帰ってきた乗っ取りゴースト
アルメリア王国バミアニア地方。王国北部のフランベルジュ家が代々支配する地域で、中でもフランベルジュ家が直接統治する都市テトラゴナムは芸術・文化の発信地としては王都以上の隆盛を極めている。(原文ママ)
馬車に揺られながらシャルさんの地元に関する情報を送ってもらったメールを目が丸くなるほど読み込んだりしつつ、ようやく私は目当ての場所へと辿り着いた。目の前にそびえ立っているのは、やんごとなき身分であることをでかでかと主張するような荘厳な屋敷。
まさにこれがシャルさんの両親が待つフランベルジュ家である。
「復学のために家を出る時は感じなかったけれど、こうして見るとかなり大きいのね……」
思わず呟いてしまったのを、ここまで連れてきてくださった御者が何ともいえない表情で見つめている。彼は両親が迎えに寄越してくれた人なので、私の記憶喪失(詐称)も知っているのだろう。
護衛の人たちはピンピンしているがそれ以外は目に見えて疲れている。もう夜も遅いし、さっさと中に入ろう。
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「無事帰ってきたか、シャルロット。その後調子はどうだ?」
多数の使用人を従えて私を出迎えたのはなんともご無沙汰の父、フィリップ・ド・フランベルジュ。傍らには母であるメリッサ・ド・フランベルジュもついている。前にこの家にいた頃は初日とあの食事会でしか揃わなかった家族が揃い踏みだ。もっとも私は偽物にすぎないのだけれど……。
しかし、やっぱりフルネームだと長いな……日本人名の取っつきやすさにはつくづく感心させられる。
「良い意味でも……悪い意味でも変わりありませんわ、お父様」
「少なくとも身体は大丈夫そうだな。記憶の方はまだ厳しいか」
「以前診ていただいた医師は、外傷もないし精神的なものだろうからその内治ると仰っていたけれど……その様子では先は遠そうね~まぁ気負うことはないわよ?無理に思い出そうとするのはよくないとの話もあるもの」
本当にごめんなさい。先は遠いどころか、そもそも記憶喪失が嘘だから思い出しようがないんです。
……しかし、前はいろいろといっぱいいっぱいで感じなかったが、シャルさんは結構家族関係が良好らしい。現代日本に生きる私の勝手な偏見だが、貴族はもっと冷徹な人々ばかりだと思っていた。実際身内の扱いが悪いエピソードとか世界史でたまに聞いたし……。
別にそれ自体はこの世界にも存在する現実なのだろうが、少なくともフランベルジュ家は良い方なのだろう。先生もそんなようなことを言っていたし。
「疲れているでしょう?ひとまず荷物を下ろしてくるといいわ~」
「そうだな。その後でゆっくり話をするとしよう……」
………………父親に話をしようと言われた時の異様な緊張感って、なんなんだろうね……。




