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人の書〜エルドラド建国記〜  作者: 水井竜也(仮)
第7章・女勇者アルテミスと鉄壁魔都の魔王様

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『鉄壁魔都』第5話・信仰ゆえの堕天

 ここは天使族の領地の郊外。


 私ことアルテミス、スカジ、葛葉様、玉藻様、ペルセポネは『勇者パーティー』の最後のメンバーであるルシファーに会うために天使族の都を目指します。


「スカジ、私の仲間の中で、最も『欲求』の影響を受けるとタチが悪い性格をしてるのがルシファーだ。総力戦になると思う。『勇者パーティー』全員で、天使族の都に行こう」


 仲間達は頷き、スカジが応える。


「ああ、アルテミス。ルシファーの話を聞いた限りだと、その力と影響力は計り知れない。だからこそ我々で止めねばならん!オレ達『勇者パーティー』の力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられるはずだ!」


 都に近付くにつれて、異様な圧力を感じます。


「ここに来て感じる、妙な圧迫感がある。天使族の都も異変に巻き込まれているのかも知れないな。気を引き締めて行こう」







 私達は、天使族の都に到着します


 空には黒い雲が垂れ込め、黒い翼を広げ、堂々とした姿で現れる者がいます。


「……『勇者』達が来たか、久しいな」


 ルシファーは、その目には狂気じみた光が宿っています。


「お前達も感じているだろう?この『欲求』の波動を。我は、もはや天使としての枠を超え、純粋な『欲求』のままに行動している。これが、我の真の姿だ!」


 私達の周りでは、神々しい天使達が魅惑と混乱の表情を浮かべていました。


 しかし、その翼は黒くくすんでいます。


「やはり手遅れでしたか。ルシファー、あなたの『欲求』は『信仰』ですね?それが何故、天使族を『堕天』させているのですか?」


「ルシファー!貴殿まで、この『欲求』に支配されているというのか?オレ達は、貴殿を救うためにここに来たんだ!目を覚ませ!」


 私とスカジは、ルシファーに向き合います。驚くべきことに、ほとんどの天使族を堕天させたみたいです!


「ドワーフ族の『勇者』スカジと言ったな?……救い?ふふ、救いなど必要ない。我が、今感じているのは、この世界全てを支配する『魔王様』への『信仰』という至高の『欲求』!!」


 『魔王』への『信仰』!?


 ルシファーの突然の言い分に、頭痛を覚えます。


「確かに、あなたは残念な性格をしていましたが、その『信仰』は本物でした。なぜ『魔王』を『信仰』するのですか!?」


 ルシファーは、くつくつと笑います。


「知れたことを!我が『主』が『魔王』として立たれたのならば、それを支えるのが我が『信仰』!手始めに『魔王様』に敵対的だった天使族に我が『主』の素晴らしさを喧伝し『堕天』させた!」


 我らが『主』が……『魔王』!?


 あれ?私の『主』は……どなた、でしたっけ?……頭が、痛い!


「そして、この軍勢をもって『魔王』軍に加勢することが、我の『信仰』となるのだ!!」


 混乱する私の横で、スカジが叫ぶ!


「だが、天使族を『堕天』させてまで、その『信仰』を貫くとは……ルシファー、貴殿の『信仰』は、もはや狂気に染まっている!……セラフィオンが嘆くぞ!!」


 そうだ、私は『勇者』だ!この世界の人達や先代の勇者達に『正義』を誓ったのだ!!


「ルシファー、あなたの『信仰』が純粋なのは知っています。けれど、天使族全てを『堕天』させることが、『勇者』としての振る舞いだと?この軍勢を『魔王』に献上することが、我々が『勇者召喚』された意味だと思っているのですか!?」


 ルシファーは狂気に歪んだ笑い声を上げる。


「『勇者』……だと?我は『魔王様』の最も忠実な者であり、その『信仰』にすべてを捧げる。それが我が『使命』なのだ!『魔王様』のために天使族すべてを捧げ、軍勢として貢献する。それこそが『魔王様』の力になる……そう信じているのだ!」


 『信仰』の『欲求』に『暴走』するルシファーに、私達は『勇者』としての責務に燃えます!


「狂っている……!ただの献身ではない。貴殿の『信仰』は、独りよがりで『暴走』している!『勇者』として看過できない!!」


「ルシファー、あなたの『暴走』を止める!あなたも天使族を代表する『勇者』のはず!『欲求』に支配されていようが、『魔王』に加担するなど許されることではない!」


 私とスカジで、ルシファーに相対します。


「ペルセポネ、葛葉様、玉藻様は、他の堕天使達をお願いします!なるべく傷付けないように。ルシファーの影響下から脱すれば、元の天使に戻るはずです!」


 三人は頷き、手分けして堕天使達に向かいます。




「任せろ、アルテミス!ルシファーを『正気』に戻すために力を尽くそう。目を覚ませ、ルシファー!」


 スカジはバトルアックスを振りかざし、力強い一撃をルシファーに向けて放つ。


 彼女の筋力は尋常ではなく、地面が揺れるほどの威力だ。


「ふん、我が『信仰』が揺らぐことはない……『魔王様』のためならば、すべてを捧げよう!お前達が何を言おうと、我が『信仰』を止めることなどできぬ!」


 ルシファーは光と闇の力を織り交ぜた一撃を放つ。天使としての力を誇示するかのような強烈なエネルギーが、スカジの攻撃後の隙を突く。


「しまった!!」


 私は、身体をねじ込ませ防御する!


「ぐっ!!」


「アルテミス!!」


 確かに、ルシファーの攻撃は重い。


 しかし私達が『種族補正』を得た分、天使族の『種族補正』が少ないルシファーとは、相対的に差が縮まったのかも知れません。


「これなら、いけます!スカジ、集中を切らさないで!ルシファーの力は確かに強大だけど、私達なら抑え込めるはずです!」


 私は、月光の弓を召喚する。ルシファーの翼や手足を狙い、遠距離から動きを制限しようと試みる。


「アルテミス、奴を抑えてくれたか!この一撃で、『正気』に戻してやる!」


 スカジの攻撃が迫る中、ルシファー覇気を滾らせる!


「我は倒れるわけにはいかない!我が『主』のために、この身を捧げると誓ったのだ!」


 スカジのバトルアックスが振り降ろされる!


 しかしルシファーは柄を掴んで、その勢いを止めてしまう!なんたるデタラメ!


 ならば、私は月光の弓を引き絞る!


「ルシファー、あなたは『信仰』を勘違いしている!我らが『主』が望むのは、破壊や狂信ではなく、安定と繁栄です!目を覚ましなさい!」


 月光の弓矢を射ようとする、その瞬間、ルシファーから権能の覇気がほとばしる!!


 あまりの圧力で、スカジも私も吹き飛ばされてしまいました。


「……アルテミスよ、我が『主』を気安く語るなど、万死に値する!!」


 倒れ込む私に、ルシファーが迫ります!


 光と闇の奔流を最大限に高めるルシファー。


「アルテミスよ、我が『主』の覇道の礎となるがいい!!」


 ルシファーの殺意が私を捕らえた、その時……


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