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おっさん二人の即席捜査会議

「…………ヴィルジニーが?」

「ああそうだレオン、そういう目撃証言があった」


 目の前の僕を捕えた男の言葉に耳を疑う。


 何か捜査に進展があったのか、今日は指揮する立場にいるセビーチェン自ら僕を訪ねに来ていた。さて、何をどの程度話せばいいものか……と考えていた時に彼から告げられた話は驚きの内容だった。


 彼曰く、ヴィルジニーが深夜に学園に忍び込んでなんらかの資料を盗み出したという。叔父としても信じがたいし、そもそも彼女にそんなことをする動機もなかったはず。わけがわからない。


「見間違いじゃないのかい?叔父としての贔屓目ととられるかもしれないが、そんなことをできる子ではないよ」

「教師なめんな。んなこたぁ百も承知だよ。言い方は悪いが、あいつにそんな度胸はないわな。じゃあ見間違いかっつーと、それはそれでなさそうなんだよな……」

「それで?僕に何が聞きたいのかな?」

「他に疑いがかかっている連中も、俺から見ればこんなことしでかすような奴じゃないと思っている。実際本人達も否定してたしな。もし仮に自分の意思でやってるわけじゃないとすれば、なんらかの……それこそ、お前らの陰謀絡みの事件に巻き込まれている可能性もある。それを踏まえて、何か心当たりはないか?」



 心当たり、ね。……さて、どこまで話して良いものか。ヴィルジニーが巻き込まれたとすれば、目的は僕への牽制か。仮に捕まっていた場合に、僕が滅多なことを喋らないよう釘を刺すための。確かに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、想像以上に念入りに動かれてしまったか。


 セビーチェン達に協力するのはやぶさかではないが、今は状況が悪い。


「さてね…………知っての通り僕は彼らの目的については何も知らない。だからそんな騒ぎを起こして何の利益があるのか皆目検討もつかないが」

「検討もつかないねぇ……ならどう読む?昔は現場でブイブイ言わせてたんだからなんか予想はつかねぇのか」

「勝手だなセビーチェンは」


 まぁいい、迂闊に助言してヴィルジニーに危害が及ぶ羽目になるのは御免だが、想像の範囲でならそこまでわかりやすい進展もないだろう。


「ヴィルジニーたちがそんなことをした理由については脅迫か何かされた可能性があるが、流石に今は判断材料が無さすぎるから置いておくとして」

「そうだな。俺らも一番可能性としてあり得るのはそれだと思っちゃいるが、何をネタにしたか想像がつかん」

「目的の方も謎だらけだが……僕の依頼人との関連があるというのはたしかにありそうな話だね。そうなると、事件としては何かのきっかけに過ぎないとみえる」

「その心は?」

「僕への依頼に対して内容がだいぶ見劣りするじゃないか。ただの学生に任せるにはこの程度が限界だろうし、だからこそこうも早い段階で君たちにバレたのだろうけど。とにかく気をつけたまえよ。強化されたであろう警備をすり抜けるために生徒を使ったのなら、危ないのはシャルロット君だけじゃない。学園全体のはずだ」

「…………そうだな」


 言えるとすればここまでか。本当に推測混じりな点もあるが、手助けにはなるだろう。


 本当は真に奴らの危険な部分がなにか伝えたいところだが、彼らがそれを知ったとバレればヴィルジニーの身が危ない。連中の手口は脅迫よりよほどタチの悪い代物なのだから。


 彼女のためと思い誘拐に手を貸したが目的は果たせず、その上こんな危険な事件に巻き込む羽目になるとは……こんな貧乏神な叔父をもって可哀想に。


 まだ諦めたつもりもないがね。


「ひとまず俺はここでお暇する。またなんかあったら聞きに来るからな」

「そうかい、進展があることを祈っているよ…………あ、そうだ」

「どうした?言い残したことでもあったか」

「シャルロット君に伝えておいてくれ。“実家にも気を配るように”……ってね」

 

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