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ごーすといんざしぇる

 後の事はテオドールに任せようということで、ルシエラと私はプラシドさんに連れられてこっそり寮に戻ってきた。


 なんとか肩の荷が下りたわけだし、日課の勉強はサボって一眠りしよう……としたところで、


「ん?もしかして鳴ってる?」


 ガラケーのバイブが身体に響く。まさかサボろうとしているのがバレてお叱りを…………ではなく、さっきまでの探索の報告を求めているのだろう。おとなしく出ようか。


「もしもーし、女神様ー」

「あら、やはりちょうど一段落ついたタイミングのようですねぇ。あなたの町の天国の女神ですよー」


 その名乗りも久しぶりなような。


「それで用件はやっぱり成果の報告っすか」

「まあそれもありますが、幽霊捕獲のくだりについていろいろ気になっていると思っていまして。ほら、状況が状況だけに説明をはしょってしまったじゃないですか」

「そういえばそっすね。じゃあまずは私から説明するっすか。じつはこれこれこうで………………」




──────────────────────



「……なるほど、それでしばらくはそのテオドール少年待ちですか」

「その名は聞き覚えがありますわ。訃報を耳にしたばかりでしたが……幽霊としてでも学園生活を楽しんでおられたのはまだ救いがありますわね」

「………………そうかもしれないっすね」

「それではこちらの話に入りましょう。疑問には思いませんでしたか?幽霊の声があなた方に聞こえたことも、防御壁が効いたことも」

「それはまぁ、当然気にはなったっすけど」


 自称女神が挙げた二つもそうだし、なにより自称女神が都合よくそんな情報を持っていたことも気になる。


「実はわたくしの疑問が発端となって、いろいろ幽霊と魔力についてわかったことがあるのです」

「シャルロットさんが?」

「ええ。少し前に彼女から、あなたの魔法の呑み込みが異様に早いことを指摘されまして。ほらあなたも授業かなにかで聞いたんじゃないですか?暴発の危険について」

「あっ……」



“記憶喪失によって制御の感覚を失って暴発…なんて事故は今でも稀にあるんだからな”



 案外スムーズに魔法を身に付けられたから忘れていたが、以前先生にこんなことを言われていたのだった。


 元の身体の持ち主であるシャルロットさんがついているという点で特殊なケースではあると思うが、それを加味しても私の習得ペースは異常……ということか?


「あなたの身体は元はわたくしの物ですから、魔力の扱いに長けているのはわかりますわ。ただ、魔法が存在すらしない世界から来たあなたが、操作の精度だけで言えばわたくし以上の魔法を扱えるというのは不思議でなりませんでした」

「操作の精度?」

「私も資料を取り寄せて調べたんですがねぇ、魔力って自分の集中力でもってコントロール下に置いてるらしく、自分から遠ざかれば遠ざかるほど扱いが難しくなるそうで」

「ああ、たしかに先生言ってたっすね。遠くで魔法を発動するのはシャルロットさんでもできなかったって」

「それを聞いて、試しにそっちの世界を担当してる知り合いに質問を丸投げしたんですよ。そうしたら…………“魔力は魂と馴染んで直接魔法に繋げるための意思を伝えているので、魂だけの期間が長く、外部から強引に身体の中に入った蜂須賀さんは魔力と同調しやすい体質になった可能性が高い”との返答が来たんです」


 …………よくわからないが、ゴースト生活やってたお陰で人より魔力をうまく扱える体質になったってことか?


「だとすると、テオドールに防御壁が効いた理由は?」

「それなんですがねぇ、さっきの話って要は魂が魔力に干渉しているってことで、逆もまた然りらしいんですよ」

「逆……“魔力も魂に干渉できる”ってことっすか」

「そういうことです。ちなみに質問した知り合い曰く、死者の声が鮮明に聞こえるのもこの現象によるものなんだそうで、魔力に満ちたそちらの世界特有の事象として担当の天国の神の間で共有されてたらしいです」

「お茶会の際、その話を元に、“それでは魔法を使えば幽霊だってどうとでもなるかもしれませんねぇ”だなんて言って様々なことを二人で妄想したのですが、まさかその時の考えの一つがそのまま活躍することになるとは思いませんでしたわ……」


 なるほど。それであの時瞬時に対応策を教えることができたのか。


 …………そういえば、未だ私たちの入れ替りをもたらした幽体離脱の要因は掴めていないわけだが。その論理で言えば、やはりなんらかの魔法を使った可能性が高いのではないだろうか……?

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