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忘れた頃に言及されても反応に困る

 アルメリア学園にも、当然休日は存在する。近場の領から来た生徒は実家に顔を出したり、護衛を連れて町に出たり。もちろん学園に残って過ごす人も多い。長期の休みが近いらしいので、見た感じ今日はまだ学園に残る人が多い印象だが。


 残念ながら私は後者だ。未だ勉強が追い付いているとは言いがたいし、この世界の常識に疎いまま外へ行く勇気もないので図書館に入り浸ることにした。別に勉強は好きでもなんでもないが、やらないでいるのは気分が悪くなるし。


「なんかもったいないよね。せっかく公爵令嬢の身体に入ったんなら、もっと外へ出て豪遊すればいいのに」

「うおっ…………テオドール、昼間にいきなり出てこないでほしいんすけど」


 突然現れたかと思ったらモノローグに割り込んできたテオドールに文句を言う。


「そんなこと言いつつ反応が淡白だよね。もっと驚いてほしかった」

「公衆の面前で……」


 自称女神への対応で慣れっこな私だからあの程度で済んだものの普通はもっと驚くところだし、そうなると端から見れば虚空に向かって驚いたり会話したりしている狂人にしか映らない。もう少し気遣ってほしいものだ。


 いやまぁ、向こうも小声で話しかけてきたし配慮する気はあったんだろうが……。


「それで、わざわざ出てきたということは進展があったんすよね。例の件」

「そうだね。とりあえず僕が見かけた三人は生徒の中から見つけられたよ。知らないだけで他にもいるかもしれないけどね」

「まぁそればかりはしょうがないっすからね……」


 さて、テオドールが見つけた不審者は三人か。よし、今日の予定は変更しよう。勉強よりも事件調査の方がよっぽど大事だ。


「じゃあちょっと付き合ってもらうっすよ。この辺の話は私より、先生にしてもらった方が話が早いっす」






──────────────────────



「というわけで、報告していた幽霊のテオドールをつれて参りましたわ」

「…………なんも見えないんだが」

「見えないだけでいるよ。ここにちゃーんと」

「うわまじだ、ガキの声がする」


 図書館へ行く予定を変更して資料室へ来た私は、テオドールと先生を初対面させた。存在自体はプラシドさん経由で報告していたとはいえ、半信半疑だったらしい先生は若干冷や汗をかいている。


「とりあえず、その…………お前さんが見たっていう不審な生徒が誰か、教えてくれるか?」

「探すついでに名前も控えてきたし、任せてよ」


 そういって先生はテオドールを机の方に招き、いかにも取り調べらしい体制をとりながら向かい合った。見えていないはずなのにテオドールへの誘導が自然に見えるのは、声で位置を把握しているのかな?


「しかしプラシドさん、よく先生に信じていただけましたわね」


 暇なので同席していたプラシドさんとの雑談タイム。ルシエラがいないのが残念だが、強引に首を突っ込んだだけの部外者なのでいなくて当然だし、今後参加することも多分ないだろう。


「それが、幽霊というのは魔法学的に真面目な研究対象らしく。セビーチェンさんも存在そのものには肯定的なようでして」

「そうなのですか?」

「昔からよく言われていたんだそうです。腕のいい魔法使いは死者の声すら聞こえるようになると。同じような言い伝えが世界各国であるらしく、迷信と切って捨てることも出来ないとか」


 腕のいい魔法使いは、か。そういえば、この世界は貴族というだけで既に魔法使いとしては上澄みなのだったか。幽霊の声を聞くのに実力が云々は初耳だが、それならルシエラやプラシドさんに声が聞こえたのもうなずける。


「……まぁ別に存在が立証されていたわけでもないですし、そこまで大々的に取り扱われる分野でもないそうなので、この事実はあまり浸透していないそうですがね…………自分も幽霊など信じてはいませんでしたし」

「魔法という摩訶不思議なものを扱う割に幽霊のようなオカルトに否定的なのも変な話「なっっっ!それは本当かテオドール!!」

「「!?」」


 

 会話を遮る先生の叫びに、思わず二人同時に先生の方に顔が向く。


「ど、どうしたのですか先生」

「ん、ああ、こいつから聞いた容疑者一覧に驚きの名前が上がってな……お前らも見てみろ」

「えーっと…………セルジュ、クレール、ヴィルジニー………………へ!?ヴィルジニー!?」

「その名前……!たしかレオンの!」

「ああそうだ、ヴィルジニー・アヴァラルド。誘拐に手を貸したレオン・アヴァラルドの姪……で、間違いないんだろ?」

「うん、図書館にいるところを見かけてばっちり確認してきた。その子が本を借りた時に名前も見れたし間違いないよ。なに?なんか重要人物なの?」

「重要も重要……こんなところで彼女の名前を聞くとは驚きですが…………」


 

 不審者の正体は生徒と聞いた時は、誘拐に絡んだ連中とは無関係な可能性も頭をよぎった。しばらくストーキングしていた相手とはいえヴィルジニーさんがどういう人間かは何も知らないが、ここで繋がりがあるのなら……高確率で私の事件とも絡んでいる……………………かもしれない。

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