迷惑電話はお断り
初めての作品なので、色々と気になるところもあると思います。感想、指摘等、たくさんしてもらえると幸いです。
ピコンッ
「んっ、なんのメール…?」
3月の土曜日のある朝、、、ではなく昼に、白木レナはある一件のメールの着信音で起きた。
(せっかく気持ちよく寝てたのに、、、誰だろう?最上支部長から定例会議の招集、、、はないな。私がサボっ てるのはいつものことだし。)
布団から出ずに、充填しておいたスマホを探す。そして、メールの差出人を読んで速攻で既読スルーを決め込む。
(なんで、、、なんでロバート会長が!? てか、なんであの人私のラインのアカウントしっているの!?)
ロバート会長は国際魔法連盟を束ねる長、平たく言えば、魔法に関する世界で一番偉い人である。
(絶対ろくな要件じゃない。カナダにいって魔王軍と戦えとか、最近発見された新種の魔物の調査とか。そんなことしてたら、私の好きなことする時間がなくなっちゃうじゃない!)
そんなことをウジウジ考えていると、今度は電話がかかってきた。
(うわ、これでないと怒られるやつだ、、、)
いやいや電話を取ると、とてもハイテンションな声が耳に飛び込んできた。
「Good morning!、アウロラ。いや、もうそっちはお昼かな?」
「相変わらず日本語が上手ですね、ロバート会長。ていうか、なんでそんなハイテンションなんですか?そっちは今、一時スギてるでしょ。」
アメリカと日本の時差は十三時間。いま、国際魔法連盟の本部があるニューヨークでは深夜のはずだ。
「いや、君がなかなか電話に出てくれないからね。君が何本目の電話で出るか秘書と賭けていたんだけれど、負けてしまったよ。124本だと思っていたのだが127本だとは。新記録更新なのではないかい?」
そう言われてスマホを確認する。確かに電話が124本、それとメールが349個来ている。
「もしかして、それだけのためにずっと起きていたんですか?」
「もちろんそうだよ。それがなにか?」
そう答えられて、レナは頭を抱える。
(おかしい、国際魔法連盟の会長はそんなに暇なのか?こんなくだらないことのために何時間もかけるなんて…)
レナは自分が変わり者だという自覚がある。それなのに、この会長はそのレナを毎回越えてくる。
「それで用事はなんなんですか。まさかそれだけのために睡眠時間を削ったわけではないですよね?」
「いや、それだけのためだよ」
ピッ
速攻でレナは電話を切る。するとまた電話がかかってきた。どうせまたくだらないことだろうと思いながらも一応電話を取る。
「待ってくれ!それはただの冗談だ!ちゃんと君に頼みたいことがあって電話をかけたんだよ。」
「じゃあ、その内容はなんですか?」
めんどくさい依頼じゃないと良いな、と思いつつ聞き返す。
「アウロラ君、君には日本のとある学校に潜入してもらいたいのだよ!」
「…は?」
思わず気の抜けた声が出てしまった。
(何だ、この人は何を言っているんだ?)
「その、潜入というのは生徒として学校に入学しろと。一体何のためにですか?なんか教員に魔王軍の関係者が入り込んでいるとか…」
「いや、そうではなくてね。今度私の息子がそこの学校に入学するのだがその護衛を頼みたくてだな。やっぱり日本の学校だとアメリカ人は浮くだろうし念の為ね…」
「ちょ、ちょっと待ってください。本当にそれだけの理由なんですか?」
レナは思わず会話を遮ってしまった。
(ただの息子の護衛でトゥエルブ・セインツを動かそうとしてるの?職権乱用がスギない?)
基本的にトゥエルブ・セインツに命令できるのは会長だけである。トゥエルブ・セインツは特殊な立場であり、国際魔法連盟の幹部級の人物でもそう簡単には会えないし、無論任務を依頼することなどできない。
(それをこの人は完全な私用で動かそうとしているわけね…)
「念の為に聞きます。その学校というのはなにか危険なのですか?」
「いや、ただの普通の高校だよ。」
「わかりました、ではこの依頼は別の人に…」
そう言って電話を切ろうとすると、慌てた様子で会長が言ってきた。
「いや、君もここずっと家から出てないだろうし、少しは健康的な生活を…」
「ではなおのことですね。私は家から出る気はありません。」
きっぱりと言い切って電話を切ろうとする。
「待つんだ、アウロラ君。わかった、君がそこまで言うのならこっちもそれなりの手段を使わせてもらおう。今すぐその家を出ていってもらおうか。」
「うっそれは、、、」
レナの住んでいる家は会長の日本の別荘である。めったに使わないということなのでありがたく借りているのだ。
「それだけはやめてください。それされると私住むところなくなっちゃうじゃないですか。」
レナは仮にもトゥエルブ・セインツの一人だ。お金なら山程持っている。しかし、彼女は未成年なので部屋を借りれないのである。つまり、今いる家を追い出されたら、路頭に迷ってしまうのである。もちろんホテルなんかを使うこともできるが清掃やなんやらで人が自分の部屋に入るホテルはレナは嫌いなのだ。
「それならば、高校に通ってもらうよ。詳しい資料は後で送るからね。あっ、そうだ。その家から通ってもらう高校までは結構遠いから近くに新しいマンション借りとこうと思うんだけれど、どう?」
トントン拍子で話が一方的に決められる。ただ、レナも悪い提案じゃないと思ったので頼むことにした。
「じゃあ、よろしくお願いします。」
「それじゃあ。よろしくね〜。」
そう言って電話が切られる。
(はあ、なんで私がこんなことに…)
そう思いながら、のそのそと布団から出る。
(学校に行くのなんて何年ぶりだろう。私人付き合い苦手だからな…トラブルに巻き込まれないといいけど。)
明日からのことを考えると、少し頭の痛くなるレナだった。