先人達がいるらしい
「今日のあの試合は見事なもんだったよ。あんま勝手に動かないで欲しいがな」
「申し訳ありませんわ…」
「いやまぁ、俺もうっかり全員知ってる前提で動いちまったからな….」
不安だった模擬戦を無事終えた私は、今日もセビーチェン先生の補習に参加していた。あのジャックとかいう人のせいでうっかりフライングしてしまったりしたが、なんやかんや勝てたのでシャルロットさんの面目も保たれた。
「しかしどこで覚えたよあんな魔法。記憶喪失の状態で初見殺しとはいえジャックをああも瞬殺するとはな」
「実技があると聞いて急いで練習を始めたのですが、さすがに学生寮で炎だなんだを出すわけにもいかないでしょう?なにか攻撃手段がないかと悩んでいたらふと頭に浮かんだのがあれでしたわ」
シャルロットさん曰く、ジャックが氷の槍をぶつけてきたように出した魔力を別のものに変化させて攻撃に使うのが一般的な魔法使いらしい。ただ人前で初歩から練習するのは他の生徒に目立つし、自室でその手の魔法を使うのは危ないし…と悩んでいた時に、練習で魔力を圧縮させた白玉を見て思い付いたのがあれだ。
これ単体でもぶつければ十分痛いだろうし、そのまま弾幕にしてしまえば良いだろうといろいろ技を考えてみたが、案外上手くいくものだなー。
前に自称女神が空き教室にテレビを持ち込んで一緒にジーク○クスを見てたのが良かったのかな?
「いちいちなんか叫んでたのは何だったんだ?」
「技名です。たくさん攻撃方法を考え出したので、これを使って管理していたのですわ」
「それ本職の奴らもよくやる手なんだが実戦で叫ぶ奴あんまいないぞ」
それ何人かはいるって意味では?
「まぁ大体わかった。よし、今日の魔法史はお前のあの魔法に絡んだ内容にしてやる」
「絡んだ内容…前例があったりするのですか?」
「まぁあると言えばある。多分」
「その辺は曖昧なんですのね…」
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「………近年の研究では、人類が魔法を使い始めたのは2000年以上前ってのが主流だ。だが魔力という存在に気付いたのは1370年前とだいぶ後になってからなんだよな」
「ふむふむ、だとするとそれまではどうやって魔法を使っていたのでしょう?」
「起こしたい事象を念じるんだ。大まかな部分は今と一緒だな。だが当時の魔法は現代のものに比べだいぶ威力が劣っていたようでな…扱い方が確立されてなかったために魔力のロスが激しかったって説が有力だ」
確かに、この世界に来て魔法が存在するという話を聞いてから何かしら使えないかなーと試したこともあったが、使えるようになったのはシャルロットさんから魔力について教わってからだ。そう思うと当時の人類が魔法の存在に気付いたことは奇跡に近いんだろうな…
「体内から出した魔力を自在に動かせるとわかったのもこの頃だ。お前もさっき使った防御魔法なんかもな」
「すると、前例があると言っていたのもこの辺り?」
「鋭いな。防御魔法の応用で、魔力をそのまま敵にぶつける攻撃方法を使っていた魔法使いがいたって記載がある古文書があったりするんだ。似てるだろ?」
確かに、原理は同じ気がする。
「だが…わりとすぐ廃れたらしいんだよな」
「え、何故でしょう?」
「弱いから」
「へ?」
「弱いからだ」
………………………は?




