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敬われてないタイプの王子

「いやぁ、シャルロット様の新たな魔法は見ていて壮観でしたね!休まれていた時期に思いついたのですか?」

「え、ええそうなのよ…」


 ルシエラと昼食をとりながら昨日の模擬戦について振り返る。魔法についてはわからないことだらけだが、今の私でも弱いわけではないとお墨付きをもらえて本当によかった。

 戦う術を持たずに誘拐犯と対峙していたらこの借り物の人生は多分おじゃんだ。どんな奴かまだ全然わからないけど。


「でもそうなるともう炎は使わないのですか?」

「え?あー…………じ、実は熱で休んで以来炎の出が悪いのよ。調子が戻るまでは使いたくても使えないの」

「なるほど!そんなことも起きるんですね……!」


 口からでまかせだが、納得してくれて助かる。


「へぇー、僕との試合であんな変な魔法で戦ったのはそういうわけなんだ」

「はへぇ!?」


 うわビックリした………。恐る恐る声のする方を見上げてみると、案の定ジャックがいた。


「あ、いらしてたんですねジャック様!」

「良い機会だからもっと親しくなろうと思ってね。ご一緒していいかな?気を抜くと忘れられるみたいだし」


 まさか根に持っているのかこいつ。


「さ、流石にもう忘れませんわ」

「そうかい?瞬殺されたからその辺不安だったんだけど。良かった良かった」

「シャルロット様が攻勢に出てからは一瞬でしたからね!あっけなかったです!」

「君はもう少し手心を加えてほしいな」


 






───────────────────────


「…しかし、急に学園に来なくなった時は驚いたよ。競い合える相手は君ぐらいしかいないのに居なくなられたら困るからね」

「それは私もです!なんでも深夜に突然熱で倒れられて、公爵様に連れ帰られたとか…」


 へー、シャルロットさんが誘拐された日のことはそういう風に説明されていたのか。ルシエラが流行りの風邪とか言っていた辺りで察してはいたが、私にも伝えておいてほしかったところだ。


「けれどその日の夜のことはあまり覚えていないのよねぇ」

「二週間休むような病でしたからね!無理もありません!」

「お陰で僕は忘れられたけどね」

「やっぱり根に持っていらっしゃる?」

「根に持つというか単にショックなだけだよ。良い競争相手だと思っていたのに…」

「端からは勝手に突っかかっているようにしか見えませんでしたよ!」


 うっかり素で反応して記憶喪失を誤魔化すのを忘れてしまったのを申し訳なく感じていたが、やっぱり元からその程度の関係性だったのか…。

 なら別に気負わなくていいか。


「まぁあの時どんと来いと言って貰えたからね。今後はライバル…ってことでいいかな?」

「あの時は失言でしたわ」

「そこまで言う?」


 気分が高揚してあんな風に言ったが、よせば良かった。事件捜査を頑張らなければいけない状況で交友関係を広げている暇ないのに。絡まれたら面倒くさそうだし。




「とりあえず、覚え直してもらえて良かったよ。今後ともよろしくお願いするよ、シャルロット」

「「えー」」

「二人してそんな反応することないじゃないか」


 

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