの、手伝ってもらえない?」
香麻 「あ~、えっと、別にいいけど……?」
奏谷 「いいけどって、いいけどって香麻、お前なぁ! よくも内親王殿下にそんな口が利けるよなっ?!」
香麻 「いやぁ~、だって、俺にとっちゃあ『お姫様』って言うよりも、由梨亜の幼馴染みだし……?」
若葉 「まあ、話が早いわ。じゃ、そっち引っ張って」
香麻 「はい。せ~のっ!」
双葉 「ふぎゃっ!」
奏谷 「こ、ここここ香麻ぁぁっっ!!」
香麻 「鶏かお前は」
奏谷 「ななななな、な、なっ……!」
香麻 「今度は何だよ……」
奏谷 「おおおお、お前はぁ! 人を床に投げ飛ばしといてそれかぁっ!」
若葉 「いいのよ。だって、双葉だもの」
富瑠美「ですが、この後双葉さんの台詞があったのではないですか? 継母に城を追い出された為、ここに逗留する代わりに、家事をするとか……」
若葉 「う~ん、私達が分かっているからいいんじゃない? カットよ」
柚希夜「いいですね、それ。何だかんだあって、結局収まりました、というような感じでしょう?」
若葉 「ええ。分かってるじゃない」
柚希夜「それは勿論?」
ノワ 「……強くなったの、柚希夜……」
柚希夜「御誉め頂き光栄です、御祖父様」
ノワ 「ふう……やはり、最早このような老いぼれは用なしか……」
柚希夜「いいえ。用なしという訳ではありませんよ? ただ、御祖父様にはゆっくりと御過ごし頂きたいのです。その為には、私達若い世代が強くなるしかありませんではないですか」
ノワ 「ふむ……まあ、一理あるな」
柚希夜「ええ。ですから、ごゆっくりと隠居なさって下さいませ。全く……御祖父様のように、ゆっくりして頂きたい御方もおられるのですけれど、ねぇ……?」
富瑠美「ええ。そうですわ。少しは大人しく、慎ましく、して頂きたいものです」
シャー「ええ。全くその通りですよ、陛下。昔からですから、言っても通じるかどうかは分かりませぬが、少しは我が異母妹のように、謙虚さという物を学んでほしいものです」
ノワ 「確かにな。彼女のせいで、一体私とフォリュシェア殿と籐聯陛下が、どれほど苦労したことか。財源には限りがあるというに、彼女の浪費の激しさには、ほとほと呆れ果てたわ。政財大臣であったフォリュシェア殿はともかく、分野違いの私までもが駆り出されたほどだぞ」
深沙祇「……何ですの、貴方達はっ! 寄ってたかって、か弱い女をいじめるなんてっ!」
富瑠美「か弱い? 図太いの誤りではありませんの?」
柚希夜「それに、私達は何も、この会話の主が深沙祇妃だとは、ただの一言も申し上げてはおりませんが?」
シャー「そうですよ? 全く、自意識過剰にもほどがある。私達が話していたのは、浪費癖の激しい、自意識過剰で無理な若作りを続けている、派手な御婦人のことです」
ノワ 「そうとも。それとも其方には、それが自分だという心当たりが山とあるのではないか?」
深沙祇「このっ…………!」
奏谷 「……あ~、香麻。これ、どうしよう?」
香麻 「……ほっとこう。俺らは俺らで進めよう」
若葉 「そうね。それが一番いいわ。じゃあ、次回予告は双葉の代わりに私がやります! 次回は『毒林檎と死と』! まんまのタイトルだけど、宜しくお願いします!」
双葉 「う~ん……て、ちょっと若葉! 何やってんのよ!」
若葉 「何って、双葉が起きて来ないのが悪いんでしょう?」
双葉 「何……? 私を気絶させたのはあんただってのに、私が悪いってぇ……?」
奏谷 「こ、香麻……みんな、口喧嘩が始まっちゃってるよ……。ど、どうしよう?」
香麻 「……ほっとけ、もう。俺らみたいな小市民には関係ねぇよ」
奏谷 「そ、そうか……関係ない、関係ない、俺には関係ない……」
香麻 「……最早暗示だろ、それ」
これ以降の出番がない人達による座談会
早宮 「……って、前回とメンバーが変わってないんじゃ……?」
癒璃亜「まあ、よくお気付きになりましたね、早宮さん」
早宮 「いや、その、これって……相当の馬鹿でもなければ、気付くんじゃあ……?」
些南美「まあ、曾御祖母様。そいつにこれ以上の情けを掛けてやる必要なんてありませんわ」
癒璃亜「何故です?」
些南美「だってそいつ、あの富実樹御姉様の、婚約者候補でしたもの。まあ、のちには千紗さんも、でしたようですけれど……」
癒璃亜「まあ……うふふふ。これは、真によいことをお聞きしましたわ」
早宮 「ひ、ひぃ! だ、誰かっ……って、誰もいない! ちょ、どうしてここに、地球人がいないんだっ……!」
些南美「まあ、面白そう……ふふ。ああ、それにしても、ずるいですわ、富瑠美御異母姉様も、柚希夜も、ノワール御祖父様も、シャーウィン伯父様も。あの深沙祇妃をやり込める、絶好の機会に、わたくしが参加できないなんて……。日頃の鬱憤や、恨みつらみを、少しは晴らさせて頂いたって、罰は当たりませんのに……ねぇ?」
早宮 「うわぁ~~っっ!! 誰か~ぁっ!」