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幽霊時代は楽勝だったんすよ

 シャルロットさんはあることを提案してきた。事件関係者の身内の身辺を洗って手掛かりを掴むというのだ。


「実はアヴァラルド家の者が同学年にいるのです。名はヴィルジニー・アヴァラルド。例の前責任者の姪にあたります」

「なるほど…私たちからアクセスできるとすればその人ぐらいっすか。でも姪とはまた微妙な関係っすね。何かわかるとも思えないんすが」

「周辺に異常がないかだけでも調べていただきたいのです。間違いなく彼女にも捜査の手は及んでいるでしょうし…」

「それで尾行ですか。まぁ直接本人に聞くのは無理があるでしょうしねぇ」


 


 …と、そんなわけで私がヴィルジニーさんとやらをストーキングすることに決まった…だがひとつ問題があった。


 突然だがこの身体、シャルロット・ド・フランベルジュは有名人だ。頭良い・顔が良い・人が良いの三拍子揃っている上に身分も高い。取り巻きがついていたりはしないものの、その一挙手一投足が誰かの注目を浴びている。

 ちょっと廊下を出歩いただけで、


「あら、シャルロット様!」

「今日もお美しい…」


 と、この始末だ。どうしても目立ってしまう。これでは尾行などもってのほか。どうしたものか…


「変装でもすれば良いのですよ!」

「へ!?」


 ビックリした!いたのかよルシエラ!!しかもモノローグのつもりだったのに聞かれてる!!うっかり声に出てた!!


「えっと…どこから聞いてたの?」

「『ちょっと廊下を出歩いただけで目立ってしまう』と言っていたあたりです!」


 良かった…尾行云々は聞かれてなかったみたいだ…

 しかし変装か。なかなか悪くないアイデアなのではないか?最悪尾行がバレても御本人様の名誉は傷つかないわけだし。ルシエラにはバレるかもしれないけど…


「しかし立場上仕方ないとはいえ皆の注目を集めることに悩まれていたのですね!まぁ確かに以前はいろいろと下心を持って近づく者もいましたからね!」

「え、ええそういうことよ…」


 理由付けもできたようで何よりだ。最後に言っていたことが気になるが…内容的にあまり突っ込みたくはないな。




 放課後、ルシエラを自室に招いて早速変装を試してみた。シャルロットさんは銀髪の清楚な色白美人といった見た目で、インテークのついた長髪がトレードマークだった。自称女神に言わせれば、


「一昔前の美少女ゲームのキャラみたいですねぇ」


 …だそうだ。

 とりあえず長髪をまとめてポニーテールにしてみる。


「これだけでわりと変わったんじゃない?」

「うーん、普段しない髪型ですがあまり雰囲気が変わっていない気がします!」


 ダメか。元に戻せるようにしないといけない関係上切るわけにもいかないし、なかなか難しいな。


「いっそ三つ編みにしてみましょう!これならだいぶ変わるでしょう!」

「あー…ちょっとお願いできる?」


 生前はずっとショートだったのでやり方が分からないのである。高校は運動部だったし、普段髪を切ってくれるお父さんのレパートリーがそれしかなかったから…


「できました!これならだいぶ変わったんじゃないでしょうか!あともう一押しというところではありますが!」

「何か髪型以外で変化をつけられそうな物は…あ、眼鏡なんか掛ければ良いんじゃない?」

「こんなこともあろうかとこちらにだて眼鏡が!」


 ビックリするほど用意が良いな。流石有能。

 早速掛けてみる。


「清楚な色白美人が大人し文学少女にクラスチェンジしたって感じね」

「これでバッチリでしょう!」


 これならストーキングにも邪魔は入らないだろう。意外となんとかなるものだな…


「何から何までありがとうね、ルシエラ」

「いえ!あなたの力になれるのはとても名誉なことなんですから!復帰以降は特に頼っていただけて嬉しいです!それではこの辺で失礼します!」


 自室に戻るルシエラを見送り、私は明日の準備を…

と考えたところで、少し違和感を覚えた。

 何かを忘れている気がする…わりと重要で、おいなんでそれ抜きで捜査できると思ったんだと突っ込まれそうな何かを…












…………………あっ!


 私尾行対象の顔知らねぇ!

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