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閑話:皆の好物

「皆さんこうして巡りあったわけですから、折角ですしもっと親睦を深めるべきだと思いませんか?」


 作業通話中、自称女神がこんなことを言い始めた。


 たしかに言われてみれば、意外とお互いのことについて知らないことが多い。シャルロットさんのパーソナリティーについてはなりすましが出来るようにある程度は聞いているが、逆に向こうが私のことをあまり知らなかったりする。


 本来あり得ないはずの出会いなのだ。この際楽しみつくそう。


「そうっすねぇ。思えばゆっくり自己紹介も出来てなかったっすし」

「わたくしも…立場関係なく話せる相手というのは貴重ですし、良い機会ですわね」


 シャルロットさんの反応はなかなか重いな。たしかに仲が良さそうなのはルシエラぐらいだったし、ジャックは面倒くさいしでその辺り苦労してそうではある。


「まぁあまり私にトークデッキはありませんが…ベタですが好きな食べ物とかどうですか?」

「そうですわね…コーヒーが淹れることも飲むことも好きですわね。特にクイニーアマンと合わせるのが…」

「なんすかそのクイニーなんとかって」

「表面がパリパリで中がしっとりとした、バターの香り漂う美味しいパンですねぇ。こちらで言うところのフランス、ブルターニュ地方の伝統的な洋菓子だそうですよ」

「こちらにもあるんですのね!女神様は召し上がったことはあるのでしょうか?」

「ありますよー。なんやかんや日本でも定番の菓子パンですから」


 へー知らなかった。まぁ生前あまり洒落た菓子パンとかに手を出す機会もなかったし、仕方がないか。


「ハチスカさんは何がお好きなんでしょう?」

「私っすか?そっすねー、味噌煮込みうどんとか」

「それはまた渋いですねぇ。愛知のイメージが強いですけど、この辺りで食べる機会あったんですか?」

「いやお父さんがよく夜ごはんに出してくれて。お父さんも大好物だったみたいっすし」


 話していて急にお父さんの味噌煮込みうどんが食べたくなってしまった。まったく、もう二度と食べることは出来ないというのに無駄なことだ。


 元気にしてるかな…お父さん。


「良いお父様なんですのね…ちなみにウドンにミソとは?」

「うどんは小麦粉を捏ねて麺にして茹でた奴っすね。味噌は…説明が難しいっすけど、大豆と塩を発酵させた調味料ってところっすか」

「もっと厳密に定義することも出来そうですが、大体わかりますね。ちなみに私は…ちょっと多すぎて絞れないので時間をください」


 なんだそりゃ。まぁ天国の女神だし私たちの想像もつかない程のいろいろな経験をしてきただろうし、美味しい食べ物との出会いも沢山あったんだろう。

 そういえば自称女神が遊びに来るときのお土産、毎回内容が変わっていた気がする。近くで買ったっぽいもみじ饅頭はともかく、萩○月だとか白い○人とか…

 

 旅行が好きなのかな?自称女神は。


「あ、あれが大好物です私」

「お、なんすか?」

「黒○島」

「酒じゃねーすか!」


 食べ物っていうか飲み物だしそれ。さっきシャルロットさんがコーヒーの話してたけども。


「そういえば以前、妙に大きな瓶を片手にお菓子をつまみながらお酒を飲んでいましたわね」


 一応未成年のシャルロットさんの目の前でなんて姿を見せているんだあの自称女神は…。


 っていうかお酒があるなら飲ませてくれたってよかったのに。私今年で20歳だし。


「いやダメですよ。あなた身体は17歳のままだったんですから。幽霊でも未成年飲酒は厳禁です」

「そんなあ」

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