復学に向けて
「大変なことになったなぁ…」
「立場があるとはいえ、旦那様も無理をおっしゃいますね…頼まれていたものはこちらに置いておきますので、復学までに目を通しておいて下さい」
「ありがとう…」
当面の方針が決まりとりあえず安心していたのも束の間、先日の夕食で予想外の難題が降りかかってしまった。
無理あるよ記憶喪失隠しながら学園生活は…!とは思っていても覆しようが無さそうなので、復学まで出来る限り知識を詰め込むしかない。なので使用人に頼んで学園の寮からシャルロットさんの日記や教科書ノートを持って帰ってもらった。
ちなみに御本人様の許可は得ている。
「許可もらったといっても、他人の日記を読むのは気まずさがあるっすねぇ…」
ページをめくりながら呟く。交友関係についてはある程度は御本人様から聞いているが、エピソード含めて頭に刻み込むにはこれぐらいやるしかない。
あと必要なのは学習面での知識。学園で授業を取っているのは法学と数学、歴史に加え魔法学だそう。
ラインナップが私の高校時代と大きく違う上、魔法学なる未知の学問もあるのでほぼゼロから学ぶのは骨が折れる。しばらく試験が無いと言っていたのが救いだが…
それから知り合い相手にどうこの状況を誤魔化すかも考えておく必要がある。あの父親曰く、急病で倒れ、しばらく療養していたことにするらしい。
いかんせん3年も医者いらずの身体で過ごしていたせいで病人エピソードがパッと思い付かないので、どこかでボロが出そうだ。
「大体なんでこーんな大根役者の娘にそんな嘘つかせようとするんすかねぇ?いや先に記憶喪失だって嘘ついたの私っすけど」
思わず言ってもどうしようもない文句が出てしまう。
そういえば高1の時の文化祭の劇で、私はあまりの演技の下手さに裏方に回されたんだった。犯人を崖で追い詰めるシーンのセットとか作った気がする。
思えば学園生活自体久しぶりだ。生前の記憶は死ぬ前の1年くらいが靄がかかったように思い出せないが、それ以前はそれなりに楽しく高校生活を送っていた。友達も多いわけじゃなかったが、その分絆も強かった。
現代日本の普通の高校生の人間関係をこの世界に結びつけていいかはわからないが、そういう仲間がまたできるかもしれないと思うとそれはそれで楽しいのかもしれない。
「楽しんでいい状況なのかは怪しいんすけどねぇ…」
まぁ未来がどうなるかなんてわからない。とりあえず今考えなきゃいけないのは、いかにシャルロットさんの名誉を傷つけずに捜査を進めるかだ。
復学の日は近いし…やってみるしかないかぁ…。