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魔物喰いの境界線 〜俺が魔物を喰うたび、ヒロインは最強の神装を纏い戦女神へと覚醒する〜  作者: ヒデまる


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アフターストーリー第1話:エルフの里の「禁断果実」と、二人の正妻(?)

 学園を卒業し、帝国との戦争が伝説へと変わり始めた春。

 シュウたちは今、大陸北西に広がる世界最大級の原生林『静寂の翠森せいじゃくのすいしん』の入り口に立っていた。見上げるほどの巨木が幾重にも重なり、地上には日光すら容易に届かない、精霊たちが住まう聖域だ。

「……はぁ。やっと着いたわね。まさか、またこの不気味な森に戻ってくることになるとは思わなかったわ」

 エルフ耳をぴくぴくと神経質そうに動かしながら、エレインが呟いた。彼女の格好は、学園の制服から、機動性を重視した薄緑の狩猟服へと戻っている。しかし、その指先にはシュウが魔物の核を精製して作った「誓いの指輪」が、木漏れ日を浴びて淡く光っていた。

「あはは! エレインちゃん、里帰りなんだからもっとシャキッとしなよ。ほら、シュウも鼻をくんくんさせてるよ?」

 リィネが九本の炎の尾をゆらゆらと揺らし、シュウの腕にこれ見よがしに抱きつく。彼女の放つ熱気が、森の冷ややかな空気を心地よく溶かしていた。

「……ああ。いい匂いだ。……この奥に、今まで嗅いだことがない『甘い魔力』の塊があるな」

 シュウの【鑑定】が、森の最深部、エルフの長老たちが守る『世界樹の苗木』の周囲に反応していた。そこには、数千年に一度しか実を結ばないと言われる伝説の果実――**『精霊の蜜リンゴ』**が実っているはずだった。

1. 里の歓迎と、ツンデレの限界

 一行がエルフの里の境界線を越えると、木々の上から弓を構えたエルフの戦士たちが次々と姿を現した。かつては「汚れ者」として追放されかけたエレインだったが、今の彼女は世界を救った英雄の一人だ。

「……おかえりなさい、エレイン。……そして、救世主シュウ殿。貴方たちを歓迎します」

 長老たちが膝をつく。里を挙げた大宴会が始まった。

 エルフたちが差し出すのは、清らかな湧き水で造られた透明な美酒と、森の恵みである山菜の数々。だが、シュウの目は厨房……もとい、里の広場に設置された石造りのかまどに向いていた。

「よし。挨拶は済んだな。ガストン、仕入れてきた『龍血鹿ドラグ・ディア』を出せ!」

「おうよ、シュウ! 最高の部位を選んできたぜ!」

 ガストンが黄金の重剣を包丁代わりに使い、巨大な鹿肉を鮮やかに解体していく。シュウはその肉を、エルフの古酒と、森で採取したばかりの「痺れキノコ」の粉末でマリネした。

「【魔物喰い:多重概念合成――『森の王の祝宴』】!」

 シュウが右腕をかざすと、肉の繊維一つ一つに、森の精霊たちの魔力が吸い込まれていく。焼き上がった肉からは、エルフたちが一生に一度も嗅いだことがないような、野生と洗練が混ざり合った芳醇な香りが立ち上った。

「なっ……なんだ、この料理は……! 身体中の魔力が、活性化していく……!」

 長老たちが震える手で肉を口にし、涙を流して喜ぶ。

2. 「禁断の果実」を巡る攻防

 宴が夜更けに差し掛かった頃。エレインは、少し離れた場所にある『世界樹のテラス』にシュウを呼び出した。

「……ちょっと、シュウ。こっちに来なさいよ」

 月明かりに照らされたエレインは、どこか落ち着かない様子で、背中に隠していた「黄金色に輝く小さな果実」を差し出した。

挿絵(By みてみん)

「これ……里の伝承にある『精霊の蜜リンゴ』よ。一生に一度、運命の相手とだけ半分こして食べるのが、エルフの……その、結婚の証明なの」

 エレインのエルフ耳は、もはや真っ赤を通り越して、熱を帯びて震えている。彼女は俯きながら、消え入りそうな声で続けた。

「……あんた、他の子たちにも、こういうことしてるんでしょ? でも……今夜だけは、私を一番にしなさいよ」

 シュウがその果実を受け取ろうとした、その時。

「あーっ! 見つけたにゃん! シュウ、隠れて美味しいもの食べてるにゃ!」

 ミーニャが影からひょっこりと顔を出し、シュウの足元に絡みつく。さらに背後からは、フィオナとルナ、そしてリィネが楽しげな足取りで現れた。

「あら、エレインさん。抜け駆けは感心しませんわ。……その果実、わたくしも興味がありますの」

「……ん。……ルナも、半分。……いや、全部食べたい」

「ちょ、ちょっとあんたたち! 空気を読みなさいよーっ!」

 静かな森に、エレインの悲鳴に近い怒声が響き渡る。

 結局、伝説の『精霊の蜜リンゴ』は、シュウの手によって、全員で分け合える「究極のアップルパイ」へと調理されることになった。

「【魔物喰い:全概念融和――『境界なき家族のデザート』】!」

 サクサクのパイ生地から溢れ出すのは、黄金の蜜。一口食べれば、精霊の祝福が全身を駆け巡り、全員の心が一つに溶け合うような至福が訪れる。

「……もう。結局こうなるのね。……でも、まぁ、いいわ。……美味しいから」

 エレインは、シュウの肩に頭を預け、小さく微笑んだ。

 リィネが九本の尻尾で全員を包み込み、フィオナが優しい歌を口ずさむ。ミーニャとルナは、シュウの両膝の上で、幸せそうに喉を鳴らしていた。

 新婚旅行、最初の一歩。

 エルフの里を揺らした美食と愛の夜は、こうして賑やかに過ぎていった。

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