『鉄壁魔都』第7話・魔王の城へ
ここは『魔族の都』。
私達『勇者パーティー』は、ついに『魔王』の配下である『四天王』を倒したのです!
……うーん。『北の四天王』はスカジの挑発に乗り、相性最悪なのに自滅したような。残りの『四天王』は、時間稼ぎに徹していたような気もします。『南の四天王』とか『クイズ対決』でしたし。
『魔王』が『魔族』を集め、軍勢を整えていると言われている、中心部に行くべきでしょうか?
そう、思案していると、空から近付いてくる影があります。
三体の『魔族』!?……咄嗟に身構える、私!
……しかし『魔族』達は私達の前に降り立ち、ルシファーに礼を捧げる。
「ご無事で何よりです、ルシファー様!……『勇者パーティー』の皆さん、僕達は『魔族の都』に潜り込んだ『スパイ』です。ルシファー様の命を得て、『魔王』の動向を調査していました!……ですよね、ルシファー様?」
三体は、もしかすると『堕天使』なのかも知れない……いや、私は彼らを、特に真ん中の少年を、知っている!?……うっ、頭が!!
真ん中の少年が、ルシファーにウィンクしたような……?
「……あ、ああ。彼らには『魔王』の動向を探らせていたのだ。さっそく、報告を聞こうではないか!」
ルシファーが、ぎこちなく応えます。この世界に『召喚』されてから、頭痛のせいで勘が鈍っている気がします。
「はい、ルシファー様。ただいま『魔王』の軍勢は、中心部に集められています。しかし『魔王』自身は、あちらの塔……『魔王の城』にいるようです」
「……なるほど!軍勢を集めているのは、我ら『勇者パーティー』の目を誤魔化すためだと言うのだな!?」
……いつになく、ルシファーが冴えてるように感じます。軍勢と私達を戦わせ、消耗したところにトドメを刺すのが目的かも知れません!
「お前達よ。危険な中、よくぞ知らせてくれたな!……みんな、聞いてのとおりだ!『魔王』は『魔王の城』にあり!我は『勇者パーティー』による、『魔王の城』の強襲を提案したい!!」
私は、みんなを見回します。全員、頷いてルシファーの案に同意します。
「決まりですね!我々『勇者パーティー』は、『魔王の城』を攻略します。『魔王』が、そこにいると信じて!」
私達は、隊列を確認して『魔王の城』に向かいます。
「……アルテミスが、パイモン君を認識できていないのは、危険かも知れませんわ」
「……葛葉も、そう思い申した。いざとなったら……」
『魔王の城』の内部。
その禍々しい外観とは裏腹に、中はトラップが多いものの、行く手を阻む者は居ませんでした。
おそらく、最上階の『ボス部屋』の扉前。
「ずいぶん、あっけない攻略だったが、ここで最後!この扉の向こうには奴が、『魔王』がいるはず!……みんな『復讐』は、必ず果たすからな」
スカジが、バトルアックスを抱きかかえ『ドワーフ族の宝珠』に語り掛けているようでした。
それは『魔族』によって犠牲になったドワーフ達に、そして『魔王』と戦って死んだ前回の『勇者パーティー』に……
私も、ネックレスに埋め込まれた『人間族の宝珠』を握りしめ、祈りを捧げます。
「我が『主』よ!あなたの導きのおかげで、私は『魔王討伐』の任務を果たせそうです。どうか、私の『正義』の心を見守ってください!!」
その時、私は激しい頭痛に襲われます!!
『あなたの「忠誠」と、私の「庇護」。その二つが揃えば、きっと「真理」に辿り着ける!!……それぞれは「危うい」ものだけれども、支え合うことで真っ直ぐに進めるのだわ!!』
それは、我が『主』との、あの日の約束。
「……『忠誠』は、『正義』に至る。だけれど……それ単体では、『危うい』……?」
私の脳裏が、かき乱される!私は、何!?
『女勇者』?『女騎士』?それとも『女領主』?
ここは!『魔族の都』とは、『クロノs……
「なにを呆けているんだ、アルテミス!みんな、扉の中に入ったぞ!」
スカジの声で、現実に引き戻されます。
しっかりしないと……まずは『魔王討伐』の任務を果たす。
そう、私の『正義』の心が告げているのです!!
部屋に入ると、最奥に玉座と禍々しい椅子。
そして、それに座る漆黒の甲冑をまとう人物がいました……『魔王』に違いありません!
『魔王』は、私達『勇者パーティー』を見て、話し始めます。
その表情は兜の装甲に遮られ、判断できません。
「ようこそ『魔王』の間へ、『勇者パーティー』の諸君!そちらのドワーフは『勇者』スカジと、お見受けする」
「いかにも、『魔王』よ!オレは『勇者』として、『蘇った』お前を倒さねばならない……それが『かつて』、『魔族』によって犠牲になった人々と、お前と相討ちになった『勇者』達の『復讐』を果たすことになるのだ!!」
『魔王』は、スカジの宣言を、吟味しているようでした。
「『蘇った』、『かつて』、そして『復讐』……なるほど、あなたの考えは理解した!それと、褐色肌の葛葉様?分離に成功したのですね?」
『魔王』の興味は、玉藻様に移ります。
「そうだ!今の妾は、ワービースト族の『勇者』玉藻だ!それ以上でも、それ以下でもない!」
「なるほど、なるほど。恐らく、この『ゲーム』のイレギュラーは、あなたの存在ね……ニョルズ、お出でなさい!」
なん……だと……!?ニョルズも、この世界に!!
「はい、『魔王様』。ニョルズは、ここに」
「人道的立場から、この子を保護した。恐らくは『勇者』として『召喚』されたが、より強い玉藻様が『勇者』として優先された」
私達は驚愕し、スカジが声を上げる!
「そんな、脚が綺麗……じゃなかった、幼い子を人質に取るつもりか!?」
頭が痛い。状況判断が追いつかない。
『勇者パーティー』は、六大種族から輩出されるため最大六人。前回の『勇者』スカジを除けば五人。
私ことアルテミス、ペルセポネ、葛葉様、ルシファー、ニョルズの五人が『勇者』として『召喚』されるはずだった。
しかし、葛葉様と玉藻様の分裂が起こり、ニョルズの役割がなくなった?
混乱する『勇者パーティー』を尻目に、『魔王』がニョルズに告げます。
「ニョルズ、『勇者パーティー』に加わり、我と戦いなさい!」
なんと!……わかったことがあります。それは、この状況を『魔王』は楽しんでいる、と言うことです!
「我と戦え!」と言う『魔王』に対して、ニョルズは頭を振ります。
「いいえ『魔王様』。ボクは、この世界での『魔王様』の行いを見てきました。その結果、『勇者』ニョルズとして『魔王様』に、敵対する理由はありません!」
そう宣言して、ニョルズは、私達を見て告げます。
「……むしろ『魔族』の平穏を脅かす、『勇者パーティー』にこそ、問題があると思います!」
最後の『勇者』ニョルズは『魔王』に味方すると言います!
そして、満面の笑みで『魔王』に告げます。
「それに、ボクに『このゲームを特等席で見せてやろう』と言ったのは、『魔王様』ですからね!」




