『鉄壁魔都』第6話・北の四天王の怒り
「アルテミスよ、我が『主』の覇道の礎となるがいい!!」
ルシファーの殺意が、私を捕らえた!
その時、私の懐から我が『主』の『姿絵』が落ちる。
「!!……我が『主』の『姿絵』が!!」
あれは確か、『ガイア教』入信の記念品!!
「我が『主』の『姿絵』だと!?くっ、我の攻撃が当たってしまう!!」
ルシファーは驚き、咄嗟に攻撃を中止しようとする。
私は『姿絵』を庇いながら、ルシファーの攻撃を食らいます。
「くっ!!」
凄く、痛い。ですが、我が『主』の『姿絵』を守ることができました。
「……なぜ?そこまでして、我らが『主』の『姿絵』を庇うのだ!?」
私は、ルシファーに向き直り、告げます。
「決まっているじゃないですか!私も『主』を想う気持ちは、あなたに負けていません!……そしてこれは、あなたから頂いた大切な『姿絵』です。あなたと私の『同志』の証なのです!!」
「我が渡した……『姿絵』だと?あの時、確かにあなたに渡した我らが『主』の『姿絵』……我らは『同志』となったのに……」
ルシファーは、自分が置かれている状況に戸惑いを見せる。
目の前の私が、自分と同じように『主』への愛情と忠誠を持っていることを思い出したようでした。
「なぜ我はこんな……狂信に走ってしまったのだ?『主』のためと信じていたのに、それがいつしか歪んでしまったのか……」
ルシファーの黒い翼がゆっくりと畳まれ、彼女の瞳にはかつての清らかな光が戻りつつある。
その様子を見て、スカジがバトルアックスを収めて話しかけます。
「やっと『正気』に戻ったか、ルシファー!貴殿がその気なら、これからは同じ目標に向かって共に戦えるはずだ!」
私もルシファーに近寄り、手を取ります。
「ルシファー、私達にはまだ戦いが残っています。この世界を真に守るために、私たち『勇者』全員が力を合わせなければならないのです!」
私、スカジ、ルシファーは互いに手を取り、誓いを新たにする!
「……ああ、我も今一度、真の意味で、我が『主』に忠誠を誓う!そして、あなた達と共に戦うことを誓おう!!」
こうしてルシファーは、再び正しい道を歩む決意を固めたました。
天使族の軍勢も、彼女の指揮を離れ、正気を取り戻しつつあります。
……しかし、なぜ私は、我が『主』の名前を思い出せないのでしょうか?
ここは『魔王の城』。
『魔族』の王である『魔王様』に、囚われているという設定のボクこと、ニョルズ。
今日も『上級魔族』の皆さんが得た情報をまとめ、『魔王様』に報告します。
「『魔王様』、エルフ族の都に続き、天使族の都の問題も解決されたとの報告です。この世界の住人および『勇者』の皆さんは無事なようです」
『魔王様』は満足げに頷き、次の方針を告げます。
「『勇者パーティー』は、この『魔族の都』に侵攻してくるはず。たが、そのためには東西南北を護る『四天王』を倒さねばならぬ!その猶予で、我が『眷属』……『魔族』へと変わり果ててしまった領民達を、領都へ集め終えるのだ。我が領民が、この世界の住人を襲うことは、あってはならない!……ニョルズよ。皆に、『ソロモンの72柱の悪魔』に労いと共に、そう、伝えてはくれまいか?」
『魔王様』の心がこもった命令に、ボクは目頭が熱くなるのを感じた。
「かしこまりました『魔王様』。『上級魔族』の皆様には必ずや、このニョルズが『魔王様』の御心を伝えます!」
そう。『元いた世界』の『王国』の元宰相・パイモン閣下をはじめとした『上級魔族』の方々は、『魔王様』に『召喚』された存在だったのだ。
ボクは『魔王様』の元を後にする。
静かになった領主の館の玉座で、『魔王様』が兜を外す。
「あとは、アルテミス達が『欲求』に支配されてなければいいのだけれど……特に、アルテミスが一番『欲求』に忠実かもね」
『魔王様』は、天を見上げて宣言する。
「……『ゲームマスター』!私は、あなたには屈しない。『魔王』として、領民と仲間達を守ってみせるわ!!」
ここは『魔族の都』の北側。『魔王』が作り出した『迷宮』と呼ばれる塔の最上階。
私、アルテミスと『勇者パーティー』の面々は、いわゆる『ボス部屋』の扉の前にいます。
「葛葉様、玉藻様。確認ですが、『魔族の都』を覆う『結界』を維持している存在が、この先にいて、東西南北の『迷宮』を攻略すると『結界』が解けるということでしょうか?」
この『迷宮』。大量の罠は、あったもののすべて葛葉様が解除してくれたので、ほとんど被害はなく、ここまで来ました。
……いや、なぜか『宝箱の悪魔』に対してペルセポネが不用意に近付き、拘束されるということが頻繁にありましたが。
「左様でござります、アルテミス殿。あれは陰陽の術を応用した『結界』……ならば、彼の者が施したと見て間違いありませぬ!」
葛葉様に頷き、玉藻様に目を向ける。
「葛葉の言ったことに間違いはない。妾も『気』を読んでみたが、ここから『水』の『気』が発し、『魔族の都』全体と調和して『結界』となってるようだ」
玉藻様は、なぜか陰陽術を使えないらしいです。
しかし、その素早さは得難い物なので前衛として活躍してもらいます。
あと補足するならば、ルシファーは天使族の『種族補正』を得て、回復魔法を取得しました。これは『死者蘇生』も可能なので、『勇者パーティー』にとって、ペルセポネ以上に守らなければいけない存在と言えます。
頑丈な扉を前に、私は隊列を確認します。
「前衛は、私、スカジ、玉藻様。後衛は、葛葉様、ペルセポネ、ルシファー。こちらの世界にならえば『戦戦忍ー盗魔司』でいきます!!」
扉を開け、部屋の中に入った私達。
そこには冷涼な空気が漂っていました。
『……ふふふ、はははは。よくぞ参った「勇者」よ、我は貴様らを歓迎しよう!我は『魔王様』より、北方の守護を任された『北の四天王』である!!』
その最奥には、蛇のような尻尾を持った巨大な亀のような存在がいました。
「『魔族の都』の結界は、あなた達『四天王』が維持しているのですか!?」
私は『北の四天王』に問いかける。
『いかにも。どうやら、知恵が回る者がいるようだな!……ところで「勇者」アルテミスよ、我に見覚えはないか?』
突然『北の四天王』が私に、ささやいてきます。
「……いや、無いが」
私は言い放ちます。しかし、頭痛がします。
「……そうか」
しょんぼりする、『北の四天王』。
たまらず、スカジが叫びます!
「『北の四天王』よ、今すぐ『結界』を止めよ!そうすれば、貴殿を痛めつけずにすむ!」
その言葉を、挑発と受け取った『北の四天王』の権能の覇気が増します!
『……ドワーフの「勇者」スカジと言ったな?さすがに、我に対して不敬であろう!少々、懲らしめてやらないとならんみたいだな!!』
その瞬間、辺りが凍り付き、氷雪に覆われてしまいます!
「氷結……『凝固』の権能、『四聖獣』玄、b?」
そこまで思い出して、私は激しい頭痛に襲われます!
『ふふふ、はははは!どうだ貴様らに、この「北の四天王」が破れるかな!?』
頭痛でうずくまる私に、スカジが前に立ちます。
「みんな、ここはオレに任せてくれないか!……思い出したことがあるんだ!!」
『北の四天王』は、なおも侮辱されたと、怒り狂います。
『貴様ッ!我を舐めるのも大概にせよ!「時間稼ぎ」と言われていたが、格の違いを見せてやる!!』
辺りは吹雪が吹き荒び、零度の風が体力を奪っていきます!
スカジはニヤリと笑い、つぶやきます。
「『北の四天王』よ……震えたことはあるか?」




