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ゼロから歴史を覚えるのは無理ゲーじゃないっすか?

「固有名詞は頭に入ってると思ったが…言葉の定義だとか時系列だとかがぐちゃぐちゃだな…しかもだいぶ最初の方から忘れてるだろ。公爵様からは何も言われなかったのか?」

「一般常識レベルまで忘れたとは…恥ずかしくて口が裂けても…」

「あー………そこまで話してねぇのか。なるほどな…」


 今日は例の補習の初日。やはりちょっとやそっと教科書を暗記したぐらいではどうしようもない程に知識が欠けているようで、めちゃくちゃ今後が不安だ。


「ま、それでも付け焼き刃にしちゃよくやったよ。んじゃとりあえず…ミスの多い範囲からやってくか」

「よろしくお願いいたします」





───────────────────────


「………239年前にピーター・オズロック博士は魔力が生物の意識に結び付いて様々に変化する物質であるとする学説を発表した。ま、その彼は学会を追放されてしまったが…この時の研究が後の魔法学に多大なる影響を残したわけだな。ここで問題、オズロック博士の追放にはある存在からの圧力があったとされるが…何のことか答えられるか?」

「わかりません!」


 意気揚々と補習に臨んだのは良いものの、さっき『付け焼き刃にしちゃよくやった』と言ってもらえたことにそんな訳ないだろうと突っ込んでしまいたくなるほどに全くわからない。

 生前は世界史選択だったから飲み込みぐらいは良いと思ったんだけどなー…


「もはや清々しいな!お前そんなんだったか?」

「この状況でプライドを持ちようがないので…」

「いい心がけではあるのか…?」


 あまりシャルロットさんに悪いイメージを残したくないので正直これは賭けでもあるが、補習の場ぐらいわからないとはっきり言わないと勉強しようがないのである。


「答えは教会だよ。あそこは魔法の存在を神からの授かり物だと定義しているからなー。まだあの頃は今より権力もあったし、信仰が揺らぐきっかけになりそうな学説は握りつぶすぐらいしてたわけだ。今じゃそんなことないから安心しろよー」


 そもそも宗教とか教会とかあったんだ…という台詞が出そうになったのをグッとこらえつつノートをとる。気付けば今日だけで4ページも使っていた。予告段階ではあまり時間をとらないと言っていたが、私が想像以上に忘れている(先生目線では)からかだいぶ長くなってしまった。

 くっ、ヴィルジニーさんのストーキングもしなくちゃいけないのに…!


「ま、こんなとこで今日は終わりにすっかな。記憶喪失でも飲み込みは良い方なんだからサボらずやってけよー」

「あら、わたくしがサボるとお思いで?」

「冗談だよ…あ、そうだ、明後日の魔法学実技の日だがお前大丈夫か?」

「へ?」


 実技!?初耳なんだが!?


「その様子じゃ知らなかったんだな…しかも模擬戦だぞ模擬戦。記憶喪失だろうがなんだろうが絶対授業までに感覚を取り戻しておけよ」

「…なんだかかつてない程に焦っていらっしゃるような…」

「当然だよ。この国が何故国民皆学か知ってるか?かつては魔法の暴発による事故が絶えなかったからだ。制御の仕方を身に付けてないせいで自分の魔法で死んじまう事件すらあったんだよ。そして…」


「記憶喪失によって制御の感覚を失って暴発…なんて事故は今でも稀にあるんだからな」


 

 …みんなそういうのもっと早く言ってくんないかな……………

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