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閑話:とある公立高校での噂話

結構毛色の違う番外編です。

「なあ大瀬良、こんな話知ってるか?なんかうちの学校にも七不思議があるらしいぜ」

「なんだよ梵、そんな霊験あらたかな場所だったか?ここ」

「いやホント、長いこと語り継がれててつい最近も目撃証言があったんだって。3年の先輩が言ってた」


 ふーん。と軽く流しながら作業を続ける。表面上は興味がなさそうな反応をしているが、ずっとパソコンの画面を見続けるのも苦痛なので世間話をふってくれるのは正直ありがたい。


 今日は同じ生徒会の会計の友人と共に、学校行事の経費精算に駆り出されていた。普段は暇を持て余している生徒会も、行事の前後となれば大忙しだ。内申目当てで入ったのを後悔しそうになる。


「じゃ実際どんな七不思議があるってんだよ」

「おう、まず1つ目がな、怪奇!体育館裏に響く女の声!つって……」

「いちいちタイトルついてんのか」

「夜のもう七時になるぐらい、野球部の先生が失くしたボールを体育館裏で探してたときの話らしいんだが………どこからかか細い女の声が聞こえてきたらしいんだ。なんだなんだと辺りを見回すが誰もいない。そしてまた声が聞こえてきたから、今度はよーく耳を澄ましてみると…………」

「ふんふん」

「いちまーい、にまーい、さんまーい…と何かを数える声がはっきりと………!」

「それ学校の七不思議ってかただの皿屋敷じゃねーか!」


 おおよそこの手の七不思議に入る奴じゃないだろそれ。いやまぁ、夜中にそんな声が急に聞こえてきたら怖いっちゃ怖いだろうけどさ。


「あ、皿屋敷で思い出したけど、演劇部は今度の文化祭で番町皿屋敷やるらしいぜ。もうリハやってるって」

「じゃあもう犯人そいつらだろ」


 時間返せ!もう怪談でもなんでもねぇよそれ。


「で次が………」

「どうせ他もおんなじような感じだろ…」

「そうなんかな?神秘!調理室の鬼火!とか驚愕!歌い出す偉人の肖像画!とかいろいろあるけど………」

「そのタイトル全部についてんの?誰発信なんだよその七不思議」

「だから代々語り継がれてんだって。俺達も語り継いで歴史の歯車のひとつになろう」

「絶えたって惜しくねぇよこんなもん」


 てかさっきの皿屋敷の話に至っては今年の話なんじゃねぇか?本当に語り継がれたもんなのかそれ。


 梵も生徒会の先輩達もわりと友達相手にボケをかますタイプだ。ただふざけてるだけかもしれない。


「あ、そういや最近増えた奴があるらしいぜ。8つ目なんだがタイトルは確か……」

「おい待てなんで七不思議に8つ目がある」

「思い出した、恐怖!生死の間際に見た彼女は天使か死神か!」

「無視すんなっ!あとなんかそれだけタイトルの趣味違くねぇか!?」

「学生間の噂話なんてこんぐらいいい加減でいいだろ別に。タイトルは誰のセンスか知らねぇからなんとも言えないけどさ」

「………じゃあその8つ目はどんな内容なんだよ」

「なんか一人で夕方に自主練してたサッカー部の奴の話なんだけどな、ほら最近くそ暑いだろ、そいつも走り込みの最中に熱中症かなんかで立ってられなくなって、裏の茂みの辺りでぶっ倒れちまったんだってよ」

「普通に危険じゃねぇか。それでそれで?」

「意識も朦朧としてやべぇ、ってなった時に知らない女子生徒に声かけられたらしいんだ。大丈夫かーって」

「今んとこ怪談要素皆無だけど、そいつがなんかアレだったのか?」

「そうそう当たり当たり、そいつのことよーく見てみると……


全身血塗れでしかも半透明で浮いてやがったんだ!」



「それマジ話?熱中症のせいで見た幻覚とかじゃなくて?」

「本人もそうかもしれないっつってたらしいけど…でもそいつ、何年か前に死んだ生徒に似てるらしいんだ。一説によればその幽霊は、かつてこの学校で自殺した女子生徒が悪霊としてとどまり続けているんだとか………」

「なんだそりゃ。一体どこ情報だよそ………ん?なんか俺も聞いたことあるぞそれ」

「あ、マジ?やっぱ最近のだと皆知ってんのかな」

「…………でも俺が聞いた話だと、そいつは学校で殺人にあった女子生徒の悪霊だった気がする……」

「ありゃ、そうだったか?でも自殺と他殺じゃだいぶ違うだろ。どこで話が変わったんだ?」

「お前が言ったんだろ、学生間の噂話なんていい加減でいいって」

「確かに。じゃ気にすることねぇか」


 言い出しっぺが気にすることないかはどうなんだよと突っ込みつつタイピングを続ける。




「……なぁ梵、」

「どうした大瀬良、もしかして怖かった?」

「その最後の幽霊の話さ、自殺なのか他殺なのか………はっきりしねぇけど、そんな死に方だったってのに人の心配して現れたんならよ、滅茶苦茶良い奴なんだろうなー………なんてな」

「………そう言われてみるとそうかもな」


 ふと、自分達がこの学校を受験する少し前の年に、ここで何か事件があったらしいことを思い出した。ニュースか何かでチラッと見ただけだし詳しくは覚えていない。ただ、人が死んだらしいことだけ覚えている。


 そんなことがあったんならこういう噂も立つだろうと納得した。こんな怪談と結びつけられるのなら、もしかしたら滅茶苦茶良い奴という評価も案外間違いじゃないのかもしれない。





 名も知れぬ誰かだけど、そいつが安らかに眠れると嬉しい……………そう思った。

■大瀬良と梵

渚が死んだ二年後に入学した男子二人組。生徒会の会計をやってるツーマンセル。ボケの梵、ツッコミの大瀬良。


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