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魔物喰いの境界線 〜俺が魔物を喰うたび、ヒロインは最強の神装を纏い戦女神へと覚醒する〜  作者: ヒデまる


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忌み嫌われた少年と、空腹の王女


「……っ、またこれか」

 辺境の村、その外れにあるボロ小屋。シュウは手の中にある「真っ黒に焦げた肉塊」を見つめ、自嘲気味に笑った。

 それは、先ほど村の家畜を襲おうとして返り討ちにした、下級魔物『ニードルラット』の成れの果てだ。

 シュウが持つ先天スキル――【魔物喰い】。

 文字通り、魔物の肉を食すことでその力を取り込む異能。だが、この村でその力は「化け物と同じ」「不浄の極み」と忌み嫌われる理由でしかなかった。

(食わなきゃ、生きていけない。……でも、このままじゃ俺は本当に、ただの魔物になっちまうのか?)

 泥を噛むような味。胃を焼くような不快感。

 それでもシュウは、生きるために「概念」を噛み砕く。

 その時だった。

「……そこの、貴方」

 鈴の音のような、しかし酷く衰弱した声が響く。

 振り返ると、そこにはおよそこの辺境には不釣り合いな少女が立っていた。

 ボロボロになった白銀のドレス。泥に汚れながらも、隠しきれない気品を放つ長い金髪。そして、強い意志を宿した碧眼。

挿絵(By みてみん)


 だが、その瞳はシュウの足元に転がっている「ニードルラットの死骸」に釘付けだった。

「……その、魔物……貴方が、仕留めたのですか?」

「ああ。……まあな。近寄らない方がいいぞ。俺は『魔物喰い』だ。村の奴らも、俺が化け物になるのを待ってるようなもんだからな」

 シュウは突き放すように言った。自分に関われば、この美しい少女まで後ろ指を指されることになる。

 だが、少女――フィオナは、ふらふらとした足取りでシュウに歩み寄ると、その手を取った。

「お願いです。それを……私にも、食べさせてはもらえませんか」

「……は?」

「私は、フィオナ。……国を追われ、兵たちを撒き、もう三日も何も口にしていないのです。このままでは、私は……」

 ぐうぅ、と。

 彼女の細いお腹から、あまりに切実な音が鳴った。

 フィオナは顔を真っ赤にしながらも、シュウの目を逸らさない。

「毒だろうが、魔物の肉だろうが構いません。私は、まだ死ぬわけにはいかないのです……!」

 その瞳に宿る、燃えるような復讐と再起の炎。

 シュウは息を呑んだ。自分と同じ、世界から弾き出されながらも、抗おうとする者の目だ。

「……毒じゃない。だが、普通の奴が食えばただの不味い肉だ。……でも、俺が『調理』すれば話は別だ」

 シュウはナイフを抜き放つ。

 【魔物喰い】の真の力。それは単なる捕食ではない。

 魔物の命を「概念」へと昇華させ、最適な形へと再構築する力。

 シュウは手際よくニードルラットを解体し、その核となる「鋭利な針」の概念を抽出する。掌の上で黒い霧が、淡い光を放つ琥珀色の雫へと変わった。

「食え。これが、お前の力になる」

 シュウが差し出した「肉」を、フィオナは躊躇なく口にした。

 その瞬間。

「っ……あ、熱い……!? 何かが、体の中に流れて……っ!」

 フィオナの体が、眩い光に包まれる。

 ボロボロだったドレスが光の粒子に分解され、新たな形を成していく。

 白銀の生地に、ニードルラットの「針」を思わせる鋭い装飾が施された、機能的な『戦闘ドレス(神装)』へと。


挿絵(By みてみん)


「これは……私の、魔力が……溢れてくる……?」

 呆然と自分の手を見つめるフィオナ。

 その背後、森の奥から凶悪な咆哮が響いた。

 フィオナを追ってきたであろう、帝国の追撃兵たちが連れる猟犬魔物――『フォレストウルフ』の群れだ。

「……フィオナ。その『服』の使い方は、お前の本能が知ってるはずだ」

「ええ。わかります……これなら、戦える!」

 少女は軽やかに地を蹴った。

 これまでの衰弱が嘘のように。

 

 忌み嫌われた少年と、空腹の王女。

 二人の「美食」による反撃が、今ここから始まる。

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