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現れた予兆

 事件当日についてはわかったものの、現時点で考察できることもあまり無いだろうということで、勉強の方に集中して一週間ちょっと。


 考査もあと2日後に控え、シャルロットさんと私のレベルの差を痛感しながら図書館から寮へ戻ろうとしていると、プラシドさんに呼び止められた。


「シャルロット嬢、少しお時間よろしいですか?耳に入れていただきたい話があるのですが」

「なんでございましょうか?」

「レオンのことです。実は昨日、またヴィルジニー嬢宛に手紙が届きまして」

「!」


 ついに動いた!前回の手紙は会いに行くと言いながら場所も時間も伝えていなかった。ということは、今度の手紙でそれが明らかになるはず。


 いったい何をしでかすつもりなんだ?レオンさんよ。


「案の定ヴィルジニー嬢と待ち合わせるための内容で、『5日後の深夜、一階渡り廊下外の中庭で会おう』……とだけ書かれていました」

「随分と簡素な…しかし5日後というのもわかりづらいですわね」

「手紙が発見されたのが昨日で、通常であれば今日生徒の元へ届くはずなので今日から5日後だろうというのが我々の見解です。レオンも元は学園の人間ですからその辺りも知っているはずですしね。警備は他の日も強めておきますが」


 なるほど…今日から5日後は確か、考査も終わり成績発表がある日で半休だとシャルロットさんは言っていた。たしかに会うには丁度良い頃合いだろう。そいつ姪に優しいらしいし。


「5日後の…深夜。曖昧な表現ですわね」

「そちらに関してはお手上げですね。親しい間柄でないとわからない領域なのかもしれません。人目につかない寮の門限の後なのではないかとは言われていますが」


 もっともな意見だとは思うが、そうなるとヴィルジニーさんどうやって寮に戻るんだろう。この間門限を過ぎて閉め出された時はプラシドさんのお陰でなんとかなったけども。


 まぁ実際には彼女の元に手紙が届くことはないわけだし、考える必要はないか。


「それでですね…生徒の皆様が考査を受けている時間に、我々憲兵隊が学園内にレオンの侵入経路が無いか片っ端から調べることになりました」

「…たしかに、学園内で会うと言っているということは中に入る算段がついているということでしょうね」

「それどころかもう既に何度か侵入されていると踏んでいます」

「はへぇ!?」

「というのもですね、前回も今回も届いた手紙に消印がなかったんですよ。ただ学園に郵便物を届ける際は必ず警備の目に触れる筈なんです」


 この世界における郵便配達のシステムはまったく知らないが、消印を入れるのは同じならそれがないということは直接投函したことになる。でも警備に気付かれていないということは既に侵入経路が確立されているということか…。


 やっぱザルだな。ここの警備。


「我々は考査中の、生徒が教室の外に出ることを制限される時間帯に活動します。後で報告すると怒られそうだと言われたのでこうして伝えましたが、あなたはとりあえず考査の方に集中してください」

「…とりあえずセビーチェン先生に言っておいて下さい。わたくしのことをなんだと思っているのかと」


 そんなことで怒らないよ私…。


「では自分はこの辺で失礼します。どうか無茶なさらないでくださいね」

「あ、はい。プラシドさんもお気をつけて…」


 これで近いうちに一歩事件が進展することが確定した。考査のこともそうだが、気を引き締めていかないと…!









「プラシドさんと何を話してらしたんですか!シャルロット様!」

「わきゃあ!?」

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