『統合世界』第3話・なぜにラテン語!?
私は、葛葉様とルシファーを執務室に呼び出した。
「主殿、わざわざの呼び出し、いかがなされたのですか?葛葉が力になれることならば、何なりとお申し付けください」
「我が主、サティーナよ!我に手伝いできることがあれば、なんなりと!」
葛葉様とルシファーは、私の前に立ち、私の言葉を待っている。
まず私は、葛葉様に話しかける。
「葛葉様、この『クロノシア公爵領』は、陰陽道や風水の要素を取り入れてます。東西南北に『四聖獣』を祀り、守護神としました」
葛葉様は、満足そうに頷く。合格ということだろうか?
「次に『鬼門』を守護するために『神社』を建立予定です。あと必要な要素として『裏鬼門』にあたる南西部に『教会』を建てるのはいかがでしょうか?私の陰陽道の師匠として、ご教示ください」
陰陽道や風水の基本は、厄を払い、運を呼び込むこと。
その上で、不吉とされる『鬼門』と『裏鬼門』を、どのように守るのかが重要となる。
「主殿、陰陽道の知識を、ここまで深く理解されていること、誠に感服いたしました。『四聖獣』を祀り、東西南北を守護させるとは、非常に理にかなっております。そして『鬼門』と『裏鬼門』の守護もまた重要な要素でござります」
葛葉様は、幼い見た目に似合わない知識を披露する……齢1000歳以上の妖狐だけど。
「南西部、すなわち『裏鬼門』に『教会』を設立する案は、大いに意義があると存じます。陰陽道では、裏鬼門は隠れた悪しき気が入り込む可能性があるため、強力な結界や聖なる場所で守護することが肝要です。『教会』を立てることで、この地に清らかな力が満ち、さらに安定をもたらすでしょう」
陰陽道の流儀に『教会』を使う。
葛葉様は、それを咎めることなく、柔軟に意見を受け入れてくれる。
私は、さらなる提案をする。
「それで『教会』に祀り『裏鬼門』を守護する者として、ここにいるルシファーが適任だと思いました。ルシファーは一度『堕天』して、改心して天使に復帰しました。陰陽道でいうところの『陽の力』と『陰の力』を持つ天使と言えるのではないでしょうか?」
葛葉様は、しばらく思案した後に、興奮気味に告げる。
「なるほど、主殿。ルシファー殿の力が陰陽道における『陰陽』の概念と一致するとは、実に見事なお考えです。確かに『堕天』からの復帰という過程において、彼女は『陰』と『陽』、両方の側面を経験されております。それにより『裏鬼門』を守護するにふさわしい存在……葛葉も、その考えに賛同いたしまする!」
私達のやり取りを聞いていたルシファーが、口を開く。
「我が主サティーナ、そして葛葉よ。我の『堕天』の経験が、この地の守護に役立つのであれば、喜んで引き受けよう!『陽』と『陰』……その両方を内包する力を持つ者として『教会』を設立し、『クロノシア公爵領』を守り抜くことを、ここに誓おう!」
ルシファーは、力強く宣言する。
「ありがとう、ルシファー!だけれど、あなたはまだまだ『陰』の力を引き出しきれてないわ。葛葉様と『教会』設立の作業を進めながら、陰陽道の概念を学んでほしいのよ!」
私は再度、葛葉様にお願いする。
「葛葉様、どうかルシファーを導き、『陽』と『陰』の力を持つ天使として鍛えてください」
葛葉様は頷き、得意気に宣言する。かわいい。
「かしこまりました、主殿。ルシファー殿の『陰』の力をさらに引き出し、陰陽のバランスを保てるよう、葛葉がしっかりと導いてまいりまする。ルシファー殿、これから一緒に学び、鍛錬を積んでまいりましょうぞ!」
葛葉様に語り掛けられて、ルシファーが応える。
「我は、陰陽道を学び、『陰』の力をさらに磨き上げるため、全力を尽くそう!この地を守る存在として、我自身も成長する必要がある。葛葉……いや『師匠』、よろしく頼む!」
ルシファーは葛葉様を『師匠』と認め、礼をする。
普段は見られないルシファーの真摯な態度に、私は好感を覚えるのだった。
「ただ『教会』を設立する際には、土地の気の流れや環境との調和を大切にする必要がありまする。『鬼門』に建立する予定の『神社』ともども、葛葉が監修し、最善の配置と設計を導き出しましょう!」
陰陽道の第一人者である、葛葉様なら安心だろう。
「ありがとうございます、葛葉様!どうか、『クロノシア公爵領』のために、よろしくお願いします」
私は、葛葉様の申し出に感謝する。
ここで『教会』の名前のことに思い至る。
「そうだわ!ルシファー、あなたを祀る予定の『教会』よね。あなたを象徴とする名前を付けてほしいわ!お願いできるかしら?」
ルシファーは少し思案した後、胸を張って答える。
「我が主サティーナよ!
我を祀る『教会』に名を授ける機会を賜るとは光栄である。では……
『ル ク ス・ノ ク テ ィ ス 教 会』
と、名付けるのは、どうだろうか?
この名はラテン語で『夜の光』を意味し、我が持つ『陽』と『陰』の力を象徴している!」
なぜに、ラテン語!?!?!?
……ま、まぁ、ルシファーのこだわりかも知れない。
「素晴らしいわ!ルシファー!『ルクス・ノクティス教会』ね!……あなたは『堕天』を経験しました。それは辛い経験だったと思う。それでも、あなたは乗り越え、天使として復帰したわ!どうか、我が領にいる『夜の闇に囚われてる人々』にとっての『光』となってちょうだい。領民の『心』の平穏をあなたに託すわ!」
ルシファーは感極まった様子で、決意を新たにする。
「おお、サティーナよ!そのような言葉を頂けるとは光栄だ。我の『堕天』の経験が、誰かの助けとなるのならば、過去の試練も意味を持つことだろう。『ルクス・ノクティス教会』を通じて、『闇に囚われた者』に『光』をもたらし、彼らの『心』に安らぎを与えることを約束しよう!」
ルシファーが、そう宣言し、葛葉様も頷く。
妖狐と天使。奇妙で、頼りがいがある『師弟』が誕生した瞬間だった。




