表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/61

綱紀粛正を切に願う

 先生が目を向けたのは部屋に入ったときから広げていた地図。どうもこの学園の見取り図らしいが…


「わたくし復学の時にも地図を頂いたのですが、それと内容が違うような…」

「だろうな。これは部外秘のより正確な見取り図で、生徒立ち入り禁止の空間含め大体網羅している。さっき話した地下とかな」

「生徒に公表しているものはその辺り省略されていますもんね」

「今回見つけた経路ってのはこれに丸く印を付けた所にある。2つある図書館地下保管庫それぞれに1ヵ所、あと本校舎地下から枝分かれして2つだな」

「それってどういった用途の道なのでしょう?」

「非常事態に希少な蔵書や人を秘密裏に逃がすためなんだそうです。この学園が建設された当初から存在したようですね」

「俺らも今回初めて知ったんだけどな」

「はへぇ!?」


 なんで教師と守衛が把握してないんだ!?聞く限り大分重要そうな道じゃん!またしても怠慢か?怠慢なのか?


「なんでそんなことになったんすか!?」

「まぁ簡単に言えば、避難路の存在自体が忘れ去られてたんだよな。ほら、この地図を見てみろよ、どこにも無いだろ?避難路の記述」

「あっ…先生が付けた印だけだこれ……」


 酷い話だなそれ。有用そうな設備を実質放棄しているじゃないか。いったい何故そんなことに…


「ここでちょっと歴史の授業だ。この学園の創設、今から大体何年前か知ってるか?」

「えーと…100年前くらい」

「正解だ。んで104年前、建設も終わり人員も配置していざ運営開始ー…となったところでとある事件が起きた」

「事件?」

「初代学園長の座につく筈だったクランヴィアという貴族に不祥事が発覚してな、そいつを降ろそうとする連中と保身に走ろうとする連中とでひと悶着あったらしい」

「ちなみに不祥事とは?」

「学園の予算を横領して賭博やってた」


 普通にクズだ!これ以上無いくらい分かりやすく悪人だ!


「でそんときのゴタゴタの最中に創設時の資料が一部行方知れずになって…」

「え、それまさか」

「建設時の図面とかそういうのの類いも紛失して、見取り図を新たに作り直すためにわざわざ内部を調査し直したんだそうだ。今見てる見取り図もその時に作られた奴が元になっているわけだな」



 

 ………全てを理解した。つまり今回見つかった避難路って、その時の調査で取りこぼしたせいで今の今まで忘れ去られていたのか。


 なにしてくれてんの?


「今回の調査結果はちゃんとしかるべき所に報告して、近々正しい見取り図があがってくる筈だ」

「そりゃまぁなによりなのですが…しかしそのような状況ならむしろよく見つかりましたわね」

「レオンの動向や押収品を元に色々と調べた結果です。お陰で当時の建築家による手記なども見つかって、用途も判明させられました」


 良いことかもしれないけれど、素直におめでとうとは言いづらいよ…。この学園不安だよ…。


「で、避難路の繋がる先についての話をするんだが」

「そういえば下水道に繋がっているのでしたか」

「そうなんだけどな、下水道の整備って大体30年前くらいにやったんだよ。だからうち(学園)の避難路とは無関係…の筈なのに、調査報告によればやたらときれいに繋がってたらしいんだよな」

「そんなことあります?」

「こっちに関しては記録が無いから捜査会議で出た仮説にはなるんだが、多分下水道のルートと避難路のルートが偶然一致して、元々想定してあった避難路の出口が潰された分下水道と繋がったんじゃないか………と」

「えぇ……」

「下水道の整備は公共事業だったのですが、問い合わせたところ特に工事中にそういった道が見つかったという記録は無いようです。おそらく面倒で見て見ぬふりしていたんでしょうね」

「ちなみに今回見つけた経路には最近人が通った痕跡がちゃんと見つかった。こうしてレオンのやり口は暴かれたわけだな」




 暴かれたのは良いけどさ………終わってるよこの国!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ