ルシエラ、ちゃっかり参戦
「えー、本日はご協力ありがとうございますわ、プラシドさん」
「まあ命令ですし、怪しい予感がするのは同感なので」
「シャルロット様を害そうとするのであればたとえ幽霊であろうと排除すべきですからね!」
今私たちがいるのは学園内の、執務室へ続く廊下。草木も眠る丑三つ時……かはわからないものの、多分それぐらいの深夜。目的は勿論、幽霊騒ぎの真相を確かめるため。先生の提案で、プラシドさんと一緒に深夜の学校探検をすることになったのだ。
まあこちらの人員は私とプラシドさんしかいないわけだし、見つかれば上出来の肝試しぐらいのつもりで臨めば良いだろう。あまりに見つからなくて長丁場になるのも困るが。
「執務室で目撃されたという話でしたわね」
「帳簿等の重要書類が保管されたりもしているので、誰かが忍び込んでいる可能性は普通にありますね」
「それでしたら大事ですね!善は急げと言いますし、早くその幽霊を縛り上げませんと!」
「いや幽霊を縛り上げるってどうやるのよ」
……………………?
「なんかさっきからおかしくありません?」
「奇遇ですねシャルロット嬢、自分もそう思っていたところです」
「何かあったのですかシャルロット様!」
ほらやっぱり!プラシドさんと二人っきりの予定なのに、三人目の声がする!まさか件の幽霊……
じゃない、私を慕うこの喋り方はもしかして…………
「ルシエラ!?居たの!?」
「はい!シャルロット様のいらっしゃるところ、地の果てでさえもお供しますよ!」
「誰かと思えばアランのとこのルシエラさんか!」
そういえばルシエラとプラシドさんは接点があるのだった。察するにそのアランとやらがプラシドさんの元同僚の兄貴か。
「あのですねルシエラさん、あなたは寮の門限がある筈でしょう?そうでなくとも今はもう校内は閉めきっている時間帯なのに、なにをやっているんですか」
「最近プラシドさんとシャルロット様がよく一緒にいる所をお見かけするので、何かあるのではと思い探っていたらこのようなことに!」
「で、今日の目的が幽霊探しとわかって自分も混ざろうとちゃっかり会話に参加した……ということ?」
「さすがシャルロット様!その通りです!」
「えぇ…………」
ここまで来ると怖いよルシエラ。何かあるのではって本当になにがあると思って行動していたんだ?
「まさか彼女にこんな斜め上の方向の行動力があったなんて」
「…………それについてはシャルロット嬢は人のことを言えないと思いますがね」
「何か言いました?」
「いいえ別に」
なんだか聞き捨てならないことを言われた気がする……というのは置いておいて、ルシエラに背を向けプラシドさんを呼び寄せる。
「(……それでどうしますの?ここで帰してしまうのも、それはそれで面倒なことになりそうですが)」
「(そうですね……一応これ極秘ですし、咎めないかわりに口止めするのが一番良い落としどころかも……)」
「(よし、それでいきましょう!)」
「……ルシエラ、あなたこの集まりの目的はわかっているのよね?」
「はい!巷で噂の幽霊の正体を解き明かすのですよね!皆面白がっているだけの噂話と思っていましたが、その様子ではなにやら不穏な要素があるのでしょう?」
「あるかもしれないし、ないかもしれませんが」
「こうなった以上あなたにも協力してもらうわ。かわりにこのことは他言無用。いいわね?」
「もちろんでございます!不肖このルシエラ、張り切って参ります!」
「仲間が増えたのは良いけれど……先生の気持ちが少しわかったかもしれないわ。ルシエラが強引すぎて怖い」
「そう思うのでしたら今度からもう少し労ってあげてください……」




