『統合世界』第2話・聖剣団とアカデミー
『クロノシア公爵領』として、新たなスタートを切った、私達の領地。
私は、執務室にアルテミスとペルセポネを呼び出した。
「二人とも、来てくれてありがとう。このクロノシア公爵領で、あなた達にお願いしたいことがあって呼び出したの」
アルテミスとペルセポネが、私の前に並び、軽く頭を下げる。
「サティーナ様、お呼びいただきありがとうございます。何なりとお申し付けください」
「サティーナ、あなたの頼みなら、何でもお受けしますわ。どうぞ、お話を聞かせてくださいませ」
アルテミスは真剣な表情で、ペルセポネは微笑みを浮かべながら、私を見つめる。
「まず、アルテミス。あなたを団長とした『アルテミスの聖剣団』は、新国王であるハーデス陛下が即位されたため解散され、陛下の近衛騎士団として再編されたわね?」
アルテミスは頷き、続きを促す。
「『クロノシア領』において、かつての『調達班』や『自警団』などの治安組織があり、元領主であるあなたを慕っているわ。その人達を集めて、新生『アルテミスの聖剣団』を設立してはどうかしら?」
私の提案を聞き、アルテミスは少し驚いた表情を見せる。
「……新生、『アルテミスの聖剣団』……ですか?」
「そう!あなたを団長として、公爵領の治安維持や住民の安全を守る騎士団とするの!いかがかしら?」
アルテミスは、決意に満ちた眼差しで私を見つめる。
「サティーナ様。そのような、お言葉をいただけるなんて……感謝の念に堪えません!『アルテミスの聖剣団』の再編成と、新たな役割を担うことができるのであれば、これ以上の名誉はありません。領民の方々が、今も、私を信頼してくれていることを誇りに思います!」
アルテミスが深く頭を下げ、決意を新たにする。
やはり、騎士としてのアルテミスは活き活きとしている。
「期待してるわ、アルテミス団長!」
私は、ペルセポネに目を向ける。
「次にペルセポネ。あなたには『王国』の最高学府として『ペルセポネ・アカデミー』を設立してもらったわね?」
ペルセポネは目を細め、『アカデミー』での日々を思い出しているようだった。
「この領地には、格式高い学びの場所が、まだないの。そこで、あなたの経験をもとに『ペルセポネ・アカデミー』の分校を作ってもらいたいのよ!」
私の提案を聞き、ペルセポネは興味深さそうに微笑む。
「……『ペルセポネ・アカデミー』の、分校」
「この『クロノシア公爵領』の未来を担う若者の為に『ペルセポネ・アカデミー』の設立をお願いしたいの。引き受けてくれるかしら?」
ペルセポネは、満足げに微笑みながら軽く頭を下げる。
「サティーナ、それは素晴らしい話ですわ!この領地に『ペルセポネ・アカデミー』の分校を設立することで、更に多くの若者に教育の機会を提供できることを誇りに思いますわ!……ああ、知識と教養を持った若者が、この地で育ち、未来を担っていく姿を想像するだけで胸が躍りますわ!」
ペルセポネは天を仰ぎ、未来の『クロノシア公爵領』の姿に想いを馳せる。
やはり、教育者としてのペルセポネは活き活きとしている。
「期待してるわ、ペルセポネ学長!」
『アルテミスの聖剣団』と『ペルセポネ・アカデミー』。
私達の目的は、それらの設立だけではない。
「そして、二人に確認するわ。この『エルドラド』には、まだ見ぬ『権能を持つ者』が、多数いると思うの。その全員が、権能を使いこなし、良い方向に活用してるとは限らないのが現状よ!」
そう。『貴族』と『民衆』を分ける『壁』。
それを打破する『権能の普及』こそが、私達の目的。
「『権能を持つ者』を保護し、権能の制御法や活用法を諭す役割を、『アルテミスの聖剣団』と『ペルセポネ・アカデミー』が担ってくれることを領主として期待しているわ!過去に『権能を持つ者』が引き起こした悲惨な事件を繰り返さないためにも、心のケアや道徳感を諭すことも必要だわ!」
私は立ち上がり、アルテミスとペルセポネに頭を下げる。
「大変な仕事だと思うけれど、あなた方を信頼してるわ!どうか、私に力を貸してください!!」
二人は頭を下げる私に驚いているようだった。
アルテミスが、しっかりとした声で答える。
「サティーナ様。私達を信頼して、このような大きな役割を託してくださること、心から感謝いたします。『アルテミスの聖剣団』が、ただの治安組織ではなく、『権能を持つ者』を導き、彼らの力を正しい方向へ導くための盾となるならば、それ以上の使命はありません!」
ペルセポネは、優雅に微笑みながらも、その声には力強さが感じられる
「サティーナ。あなたが、わたくし達に託してくださる責任は非常に重いものですが、それだけに価値があるものだと感じていますわ。『ペルセポネ・アカデミー』が、ただの学びの場でなく『権能を持つ者』の心の支えとなり、彼らが正しい道を歩むための指南役となることは、私の望みでもありますわ!」
頼もしい二人の様子に、私は思わず、感極まってしまう。
「二人とも、ありがとう!……アルテミス、私がしたかったのは、このような『領地経営』だったの。あなたと二人で挑んだ『領地経営』も得難い経験だった。けれども今は、大好きな『クロノシア公爵領』を、大好きな仲間全員で作り上げるのよ!」
アルテミスの目にも、涙が滲んでいるようだった。
「私も、このクロノシア公爵領を皆で一緒に作り上げることができることを心から楽しみにしています。サティーナ様が示される新しい道を、私たち全員で切り拓いていきましょう。そして、サティーナ様が望む未来を実現するために、私も精一杯、力を尽くします」
ペルセポネも私達の様子に頷いていたが、ふと、不安を口にする。
「……けれど、わたくし一人では、勉学を教えるには手が足りませんわ」
もっともだと思う。
「ペルセポネ。あなたに紹介したい人がいるの」
私達は、領民が集まっている場所に来た。
「たぶん、ここに……あっ!ごきげんよう『女史』」
『女史』と呼ばれた人物は、照れ臭そうに応える。
「その、『女史』っていうのは、慣れないので……」
「いいえ。あなたの功績は、それくらいに凄いです」
アルテミスが『女史』に賛辞を贈る。
「この方が『女史』なのですわね?」
ペルセポネの問いかけに、『女史』は驚く!
「……ペルセポネ、様!?」
そう。『女史』とは、元ペルセポネ宰相の護衛の魔法使いの女性だった。
しかし、こちらのペルセポネは、その記憶を有していない……どう説明すべきか?
「うーん。たぶん、わたくしは初めましてだけれども、あなたは面識があるのですわね?」
ペルセポネが、驚異的な頭の回転で順応し始める。スゴッ!
「……奇妙な巡り合わせですわね。どうかまた、わたくしと仲良くしていだだけると嬉しいですわ!」
ペルセポネは『女史』の手を取り、微笑む。
「……ペルセポネ様!私は『クロノシア公爵領』の皆さんの、お役に立つ道を選びました。ですが突然、護衛の任務を辞職してしまい、ペルセポネ様の事も心配だったのです!」
『女史』は、涙ながらに語る。
「ペルセポネ。『女史』は、あちらのペルセポネの命令に従い、『クロノシア公爵領』の領民に『権能で強化された魔法』を指導してくださいました。おかげで『クロノシア公爵領』が急激に発展したのです」
アルテミスが『女史』について補足する。
「それは、素晴らしいですわ!『女史』、なにを悔いる事がありましょう。あなたは立派に、責務を果たしたのですわ!」
ペルセポネの言葉に、『女史』は顔を上げる。
「わたくしは、この地に全ての人が学べる場所……『ペルセポネ・アカデミー』を設立します。どうか、あなたの力を貸していただけませんか?」
「……はい、ペルセポネ様。よろこんで!」
かつての『主従』は、世界線を越えて『同志』となった。




