許すまじ誘拐犯
「…えーと、過度な介入はしない方針なのではなくて…?」
「それは私たち神々サイドの話ですからねぇ。連絡する内容やあなた方の行動についてはなーんにも制限されてないんですよ」
「ざっる!」
私たちの面倒が増えた割に過干渉を防ぐ気が感じられない…!
「いやこれ、問題を解決する余地を残すためにわざと隙だらけにしてると思いますよ?ほら、私たち慈悲深いから」
「自称してるせいで説得力皆無っす!」
「けれど納得はできますわね。本音としては見捨てたくないが、他所への干渉を良しとするわけにもいかない…といったところでしょう」
「そういうことです。この話をした私の上司も、『あーあ、下界の子が勝手に解決してくんねーかな』って言ってましたし」
神様が他力本願とかかなり嫌だな…いろいろつっこみたい所だけども、そういうことにしておくか…
「…それで、犯人をとっちめてほしいと言っても当てはあるんすか?」
「犯人も動機もわからない状況ですが、当てはあります。シャルさんもあの時誘拐されていたという話でしたよね?この2つの事件、無関係と思えないんですよ。ここからアプローチできないかなーと」
「と言いますと?」
「世界同士を繋げるなんて誰かの意思によらずには起こらないはずなんです。私達がそうならないように手を尽くしたんですから…となると、そちら側の何者かの企みだとわかります」
「その何者かが誘拐犯ならわたくしが巻き込まれたことにも説明がつきますわね」
なるほど、だから私に任せるという話になるのか…こちら側で起きたシャルロットさん誘拐事件が鍵なら、直接捜査に出向けるのは私だけなわけだ。神様なら犯人が誰かぐらい分かんないのかとは思うが。
「無茶言わないでください。神の視点でも細かい事象は把握できないんですから…心の内を読むことも出来ませんし」
「そうなのですか?よくハチスカさんの心を読んでいますしてっきり出来るものと…」
「心は読めずとも鉤括弧の外にある文章を把握することぐらいは朝飯前なのです」
「なに言ってんすか…?」
よくわからないが、結局私が動かなければ解決しなさそうだ。不可抗力とはいえ他人の身体を奪ったまま生きるとか本人と親御さんに申し訳が立たないし。
「…とにかく、私がこっちで誘拐犯の企みを暴いて戻ってくればいいんすね?」
「理解が早くて助かります。誘拐犯は何らかの形で我々のセキュリティを突破する手段を握っているはずなので、それを掴めばこちら側へ来ることも可能でしょう」
「わたくしとしては見ず知らずのあなたに危険を侵すようなことはさせたくないのですが…」
「いいんすよ気にしなくて。このままじゃ私も帰れないっすし。腹括って頑張ってみるっす」
誘拐犯を相手取るのが怖くないわけじゃない。けど、この状況を放っておくわけにもいかない。あと不謹慎かもしれないが、長いゴースト生活に退屈していたから…というのもあるし。
「もちろん私達も協力は惜しみません。情報収集ならこっちでもできるので、相談事とかあればいつでもこちらの携帯に掛けて良いですよ」
なら鬼に金棒、異世界転移に女神様だ。私なんかに務まるかは甚だ疑問だったが、これで誘拐犯相手でも勝負になるだろう。
今日からシャルロットとして第2の人生を歩むことになる。願わくば、早めに解決して元のゴースト生活に戻れると良いな…
「あ、切る前に1つ。」
「何でしょう?」
「なーんで連絡手段がガラケーなんすか?」
「私の趣味です」