女子三人の即席捜査会議
「ヴィルジニー・アヴァラルド、セルジュ・ハマルティア、クレール・アーフェス…………確かに、悪い噂を聞くような方々ではありませんね」
「シャルロットさんも先生と同意見っすか……」
テオドールの見た三人の身元が割れてから先生は本人をそれぞれ呼び出してそれとなく事情を聞いたらしい。が、知らないの一点張り。こちらも証拠はあってないようなものだから突っ込んだ話もできなかったそうだが、現状そこまで不審な様子はなかったとか。
なので先生はレオンを、私はシャルロットさんを頼りに三人の人となりを探ろうということになったのである。
「まあ、人間は外面と実際の行動が結び付かないことも多いですから、まだわからないところではありますがねぇ。聞く限りレオンも相当タヌキですし、何を隠しているのだか」
「その観点で言うと先生とあなたも同類な気がするんすけどね。ちなみに、ヴィルジニーさん以外は初めて聞く名前っすけど、具体的にどんな人なんすか?」
「クレールさんの方は目立つ方ではないものの、優しい方という印象ですわね。穏やかですが行動力はあります。もう一人の方は接点がないので人となりについてはなんとも……」
名前だけは知っている、という感じか。クレールさんとやらの方も前に知り合いについていろいろ聞いた時に名前が挙がらなかった記憶があるし、接点はあっても友人というほどでもないのだろう。
ヴィルジニーさんの時も接点がないと言っていたが、その割に彼女について詳しかったのは未だ謎だが。
「そういえば、ハマルティアというとなかなか有名な家ですわね。当代の子爵は翻訳魔法の生みの親としてその名を轟かせている方で」
「ちょっと待つっすシャルロットさん、翻訳魔法なんてあるんすか?」
「ええ。なんでも、自身の何かを伝えたいという意思を魔力に同調させることで、それを取り込んだ相手はその人が認識しやすい言語に置き換えて聞き取ることができる…………という魔法だそうです。あまりの難易度の高さに普及はしませんでしたが、今までにない魔力の扱い方としてハマルティア子爵は一目置かれることとなったのですわ」
「なんとも面白い発想ですねぇ」
「正直そういう使い方ができるものとは思ってなかったっすよ。この世界における魔法って」
「それについては、わたくしたちも同じですわね」
壁を作ったり、炎を出したり、光らせたり……なんと言うか、物質的な要素のありそうな魔法しか使えないものとばかり思っていた。理科は不得手なので表現が正しいかはわからないが。
でもまぁ、世界を越える魔法なんてものが存在するのだから、そんなわけがないと気が付くべきだったか。
「…………ん?翻訳?」
「どうかなさいましたか?」
「いやよくよく考えると、今私たちの会話が成立してるの変だよなーって……イ○イレの世界編じゃあるまいし、住む世界が違うのに言語が同じなわけないっすよね…………?」
「………………あっ!」
「!?どうなさったのですか女神様!」
「蜂須賀さんが異世界暮らしに困らないよう天国謹製言語チートを付与してたの、説明するのすっかり忘れてました!」
「ありがたいけどなに大事なこと忘れてんすか!?」
どうりで文字を読むにも会話するにも苦労しなかったはずだよ!今までずっと日本語を扱っているような感覚だったが、本当は違ったということか?
「会話はおろか筆記にも対応している優れものです。私たちが下界の方々と関わる際に使っているのと同じものですね」
「……すると、わたくしの方にもなにか?」
「こちらに飛ばされてきた際、念のため目が覚める前に翻訳トコロテンを食べていただきました」
「何すかその怪しさ満天のパクり食品は」
大体なんでシャルロットさんは経口摂取なんだよ。
「…………なんかもう気が抜けたっすよ。聞きたいことは聞けたし、ひとまずこの辺で切り上げるっすか」
「そうですねぇ。シャルさん、電話切ったら二人でアニメでも見ましょう」
「いや仕事してくださいよ」
「ナギサの言う通りですわ。捜査は難航しているとはいえ、通常業務の方を溜め込んでいらっしゃるではないですか」
「手厳しいですねぇ……真面目に働くしかありませんか。それでは失礼しますね。蜂須賀さんも身体に気を付けて」
「無理なさらないでくださいね、ナギサ」
「はいはーい、じゃ切るっすよー」
ふう、これで私にできる範囲で容疑者三人の人となりは知れた。もっとも、結論としては犯人とは信じがたい……ぐらいしか出せないが。
しかし、電話で聞く限り自称女神とシャルロットさんの二人組はどうも相性が良いらしい。なんなら、自称女神の手綱を握るという点では私以上な気がする。シャルロットさんの方が真面目だからかな?
「…………ん?」
シャルロットさんというと、さっきの電話……
“ナギサの言う通りですわ。捜査は難航しているとはいえ、通常業務の方を溜め込んでいらっしゃるではないですか”
「私のことを、下の名前で呼んでいたような……?」




