大捕物の果て
「もう少しすると下水道の点検路との合流地点だ。相当狭い通りだからたぶん直前あたりで大立ち回りやってんな」
「そんなに狭いのですか?」
「こんな侵入方法を知ってて誘拐の時使わなかったのがずっと疑問だったんだが、それが解決したくらい狭い。あれをお前運びながら通るのは無理だったろうな………………………見えた!」
先生が叫んだ先にはレオンと、それを塞き止めようとする憲兵隊の姿があった。壁に横たわって動かない憲兵もいる中、レオンは多勢に無勢をものともせず下水道へと突き進んでいる。
「おい!こいつらはお前がやったのかレオン!」
先生の声に反応してレオンは動きを止めた。憲兵隊も突然の静止を警戒して手を出すのを止め、にらみ合いがはじまった。
「別に死んではいない筈だ。これでも古巣の人間を手にかけたくはないんだ…見知った顔はいないみたいだが」
「妙な誘拐に手を貸した割に変に優しいんだなっ………と!」
言い終わると同時に先生はレオンに電撃を放ち、直撃の前に自身は剣を抜いて迫っていった。
背を向けていた筈のレオンは振り向いて電撃を防御壁で弾き構えていた剣で先生を受け止めた。お互い後退したところでレオンの背後を憲兵たちが狙い剣を下ろすが………
「同士討ちを恐れて魔法戦に持ち込めない時点でお前たちは未熟だ!」
自分への攻撃を視認もせず避けると憲兵の一人に剣を投げつけ、それに気を取られた彼らに向かって閃光を放つ。光の中で殴打音とうめき声が鈍く響き、晴れた時には憲兵は腹を抑えて立ち竦み、レオンは点検路側へと走り出していた──────
「ぐぁっ!?」
だが点検路側にいた憲兵に対峙する前に行く手を阻まれた。
私の防御壁によって。
「ハチスカ☆スピアバレット!」
防御壁にぶつかってよろけたレオンに弾幕を飛ばし、さらに先生も迫っていって肉弾戦を仕掛ける。壁を跳び回って避けられはするものの、レオンは目に見えて消耗していっていた。
「言い忘れていましたが、わたくしも戦闘要員ですわ!二度も同じ手を食うわけにはいきません、ここで往生なさい!!」
「そんな覚えはねぇぞ!!」
「水差さないでくださいよ先生」
勝手に言ってるだけなのはそうだけど、折角勢いづいてるんだからわざわざ突っ込まないでほしい。いやまぁ、悪いの私なんだけどさ。
「なるほど、君まで戦いに加わるのは想定外だったな……変な魔法も使ってくるし」
「変とか言うなっ!!」
「なんでそこにだけガチギレすんだよ」
「被害者の君がこの場にいるのは甚だ疑問だけれど、邪魔をするなら容赦は「「「おりゃあああああああ!!」」」
話し終わる直前、控えていた憲兵隊が一気になだれ込みレオンに飛びかかった!さしものレオンも成人男性十数名に全体重をかけられてはひとたまりもなさそうだ。
「うぐっ………何故急にっ!?君が塞き止めていたんじゃ……」
「あっ、そういえば道塞ぐ用の防御壁、集中切れたから消したんだった」
「そういうの忘れんなよ………まぁ良い、さすがにここまですりゃ目眩ましで逃げ出すこともできないだろう。今度こそちゃんと縛っとけよー」
「「「はい!!!」」」
なんとも終わりは呆気なく、レオン確保大作戦は私たちの勝利に終わったのであった。
■ハチスカ☆スピアバレット
小さな弾幕を複数出し、さらにそれを圧縮して針のような形状にしたものを回転させながら放つ、わりと殺意の高い技。横に弾かれると弱い。




