追跡者たち
「なっ、なんすかこれ!?」
レオンから放たれた謎の閃光。そして光が消えた時には、取り押さえられていた筈の奴が拘束を抜け、渡り廊下を疾走していた!
「ちっ!あの野郎あんな技持ってたのか…!すぐ追うぞお前ら!」
「「「はっ、はい!!」」」
先生が主導しレオンを追跡する。囮役だけを任されていた私もそれにこっそりついていった。話通そうとしたら絶対拒否られるだろうし。
渡り廊下を走り抜け着いたのは、図書館に通ずる巨大な扉。日中は完全に解放され出入りを守衛が監視しているが、この時間は鍵もかけられ完全に閉めきられている。こっち側の避難路を使うには図書館の中に入る必要があるが…
「閉まってる…こっちに来た筈だよな……」
「セビーチェンさん!2階の窓が1つ開いてます!」
「そこか!んじゃ俺が窓から先に侵入して避難路側の奴らと挟み撃ちにする、お前らはこの扉の鍵をなんとかするんだ!はやまって壊すなよ!!」
そう指示を出した先生は壁面の装飾を伝って登り、館内に入り込んだ。着いていきたいところだけれども、正直私にあんな芸当は無理だ。
というわけでここで新技、ハチスカ☆スカイウォークを使わせてもらう。防御壁の応用で、空中に一瞬だけ足場を作る便利魔法。重みもあって集中力の維持が大変だし多用が出来ないのが難点だ。
まぁ新技といっても、シャルロットさん曰く比較的メジャーな魔法らしい。まさに車輪の再発明。意味合ってるかわからないけど。
ひょいひょいとこちらも館内へと侵入に成功すると、先生と鉢合わせた。
「あっ!お前なんでついてきてんだよ!囮役だけだっつったろ!!」
「ここまで来て引き下がってはいられませんわ。それよりも、早く追わなければ!!」
「あーわかったよ…ついてこい!後輩連中に追い付かれる前にな!」
備品を傷つけないようにだけ気を付けつつ図書館内を駆け抜ける。
「これアテがあって進んでいるんですか?」
「何年憲兵やってたと思ってるんだ。こんなもん勘と経験でわかる!」
「そんな当然のことみたいに言われても…」
「「ぐはぁっ!!」」
「ほらこっちで合ってた」
「えぇ……」
正直不安なまま迷いなく進んでいく先生にただただついていっていたが、確かに間違いなくこの先で戦闘が発生している…本当にアテになるもんなんだな。本職の勘って。
「あんな声が聞こえるあたり苦戦してるみたいだな…挟み撃ちにできるまで抑えててほしいもんだが」
「多勢に無勢の筈のレオンがどうしてそこまで圧倒しているのでしょう?」
「魔法を持ち出すとどうにも量より質の戦いになるからな。エリートだったレオン相手じゃうちの若いのたちも苦戦する」
「今さらですがこの作戦だいぶ危ういですわね!!」
避難路に私の嘆きが響き渡った。レオンの確保、本当にうまくいくんだろうな…………?
■ハチスカ☆スカイウォーク
前述の通り、圧縮した魔力を足場にして空を歩く魔法。1ヵ所につき10秒ぐらいしかもたないので飛んだりは出来ない。聞き覚えのある名前だが偶然の一致である。




