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現場の声

「いや最近本当忙しいよなー。お前もよく休暇とれたよプラシド。羨ましい通り越して恨めしいよまったく」

「うるさいなジャン。こっちだってただの休暇が良かったよ」

「今あのセビーチェンさんの使い走りか。辞めたって聞いてたのに、異常も異常だよこの事態」


 ジョッキ片手に、ため息と共に呟いた男はジャン。憲兵での同期として苦楽を共にし、配属された地域は違えど時たまこうして酒を飲みに集まる仲となった。


「レオンさんも残念だったよ。なんだってあんなことやらかすんだか……ま、あの人だったら実は誘拐計画の内情を探ってた!とか言い出しそうだけど」

「今からでもそうなってくんないかな……無い物ねだりしてもどうしようもないけどさ。それより、そのレオンさんがフランベルジュ家を気にしてたって話なんだが、なにかこっちで起きてたりしないか?」

「あんね、なにか起きるもなにもこっち事件の影響で警備だ捜査だで大童よ?異変なんてそこらじゅうにあるっての。どれがどれだかわからんって」


 そう呟くジャンの顔には明らかに疲労が滲み出ている。一連の事件は目的もなにも掴めておらず、そのくせ憲兵側の不祥事も絡んでいるのだから無理もない。多分どこもこんな感じなのだろう。


「…………と見せかけて、いろいろ怪しい話を仕入れておきましたっ!」

「おっ?」

「いろいろあるぞ。ガサ入れの話が出発直前に立ち消えになったり、古い宿舎の建て直し費用が謎の膨張をしていたり、細かいところで言うと公爵家から回ってくる書類の誤字脱字が増えてたり」

「また身内絡みか!そりゃあシャルロット嬢も憲兵隊に対して当たりが強くもなるよ。しかしよく調べてくるよそんなの」

「別に調べたってほどじゃあない。うちが当事者な事案だから勝手に耳に入るだけ……これのせいで最近うちもてんやわんやよ。しかも原因究明にリソース割けてないし」

「………………やばくない?それ」


 ただでさえ通常業務が忙しい中事件のための警戒体制で余計に他のことをする余裕がないのはわかる。


 事件の混乱に乗じてなにかしでかそうとしている奴とかいそうだ。というかもう既にいるのかもしれない。


「しかも不可解なのが発覚の遅さよ。公爵様の承認を通ったあとの事柄でこうミスが多いんじゃあ、普通ならその資質を疑われるとこだ」

「確かにな……ちなみにこれ、憲兵に限った話ってこともないよな?」

「さーてな。余所のことはわからん。この分じゃ振り回されてそうだけどな」

「違いない」


 同意を示しつつ一気に酒を流し込むジャン。本人の名誉のため具体的な量は出さないが相当飲んでいる。こりゃだいぶ溜めてたな……。


「とりあえずお前からの質問的には、公爵家の事務方になんか異常がありそうってことだな。バミアニアの他の領地でこんな話は聞かないらしいし」

「でも陰謀だとしてもあまり脈絡がないというか……これが犯罪だとして、目的ってなんだ?」

「さーてな。そもそも誘拐と関連づけるような問題じゃない気はするが、如何せん時期と場所がな」


 これら2つの事柄を結びつける確かな証拠はない。怪しむだけならジャンの言う時期と場所とレオンさんの忠告で十分だが、公爵家に直接掛け合えるほどではない。


「なあプラシド、これが意図的なものだとすると、どうやったと思う?」

「シャルロット嬢の父……現公爵は清廉潔白で通っているし、なにかあるとすれば公爵様から現場に行き渡るまでの間にろくでもないのがいるとかだけど……」

「俺らあくまで憲兵だからその辺どうなってるのか知らないが、そんなことやろうとしてできるような仕組みにするか?とは思うんだよなー」

「まぁな……とりあえずシャルロット嬢にも共有してみるか…………流石にまだ正式に調べるのは無理そうだし」

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