突然増えた協力者
「…………私はオーバーレイユニットを一つ使い効果を発動!このターン相手モンスターに3回の攻撃が可能となり、さらに墓地効果によって攻撃力が倍の11200に!これであなたは終わりです、直接攻撃!!」
「罠発動。その攻撃を無効にし、攻撃力分のダメージを相手に与える」
「のわーっ!!よくもそのような卑劣なカードを!再戦です再戦!今度こそ私のモンスターでポコポコに!」
「いやいや、さすがにここらで本題に入ろうぜ?見てる奴が困惑してる。そこの嬢さん含め」
…………ええ、本当にその通りです。
朝、この生活が始まって以来習慣となっている2人分の珈琲を淹れていると、背後で女神様と戯れる謎の声が響いてきました。
そっと振り向いた時にいらしたのはわたくし達同様半透明な男性。さも当然のように女神様とカードゲーム……?に興じており、それはもう、驚きのあまりかえってなにも声が出なくなるほど困惑しておりましたわ。
どことなく女神様と似通った装飾の服を着ていらっしゃいますが、一体何者なのでしょうか……
「紹介しましょうシャルさん、こちらは経理のあんちゃん、私の憎むべき敵です」
「いやアンタが個人的な支出を経費で落とそうとするからだろ。自業自得」
今の会話でお二人の関係性は概ね理解できましたわね。
「わたくしは女神様に庇護されております、シャルロット・ド・フランベルジュと申します」
「ん、嬢さんのことは聞いてるぜ。管轄外の世界の住人とはいえ、こんな異変が起きちまったんじゃ無視するわけにもいかないからな」
「あなたは別に事件の影響を受ける立場じゃないはずなんですけどねぇ」
管轄がどうこうなどと意味深な発言が聞こえましたが、この幽霊生活も慣れだんだん動じなくなってきましたわ。
しかし、なぜこの方はわたくし達の元へ下りてきたのでしょう。ナギサからも女神様以外の方が天国からやってきたという話は聞いたことがありませんし。
そういえばつい最近、女神様は経費精算についてトラブルを起こしていましたが、まさかその件で……
「シャルさん、耳の痛い話ですが、今回は別件ですよ」
「嘘つくなよ関係なくないぞ。こないだのアレの訂正の催促ついでだからな」
「明日出しますから……レシート見つかったら」
普段は言動はともかくとして、上位の存在だという納得感のある余裕を持った立ち振舞いであった女神様が、こうも惨めに写るとは……
いえ、いけませんわね。庇護下にありながらこのような敬意に欠いた感想は。
「頼まれてた、件の世界を繋ぐ魔法とやらの観測情報を持ってきてやったんだよ。ほいこれ資料」
経理の方に放り出された紙に纏められていたのは日付ごとに分けられた様々な土地の地図。察するに観測された地点といったところでしょう。
「随分と詳細な地図ですわね……ここまでのものはわたくしの知る限り作られていなかったと思うのですが」
「ま、そっち側の下界じゃそうだろうな。俺らも下界の全てを把握するのは無理があるが、大まかな情勢ぐらいは知っとくと便利だからな。ってことでこういうのをちゃーんと用意しとくわけだ」
平和になった近代では我が国でも地図が一般に流通するようになり、その影響もあって精度も上がってきたそうですが、それでも相対的に見て新参であろうこちら側が敵うはずありませんか。
「1つ欠点を挙げるとすれば、私達そちら側についてあまりに無知なので、地図を見たとてなーんにもわからないんですよねぇ」
「管轄外だし仕方ねぇよな。とりあえず直近2週間分確認頼むぜ」
そう言われ早速日付が遠い分から目を通し始めます。ナギサ任せが続くなか活躍の機会ができるのは素直に嬉しいところ。
しかし折角地図が詳細でも、観測の精度はまだ粗いようですわね。地域は絞れてもこれではなかなか…………あら?この地図はもしや……
「!?」
「どっ、どうしたよ嬢さん」
「気管支に唾でも入りましたか?」
「いえ幽霊になって以来そういったこととは無縁……ではなくて!こちらを見て下さい!」
そう叫んでお二人に見せたのはここ3日間の記録。観測地域は数日ごとに変わっているようで犯人の居所を掴むには決め手に欠ける情報のようなのですが、問題は直近の観測地域。
「こちら……我がフランベルジュ家の領内です」




