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人の書〜エルドラド建国記〜  作者: 水井竜也(仮)
第7章・女勇者アルテミスと鉄壁魔都の魔王様
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『鉄壁魔都』第11話・護るべき民

 やっと、頭痛が治まってきました。


 私、アルテミスは『魔王』を見ます。


「……『魔王』。あなたは、私の『何』ですか?」


 『魔王』は、一瞬だけ悲しい顔をしました。


 しかし、笑顔で話し始めます。


「……そうね。あなたは、今『女騎士』と『女領主』の記憶が混在して、記憶障害を起こしてるのかも知れない。そして『女勇者』の責務と『正義』の『欲求』に苛まれている」


 ……『正義』の『欲求』!?


「アルテミス、冷静に聞いてほしいの。私達は、いずれの『過去』においても、仲良く暮らしていた。そして『現在』も、この世界において問題を起こしていない。ならば『仲直り』することは、できない?」


 確かに『過去』と『現在』に問題がなければ、争う必要はないかも知れません。


 しかし『未来』は!……そう『正義』の心が囁くのです!


「あなたは『魔族』の他に『上級魔族』と言える存在を『召喚』して、この世界に圧力を掛けている!その暴挙を、私の『正義』の心が許さない!!」


 『魔王』は頭を振り、穏やかに否定する。


「……誤解よ、アルテミス。『上級魔族』……『ソロモンの悪魔』は、領民の『暴走』を抑えるために、そしてこの世界の住民との『接触』を避けるために『召喚』したのよ」


 私は、権能の覇気をまといます!


「そんなこと、口では何とでも言える……『魔王』よ!私に、あなたの『正義』を見せなさい!!」


「くっ……アルテミス!」


 『魔王』は『大鎌』を『召喚』する。


 私は、さらに権能の力を高めるために、口上を述べます。



「我は、女神『アルテミス』の加護を受けし者!


 闇を切り裂く、一筋の月光!


 この世に仇なす『魔王』よ!


 守護神『アルテミス』に代わって、仕置きつかまつる!!」



 私は光を屈折させる。それは分身のように姿をブレされる。


 そこにフェイントを織り交ぜながら、『魔王』との距離を詰める。


 これで、多少は『魔王』の『時間停止』に対抗できるはずです!


「甘いわ!『大鎌』の特徴は『間合いを制する武器』!!」


 ブオーーーンッ!!


 『大鎌』が空間を薙ぐ。


 ただそれだけで、光の屈折が霧散してしまいます。


 ならば、その内側に飛び込むべきでしょう!


 ……しかし!


 ガツンッ!!


「……驚きました。刃の反対側……石突きでの防御も良くできています。鍛錬の賜物ですね」


 権能や『種族補正』などで膂力は底上げできますが、技術は誤魔化しが効かないのです。


「……そう。『教育者』が、優秀なのよ」


 そう言って、なぜか『魔王』は優しい笑みを向けるのでした。


 その時!『魔王の城』の床が、崩壊します!


 私と『魔王』は、階下に落ちていきます!




 気が付くと、私は『魔王』を抱きしめ、倒れ込んでいました。


 背中が凄く痛い……『魔王』を落下の衝撃から庇った!?


「!!……アルテミス、あなた!咄嗟に私を庇ってくれたの!?」


 『魔王』が驚きます。私も自分の行動に驚くばかりです!


 その時、外から声が聞こえてきます。


「『魔王様』、お許しください。『魔王の城』が氷漬けになったり、ヒビが入ったりするのが見えて、居ても立ってもいられず、来てしまいました」


「ご無事ですか『魔王様』?我々ができることは限られていますが、あなたのお役に立ちたいのです!」


「ちゃんと『ソロモンの悪魔』さんに、守ってもらいながら来たよ!」


 それは、たくさんの『魔族』でした。


 ……いいえ!


「領主様!こちらに、いらしたのですか?」


「アルテミス様、よくぞご無事で……いや、怪我をしてるのでは!?」


「アルテミスさま!アルテミスさまが行方不明で、僕は不安だったんだよ!」


 侯爵領とは名ばかりの、本当に小さな領地でした。


 角や、牙や、爪が生えても、領民ひとりひとりの顔は覚えているつもりです。


 『クロノシア侯爵領』。それが私が守るべき、領地と領民でした。


「……みなさん、心配をかけました。私は……少し怪我をしていますが……無事です!」


 私は、『魔族』となって変わり果ててしまった領民達の、変わらない笑顔に包まれました。


「思い出したみたいね、アルテミス」


 『魔王』……いえ、我が『主』が言います。


「はい、サティーナ様……記憶が混乱していたとは言え、主に対して無礼を働きました。この命に代えましても償いたく存じます」


 サティーナ様に向き直り、騎士の礼を捧げます。


 不意に、剣の腹で、肩を軽く叩かれました。



「我が忠実なる騎士・アルテミスよ!


 あなたの剣は、誰のために振るわれる?」



 それは『王国』式の『忠節の儀』。


「……はい。我が主、サティーナ様のために振るわれます!」


 サティーナ様は微笑み、私に告げます。


「……そう、よろしい」







 ボクこと、ニョルズと『朱雀』様による、スカジさんとの戦いは膠着状態となっていた。


 『朱雀』様の炎の攻撃と『炎の再生』の権能で回復してしまうため、スカジさんの体力が削られているようだ。


「……はぁ、はぁ。最初に戦った時は『クイズ』などと、手を抜いていたな?こんなに厄介な相手だとは!」


『ほっほっほっ!あの時は「時間稼ぎ」が任務だったのじゃ。おぬしら六人相手だと、この老いぼれには荷が重かったのでな』


 『朱雀』様を侮ったスカジさんは、まんまと長期戦に誘い込まれてしまったのだった。


 ……あれ?これボク必要ない?


「……なめやがって!オレは『魔王』に『復讐』するまでは、止まるつもりはない!!」


 スカジさんが、権能の覇気を高める!


「オレの権能は『雪山の女神』!『冬の厳しさ』を司る権能!!」


 次第に周囲が凍結していく!ボク達も『夏』の権能を高めなくては!


「……お前達、()()()()()()()()()?」


 しかし、スカジさんの圧力が強くて、氷結が止まらない!!


「……強大な敵に打ちのめされたこと、ひとり孤独に戦ったこと……仲間や家族を皆殺しにされたこと!!」


 スカジさんは、何を言ってるんだ?


「そんなこと!『魔王様』には……サティ様には関係ないでしょう!!」


 ……もしかすると、元の世界の記憶?


「関係ある!オレの『復讐』を遂げることで、この世界は救われる!……この『ドワーフ族の宝珠』が、オレに『復讐』するための力をくれるのだ!!」


 『宝珠』は『種族補正』と『欲求』を高める効果がある?


 『欲求』を刺激された者は、過去の記憶がネジ曲がってしまう?


「『()()()()()()()()()()()()()()()()!!」


 そして『欲求』に従うのが正しいと誤認する。


 これでは『魔族』も『勇者』も変わりないではないか!


「それを阻む、お前達を倒す!!」


 スカジさんはバトルアックスを振り上げ、ボクに振り下ろす!


 ……ボクの身体は、真っ二つに引き裂かれた。


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