情報源ゲットっす
「先生方についてはわかりましたわ。となると、ヴィルジニーさんを監視していたのは何故でしょう?」
「今回の事件で唯一関与がはっきりしてるのは学園の警備責任者だったレオン・アヴァラルドなわけだが、そいつは実家との折り合いは悪かったが姪であるヴィルジニーを大層可愛がっていたらしくてな。接触する可能性があるかもしれんと思って彼女宛の手紙を改めていたら、案の定こんなものを見つけた」
そう言うと先生は私に封筒を差し出してきた。
「もしかしてこれがその手紙で?」
「ああ。ちょっと読んでみな」
「…………近いうちに会いに行く。内容はこれだけなんですの?差出人の名前もありませんし」
「一応筆跡を調べたらレオンのものに近いという結果は出た。送り主なのは間違いないと思うが………」
シャルロットさんが感じていた彼らの確信とはこの事か。だがそれでも謎が多い。内容があまりにも簡略化され過ぎているし………
「これはいつ頃届きましたの?」
「事件後一週間経った辺りだな。お前は休んでいた頃か」
「そういえばシャルロット嬢は事件の後しばらく目を覚まさなかったそうですね。しかも記憶喪失になったとか………それで二週間程休んだと」
「そうだな。あの時期面会謝絶だったから事情聴取とかできてないんだが、お前何か当時のこと覚えてないのか?」
「いえ……どうにも思い出せず。というか面会謝絶だったのですねわたくし」
「無理もないだろ。記憶喪失もなかなか深刻みたいだしな。誘拐されたとき一体何をされたのかが気になるところだが……」
記憶喪失については嘘だけれども、確かにその時何が起きたのかもちゃんと明らかにしないといけない。私との入れ替りが起きたことや、犯人が向こう側と世界を繋げて何をする気だったのか………ただこの辺の情報を先生達に共有するのは無理があるのがもどかしい。
「話を戻すと、俺たちはレオンがまだ近くに潜んでいて、ヴィルジニー・アヴァラルドと会う機会を探っていると踏んでいる。つっても全力で捜索中だがなかなか進展がなくてな。向こうが動いてくれるのに期待するしかねぇ」
「憲兵としてはあまり事件が起きるのを期待したくはないですがね……」
「ちなみにヴィルジニーさんはなにも知らないのですよね?」
「そのはずだ。実家に話聞きに行ったりはしたが子供には口止めさせているし、手紙も届く前に回収して彼女の手に渡ることはなかったからな」
ヴィルジニーさん側はなにも知らない……じゃあレオンはどうやって彼女に接触するつもりなのだろう。あの手紙を見る限りいつ会うかもどこで会うかもわからない。
ヴィルジニーさんしか知らない何かがあったりするのかな。
「今後についてだが、ひとまず監視はこっちに任せてもらおう。あんまり大勢いて怪しまれるようなことになったらたまらん」
「とはいえわたくしにバレるようでは怪しまれずにすむとも思えないのですが」
「うっ!!」
「気持ちはわかるが……バレた本人の目の前で言うなよ」
「良いんです…事実なので………」
「話を戻すと、そうなるとわたくしは何をすれば良いのでしょう?」
「何か動きがあるまでは事件当日何があったかについて探ってくれ。今ある手掛かりはレオンとお前の記憶ぐらいだからな。聞きたいことがあれば言ってくれ」
「わかりましたわ!」
「ただ一つ言っておくが、一枚噛ませてやるとは言ったが公式に捜査に加わらせるわけにはいかねぇ。頼るのは俺とプラシドだけにしてくれよ」
まぁそれは仕方がないだろう。情報を流してもらうだけでかなり無理を通しているはずだ。ただ………
「非公式なのは妥当でしょうけど、そうなるとお二人はかなり危ない橋を渡ることになるのでは?」
「そこ心配するぐらいなら手を引いて欲しいんだがなー。まぁでもこっちとしても数少ない当事者のお前が力を貸してくれんのはありがたいからな」
「勝手に自分を巻き込まないで欲しいとは思いますけどね。ここまで来たら協力しますけど」
「何かあったらちゃんと伝えてやる。だから今日はもうこの辺にして寝るんだな。寮の門限過ぎてるし」
「へっ!?」
なんだって!?確かにプラシドさんを襲いに行った時点でだいぶ外が暗くなっていたけれども………
聞くところによると、門限を過ぎると寮の入り口を守衛さんが閉めてしまうらしい。閉め出された…………!
「…………プラシドさん、寮に入るの手伝っていただけます………?」
「えぇ…………」




