『鉄壁魔都』第10話・魔王の正体
大きな音と共に『魔王』の兜が割れ、装甲で覆われた顔が露わになりました。
「……お前は、だれだ!?」
スカジは驚きと共に『魔王』につぶやきます。
「オレ達が……前回の『勇者パーティー』が倒した『魔王』は、髭面のおっさんだった!お前とは、違う!!」
『魔王』は女性であり、その顔を見た瞬間、私は激しい頭痛に襲われます!
「『勇者』スカジよ!私は、サティーナ。この『荒れ果てた領地』と呼ばれていた『クロノシア侯爵領』に住む者。騙すようなマネをして、ごめんなさい」
葛葉様、ペルセポネ、ルシファーは「クロノシア侯爵領?」と首を捻っている。皆は『魔王』を知っている?
「……アルテミス、今は混乱してるかも知れないけど、この『クロノシア侯爵領』は、クーデターに敗れた世界線の私とあなたが『荒れ果てた領地』を発展させた姿なの。あなたは『クロノシア侯爵領』の領主であり、アルテミス・クロノシア侯爵その人よ!」
「……私、が……侯爵さま……?」
頭痛のために、うまく考えがまとまりません。
「つまり『女王様』として、葛葉達と過ごした世界線……平行世界の他に、アルテミス殿が治める『クロノシア侯爵領』の平行世界があった。そして『魔王』……主殿は、双方の記憶を有しているということでござりますか?」
葛葉様が話をまとめくてれましたが、私は混乱するばかりです。
「……つまり『魔王』、お前は何が言いたいんだ!?」
スカジが叫び、それにニョルズが答えます。
「スカジさん、ボク達は……今回『勇者召喚』された者は、『魔王様』の仲間です!ならば、争う必要はなかったのです!」
『魔王』はニョルズに引き継ぎ、説明を続けます。
「六大種族の『勇者召喚』に対して、この世界自体が『魔都召喚』と呼べる儀式を行っているようだわ。私と『クロノシア侯爵領』が『魔都』……つまり『魔族の都』として、私の仲間達が『勇者』として『召喚』されてしまったのよ」
『魔王』の説明に、スカジは納得できない様子です。
「そんな……『魔族の都』や『魔王』は頻繁に『蘇って』いるのではなかった?オレ達『勇者』と同じように、異世界から『召喚』されていた!?」
スカジは頭を振り、バトルアックスに施された『ドワーフ族の宝珠』を見ます。
「いいや!それでも、お前が、この世界に害を成す存在なのかも知れない!『魔族』や『魔王』は残虐な性格であることは、この世界の常識だ!!」
確かに、過去の『魔族』による被害は、各種族によって語り継がれています。私の『正義』の心が燻っているのを感じます。
「『勇者』スカジ、どうか冷静に。私は自身の権能……『運命改変』や『仲間との絆』を駆使して、『魔族』化した『クロノシア侯爵領』の領民達を統制している。現状、彼らの『破壊』の『欲求』を、私の権能で抑え込めていると言えるわね」
はたして、そうでしょうか?『魔族』より強い『上位魔族』がいたような気がします。
それらが『集結』する時を待っているのかも知れません。
「さらに『ソロモンの72柱の悪魔』を『召喚』して、万一に備えているわ。私の領民達が、この世界の人々に危害を加えることは『無い』と言い切れるわ!」
やはりそうだ!『魔王』は全ての軍団を『招集』し、一気に『世界征服』するつもりです!
……私の『正義』の心が、そう告げています!!
「……嘘だな!オレの『復讐』の感情が、そう告げている!!」
スカジが、叫びます!
「ええ!私の『正義』の心も、そう告げています!!」
私は、スカジの隣に並び立ちます!
『魔王』の企みがわかった今、我々は力を合わs……
「 こ の 、 わ か ら ず や !! 」
普段は大人しいニョルズが叫びます。
「スカジさんも、アルテミスさんも!『魔王様』……サティ様が、丁寧に説明してるのがわからないの!?あなた達と戦いたくないからって、領民の皆さんの無事を考えてるからだって、どうしてわからないの!?」
『魔王』が、困ったように話しかけます。
「ニョルズ、彼女らは『欲求』が働いていt……
「『欲求』が、何ですか!!」
さらに『魔王』に食ってかかる始末。
「この、わからずや達は、ボクが相手をします!『勇者』の名に賭けて、無辜の民を害する者を成敗します!」
子どもとは思えない覇気をみせるニョルズ。
その時、『魔王』の周りで回っていた赤い光の玉が、ニョルズに近付いて実体化します!
『ほっほっほっ……「勇者」ニョルズよ!お初にお目にかかる、儂は「朱雀」じゃ!お主の心意気に感心した。どうか、儂にも手伝わせてほしいのじゃ!』
それは『南の四天王』。燃え盛る身体と翼を持つ、クイズ大好きお爺さん!
「ありがとう『朱雀』様!」
「結局、オレの相手は、脚が綺麗な子どもと暑苦しい年寄り鳥か?……何故か、スカート丈が短い侍女服を着ているのも気に入らない」
スカジさんは視線をボクの脚に向けると、吐き捨てるように言う。
確かにボク、ニョルズは頼りないかも知れないが、『朱雀』様までバカにするのは、どうかと思う。
「あちらはサティ様とアルテミスさんの、主従の絆が試されています。あなたを足止めするくらいのことは、やってみせますよ!」
「……オレも安く見られたものだな」
そう言って、スカジさんは『雪上移動』の権能を使おうとする。
しかし所々、氷雪が溶けてしまっている。
「ペルセポネ!凍結の魔法を頼む!」
呼び掛けられた、ペルセポネさんを始めとした面々は……
「申し訳ないですわ。さっき魔力を使い果たして……」
「葛葉も、腰を打ってしまって……」
「我は元々、属性魔法は苦手で……」
「わ、妾も、空気を読んで使えなくなってな……」
なんだかんだ、理由を付けて断っているような?
「くっ、仕方ない!ならば見様見真似で、凍結魔法を再現するしかない!」
そう言ってスカジさんは、足元だけに魔力を集中して『雪上移動』を開始する!
「『朱雀』様!」
『おう!』
しかし、ボク達には通用しない!!
「ボクの権能は『夏の海や豊穣』を司る!氷雪よ、滅せよ!冬を堪え忍んだ者に『夏』の恵みを!!」
『儂は「朱雀」!南方の守護者にして「夏」を体現する者なり!!』
辺りの氷雪は溶け出し、スカジさんの『雪上移動』も困難になる。
そう。ボク達は『夏』の力をもって、スカジさんを止めようとしている!




