Sideルシエラ なんとか達の沈黙
「…………レオンさんのことはあなたが請け負うと、この間は話していましたよねジャック様?」
「そうだね」
「それでこれからご本人に会いに行くのでしたよね?」
「そうだね」
「………………ではなぜ、私たちはこのような辺鄙な場所に来ているのでしょうか?」
私たちが来ていたのは謎の地下牢と思わしき空間。空の檻が並ぶばかりで人の気配はしませんが……。
なぜ曖昧な表現なのかといえば、ここへ連れてきていただく道中目隠しをされていて、居場所がわからないようになっていたからです。
テオドール少年は迷子になりたくないからと言って、今回は不在。このような薄暗い空間にまで彼が付いてきては私が耐えられるか怪しいので、正直言ってその点は助かりましたが。
「ここはね。投獄されている事実を隠さなければならない囚人が入る場所なんだよ。僕も存在を知ったのはつい最近だが」
「そのような場所に私を連れてきてよろしいのですか?」
「駄目だよ?だからここで見聞きしたことは他言無用。いいね?」
「えっ!?ちょっ、承諾も得ずに秘密を共有させないでください!」
噂通りに自分勝手な方ですね!もしかすると、頼ってはいけないタイプの人間だったのでしょうか。
「………………レオンという男、君の調べでは退職ということになっていたよね」
「え、ええ……もっとも、退職後どうしているかについてはなにもわからなかったのですが!」
「彼レベルになると退職しても守秘義務があったりするから、国が動向を把握しているはずだと踏んで居所を調べてもらったんだよ。そうしたら、ここに捕まっていると返ってきた」
「やはりあなた程の立場になると情報も得放題………………なんですって!?」
驚きのあまり、柄にもなく叫んでしまいました。レオンさんがここに捕まっている?おおよそ犯罪の類いなど起こしそうにないあの方が?
「一体なぜそのような……しかも、状況的に表沙汰にできないようなことなのですよね?」
「シャルロットの右腕だけあって察しがいいね。まぁ、僕も少々強引にここを聞き出した時、詳細は本人から聞くよう言われたからまだ知らないんだけれどね……………………見えた」
「!」
ジャック様が指差した先の牢からは、この空間で唯一私たち以外の人間の気配が。
「こんなところに僕以外に人が来るなんて。看守すらいない始末なのに珍しいこともあるものだ。しかもそれが王子様とはね」
「この方が…………」
牢に繋がれ、随分と落ちぶれた様子の男が目の前に1人。まだ若い私の耳にすら入ってくるその正義感とエリートさは見る影もありません。
「?そっちは……確かルシエラ君。ヴィルジニーとは同学年の子だったと思うが、一体二人して何の用かな?」
「わっ、私のことをご存知なのですか?」
「あそこの生徒の顔と名前は一通り把握しているよ。特に、君の学年には姪がいるから気にするようにしていたんだが……ああそういえばそうか、君はあのシャルロット君の取り巻きだったか」
彼の言う姪が噂のヴィルジニーさんであることは把握済みです。しかし警備責任者とはいえ私のことまで知られていたなんて…………。
シャルロット様の名前に思い当たった瞬間、私が来たことにも腑に落ちたような反応をしていました。勝手に納得されるというのも嫌な気分ですが、やはり彼には思い当たる節があるようです。
「単刀直入に聞くよレオン。君はなぜこんなところに?一体何を仕出かしたのかな?」
「おや、ここに来るぐらいだからセビーチェン辺りから大体の話は聞いていると思っていたんだが、そこからか」
「……………………」
ここでセビーチェン先生の名前が出るあたり、一介の教師にすぎないから何も知らないと言っていたのは嘘なのでしょうね。
「話してくださいますよね」
「構わないよ。ここでは毎日暇で暇でしかたがないからね」
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「ぶふぉっ!?ジャックがレオンに会いに行ってるだぁ!?」
思わず飲んでいたコーヒーを吹き出しながら叫ぶ。目の前の皇太子殿下の側近である男が泣きついてきた内容に驚きを隠せなかったからだ。
まだ若いとはいえ、アルメリアの将来を担うお偉いさんが、なぜか大量の機密を扱っているとはいえただの教職のおっさんに助けを求めないでほしい。
「お前話したの?フランベルジュ家の名誉のためになるたけ部外秘でって話なのに…………なに?第2王子に強請られた!?なにやってんのお前!?」
なんで相手が王子だからって機密を漏らしてしまうような強請のネタがあるんだよ!これだから自覚の薄い最近の若者は……コンプライアンスってものを知らないのか。
いや、コンプライアンスが云々に関しては俺も気にせず行動してるか。あんまりつつくと面倒くさいなこれ。
「話したのはレオンの居所だけなんだな?あーもう、アイツ立場だけはあるから普通に会いに行けちまうわけか。もう誘拐の話はバレると見ていいか……どうすんだこれ」
…………もう成るようになってくれとしか思わなくなってきたな。




