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二転三転する事態

「…………で、例の幽霊がそこにいらっしゃると」

「何も見えませんよシャルロット様!いや見たいわけでもないですがね!」

「いるよ。普通に」


 無事テオドールを連れて二人と合流することに成功し、彼らを引き合わせられた。


 まだ年若くみえる幽霊、テオドール・オフェイレーテス。おそらく享年は私よりもずっと早いと思われるが、実際の年齢がどうかは見た目ではわからない。私も永遠の17歳を標榜しているが、2005年生まれなので正確には20歳とも言える。肉体的な成長はしないので一概には言えないが。


 若くして死んだ悲しみを一切見せないその態度からは、見た目に反した貫禄が感じられた。


「見えない相手と会話というのは勇気が要りますね……ひとまず自分から質問させていただきましょう。テオドールさん、あなたはなぜこの学園に?」

「…僕元々去年この学園に入学予定だったんだけどさ、直前になって重い病気に罹ってそれで…………」

「……もしかして、幽霊としてでも通おうと?」

「うん。楽しみにしてたから、せめてと思って……しばらく一人で楽しんでたけど、会話どころか見える人まで現れて驚きだよ本当」

 

 この学園にとどまっているのは、学園に通えなかった未練を少しでも晴らそうとした結果だったか。


 死んだ後も現世にとどまり続ける魂は少数派だけれど、若くして死んだ魂は残ってしまいがちで、しばらく悲しみ尽くした後はゴースト生活をほんの少し謳歌した上で次なる生に身を預ける…………とかなんとか自称女神が言っていた気がする。そういう点ではやっぱり私と同類か。


 私の場合はかなり特殊なケースだとも言っていたけれども。


「服装と名前で察してはいましたが、やはり貴族の令息だったのですね!たしか子爵家の!」

「そうだね、僕もそこの彼女のこととか知ってるよ。有名なシャルロット・ド・フランベルジュでしょ?……………………そんな有名人の身体に今は余所者が入ってるとはね」

「何か言ったかしら?」

「なんにも」

「話を戻しますよ。とすると具体的に学園で何をしてらしたんですか?」

「図書館に忍び込んだり、授業にこっそり参加したりかな。生きた人間と話せるなんて今まで全然気がつかなかったし、それくらいしかできなかったよ」

「本当ですか?守衛にイタズラしたりしてません?」

「具体的には執務室辺りで先生と守衛さんを背後から襲ったりです!」


 



「……それ、僕じゃないけど…………」



「「「………………え?」」」


 テオドールの仕業じゃ……ない!?


「いやそれ本当ですか!?幽霊騒ぎで実際幽霊がいたのでは、どうしても疑わしく思えてしまうのですが」

「ちょっと待ってくださいプラシドさん、確かによく考えてみますと、これまで生者に干渉できることすら知らなかったらしい彼がこんな行動、起こそうとするはずありませんわ!」

「そ、そういうものなんですかシャルロット様!」


 これには実体験も含まれている。幽霊としての自意識が芽生えてから自称女神と出会うまでは、誰かとの関わりを持とうとしても一切持てない孤独感に苛まれていた。声が届くわけもなく身体はすり抜け、無意味と分かってからは一人遊びに終始していた。稀に危なそうな状況の子に声をかけたりしたことはあったけど。


 私が母校で七不思議の一つに語られていたということは、そういう時に声が届いてしまったことがあったのかもしれないが。


「もしかして、僕がその守衛を襲った犯人だと思ったから探してたの?」

「そうと断定していたわけではありませんが、幽霊でも不審者でもいたなら関連があるかもしれないと踏んで……でもその様子では、関係ないのでしょう?」

「僕自身は関係ないっちゃないけど、夜中に出歩いてる変な子なら見たよ」

「なんですって!?」


 夜中に出歩いている変な子!?まさか本命はそっちなのか!?


「テオドール、その話詳しく!」

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