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世界に根差した教義

「………………で、なぜここにプラシドさんがいらっしゃるのでしょうか…………?」

「観光です。建前ですけどね」



 馴染みがあるという教会で偶然たまたま遭遇したプラシドさんはあっけらかんとそういい放つ。


 私もそのまま観光だとは受け取らなかっただろうが、建前であることをそんなすぐに明かしていいものなのか?


「……お嬢様、こちらの方は…………?」

「あっマリー、この方は学園の守衛で……」

「プラシドと申します。シャルロット嬢とは護衛の関係で顔見知りでして。ほら……()()()()()()()()()()()()()でしょう?」

「…………ああ、なるほどー……。私はシャルロット様付きのメイド、マリーと申します」


 どうやら腑に落ちたらしい。事件については我が家の使用人の中では周知の事実だし、それもあって納得してくれたのだと思う。事件捜査といって私が彼を振り回していることには流石に気付かないだろうが。というか気付かないで。


「それでプラシドさん、建前だと明かすのなら本音の方も話してくださるのですよね?」

「もちろん。まあ教会に来たのは本当に観光ですし、この地に来たのも単にセビーチェンさんに脅さ……じゃなくて、命じられただけなんですけどね。怪しい気配があるから見てこいと」


 誰からもそんな扱いされているなこの人。可哀想に。そういえば、実家に怪しい気配があるという話は私もされたな。



「お嬢様ー?怪しい気配とは一体なんのことでしょうかー?」

「「!!」」


 あ、そうだ。この場にはマリーたちもいるのだった。事件のことは知っているといっても、下手なことを言えばさっきの懸念が現実になりそうだ。


「(この場でシャルロット嬢の無茶をたれ込んでやろうかな……)」

「ちょっとプラシドさん?なにか企んでそうな顔してません?」

「なっ、なにもありませんよシャルロット嬢。えーっとあれですマリーさん、観光するにはこの機を逃すと厳しそうという意味での怪しい気配です」


 さっき思いっきり建前だと言っていたのにその言い訳で良いのか……?まぁいいか。初対面でそこまで追求することもないだろう。


「それでシャルロット嬢も観光ですか?」

「ある意味そうですわね。馴染みの場所を見て回ろうかと」

「…………記憶回復のためですか」

「そんなところですわ」


 答えつつ周りを見渡す。建物の大きさは王都で見た大聖堂に劣るとはいえかなりのもの。芸術系には疎い私だが、こういった西洋風の建築は世界史選択としては興味深い。


「お嬢様がーというか、こちらを訪れる者の大半は天井の絵が目当てだそうですよー」

「天井………………?わあ、すごい!」


 そう言われて見上げた先にあったのは巨大な天井画。昔ルネサンスだかなんだかを習ったときにこんなような物を紹介された記憶があるが、実物は周囲の装飾含めとんでもない迫力だ。


「大地が割れたような描写ですわね……?」

「割れたというより、これから繋ぎ合わせるところだそうです。主による天地創造の瞬間を表現したのだとか……合ってますかね。この解説で」

「大丈夫ですよー。ここから生命が生まれ人類が生まれ、神様から魔法を授かり現代に繋がっていくわけですねー。この辺りの知識はかつてのお嬢様からの受け売りですが」


 魔法は神からの授かり物。それがこの宗教の教義だったか。魔法がある世界らしい内容だと思うが、はてさてどの程度当たっているのだろうか。


 自称女神は天地開闢の頃から存在するから年齢は宇宙とタメだとか言っていたが正直信用できないし、天地創造については私からしても謎だらけだ。どこかには正解を導きだした宗教もあるかもしれない。

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