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生霊のシャルロット

「………というわけで、先生方に協力させてくれることになったっす」

「お手柄ですよ蜂須賀さん!守衛をとっちめるとか言った時にはどうなることかと………」

「生半可な手段では無理だったとは思いますが、流石に冷や汗をかくかと思いましたわ…」

「幽霊だからかきませんがね」


 あの後プラシドさんの協力もあってなんとか守衛にバレずに学生寮の自室に戻ることに成功した。綱渡りではあったが、これ以上ないくらいの成果が出せたと思う。

 もっとも、あくまでスタートラインに立てた程度で犯人には1mmも近づいていないのだけれども。


「これでなにか聞きたいことがあればいつでも聞ける環境が整ったわけっすけども、今は何かあるっすかね?」

「そうですねー…正直まだ質問できる段階まで達していないんですよねぇ」

「というと?」

「実は最近はちょっとアプローチを変えて調査を進めてまして。世界の隔たりがあるのではこちら側で犯人探ししてもどうしようもないですし。なのでお二人の入れ替りについて色々調べているんです」

「なにかわかったんすか?」

「原因はわからないんですが、原理ぐらいはわかったかもしれません。ときに蜂須賀さん、今元気ですか?」

「いきなり何すか?元気っすけども……」

「それは何よりですわ。一応聞いておきますが、そちらで目を覚ました後怪我が見つかったり体調不良が出たりはしていませんか?」

「それもないっすね」


 何故かしきりに体調を気にされるが、一体何が………そういえば今シャルロットさんは私の代わりに幽霊やってるのか。幽霊、幽霊……………ん?


「よく考えたら今シャルロットさんってどういう状態なんすか?私は死んで幽霊になったわけっすけども、シャルロットさんの場合私がこの身体で普通に生きれているあたり事情が違いそうなんすけど」

「よく気が付きましたね。ほぼ間違いないと思いますが……実はシャルさん、まだ生きてるんですよ。幽体離脱しちゃってますけど」

「生霊……とか言う奴っすか?あるんすね実際」

「いやそれがそうでもないんです。少くともこちら側での生霊というのは、致命傷を負ったりで死にかけて身体から魂が離れるケースが大半で、そこから身体が回復して魂も戻る感じなんですがシャルさんの場合そういうのも無くて色々謎が多いんです」

「ではわたくしが元の身体に戻れる保証もないかもしれないと………?」

「ああ、そこは心配しなくて良いですよ。最悪私がなんとかするので」


 おぉ…、急に頼もしいことを言われると温度差で風邪を引きそうになるな。基本はふざけた人なのに。まぁ自称女神が言うのなら本当に心配しなくていいのだろう。


「そうすると私がこの身体に入っちゃったのは、シャルロットさんが幽体離脱してる隙にうっかり空っぽの身体に入ったからってことっすか?」

「いかんせん前例がないので断定はできませんが、そういうことなんでしょうねぇ。ただそうなると、結局なんでシャルさんが魂を抜かれたのかという謎が残りますねぇ」

「女神様の話にもあった世界を越える魔法については一応存在だけは知っていましたが、魂を抜く魔法なんて見たことも聞いたこともありませんわ。こちらで魔法学関連の書籍を取り寄せてみたりもしたのですが情報はなく……こんなことをする意図もよくわかりませんし」


 確かに、公爵令嬢を拐うという点だけ見ればいくらでも動機を考察できるだろうが、それ以外の要素のせいで途端に訳がわからなくなってくる。


「ちなみにその世界を越える魔法についてはどういった理解なのでしょう?」

「存在だけ小耳に挟んだ程度なのであまり詳しくは知らないのですわ。もう使えなくなったとは聞いておりますが…この手の話はやはりセビーチェン先生に聞くべきでしょうね」

「なんの脈略もなく聞くのは無理がある気もするっすけどね。もう少し事件との関連を証明できないと」

「そうですね…それではひとまず事件当時の事について詳しく聞いておいていただけますか?憲兵の動きも含めて」

「任されたっす」


 憲兵の動き…思えばシャルロットさんが拐われてから保護されるまでそこまで時間が経っていなかったようだし、彼女も当時の事はあまり覚えていないらしいから確かめておくべきだろうな。どうせしばらくは暇だろうし。


「それじゃあ今回はこんなところっすかね」

「そうですねぇ。進展もありましたし、夜も遅いですし…」

「じゃあ切りま………」


 切ります、と言いかけたところで声が止まった。ふと、セビーチェン先生を説得した時に出た妙な予感が思い出されたのだ。



『それに、ちゃんと自分の手で立ち向かわないと全員不幸なまま終わる気がしてならないから…』



 何故あの時あんなことを言ったのか。少くとも、今の私にそんな予感を持つ理由は見当たらない。生前を思い返してもそう考える心当たりがなかった。

 

 私が覚えていないところで何かあったのだろうか?


 私の覚えていない…死ぬ前の一年に………


「ねぇ自称女神様、」

「もう包み隠さなくなりましたね……なにかありましたか?」

「私…生きていた頃なんかあったんすかね?」

「突然ですね。なんかって何でしょうか……?」

「あ、いや、わかんなきゃ大丈夫っす。変なこと聞いちゃったっすね。切るっす!」







───────────────────────








「ハチスカさん…最後は妙なことをおっしゃっていましたが、一体どうなさったのでしょうね?」

「…………………予兆が、現れたのでしょうか……」

「女神様?」

「こちらの話です……。お気になさらず」



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