『鉄壁魔都』第5話・信仰ゆえの堕天
ここは天使族の領地の郊外。
私ことアルテミス、スカジ、葛葉様、玉藻様、ペルセポネは『勇者パーティー』の最後のメンバーであるルシファーに会うために天使族の都を目指します。
「スカジ、私の仲間の中で、最も『欲求』の影響を受けるとタチが悪い性格をしてるのがルシファーだ。総力戦になると思う。『勇者パーティー』全員で、天使族の都に行こう」
仲間達は頷き、スカジが応える。
「ああ、アルテミス。ルシファーの話を聞いた限りだと、その力と影響力は計り知れない。だからこそ我々で止めねばならん!オレ達『勇者パーティー』の力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられるはずだ!」
都に近付くにつれて、異様な圧力を感じます。
「ここに来て感じる、妙な圧迫感がある。天使族の都も異変に巻き込まれているのかも知れないな。気を引き締めて行こう」
私達は、天使族の都に到着します
空には黒い雲が垂れ込め、黒い翼を広げ、堂々とした姿で現れる者がいます。
「……『勇者』達が来たか、久しいな」
ルシファーは、その目には狂気じみた光が宿っています。
「お前達も感じているだろう?この『欲求』の波動を。我は、もはや天使としての枠を超え、純粋な『欲求』のままに行動している。これが、我の真の姿だ!」
私達の周りでは、神々しい天使達が魅惑と混乱の表情を浮かべていました。
しかし、その翼は黒くくすんでいます。
「やはり手遅れでしたか。ルシファー、あなたの『欲求』は『信仰』ですね?それが何故、天使族を『堕天』させているのですか?」
「ルシファー!貴殿まで、この『欲求』に支配されているというのか?オレ達は、貴殿を救うためにここに来たんだ!目を覚ませ!」
私とスカジは、ルシファーに向き合います。驚くべきことに、ほとんどの天使族を堕天させたみたいです!
「ドワーフ族の『勇者』スカジと言ったな?……救い?ふふ、救いなど必要ない。我が、今感じているのは、この世界全てを支配する『魔王様』への『信仰』という至高の『欲求』!!」
『魔王』への『信仰』!?
ルシファーの突然の言い分に、頭痛を覚えます。
「確かに、あなたは残念な性格をしていましたが、その『信仰』は本物でした。なぜ『魔王』を『信仰』するのですか!?」
ルシファーは、くつくつと笑います。
「知れたことを!我が『主』が『魔王』として立たれたのならば、それを支えるのが我が『信仰』!手始めに『魔王様』に敵対的だった天使族に我が『主』の素晴らしさを喧伝し『堕天』させた!」
我らが『主』が……『魔王』!?
あれ?私の『主』は……どなた、でしたっけ?……頭が、痛い!
「そして、この軍勢をもって『魔王』軍に加勢することが、我の『信仰』となるのだ!!」
混乱する私の横で、スカジが叫ぶ!
「だが、天使族を『堕天』させてまで、その『信仰』を貫くとは……ルシファー、貴殿の『信仰』は、もはや狂気に染まっている!……セラフィオンが嘆くぞ!!」
そうだ、私は『勇者』だ!この世界の人達や先代の勇者達に『正義』を誓ったのだ!!
「ルシファー、あなたの『信仰』が純粋なのは知っています。けれど、天使族全てを『堕天』させることが、『勇者』としての振る舞いだと?この軍勢を『魔王』に献上することが、我々が『勇者召喚』された意味だと思っているのですか!?」
ルシファーは狂気に歪んだ笑い声を上げる。
「『勇者』……だと?我は『魔王様』の最も忠実な者であり、その『信仰』にすべてを捧げる。それが我が『使命』なのだ!『魔王様』のために天使族すべてを捧げ、軍勢として貢献する。それこそが『魔王様』の力になる……そう信じているのだ!」
『信仰』の『欲求』に『暴走』するルシファーに、私達は『勇者』としての責務に燃えます!
「狂っている……!ただの献身ではない。貴殿の『信仰』は、独りよがりで『暴走』している!『勇者』として看過できない!!」
「ルシファー、あなたの『暴走』を止める!あなたも天使族を代表する『勇者』のはず!『欲求』に支配されていようが、『魔王』に加担するなど許されることではない!」
私とスカジで、ルシファーに相対します。
「ペルセポネ、葛葉様、玉藻様は、他の堕天使達をお願いします!なるべく傷付けないように。ルシファーの影響下から脱すれば、元の天使に戻るはずです!」
三人は頷き、手分けして堕天使達に向かいます。
「任せろ、アルテミス!ルシファーを『正気』に戻すために力を尽くそう。目を覚ませ、ルシファー!」
スカジはバトルアックスを振りかざし、力強い一撃をルシファーに向けて放つ。
彼女の筋力は尋常ではなく、地面が揺れるほどの威力だ。
「ふん、我が『信仰』が揺らぐことはない……『魔王様』のためならば、すべてを捧げよう!お前達が何を言おうと、我が『信仰』を止めることなどできぬ!」
ルシファーは光と闇の力を織り交ぜた一撃を放つ。天使としての力を誇示するかのような強烈なエネルギーが、スカジの攻撃後の隙を突く。
「しまった!!」
私は、身体をねじ込ませ防御する!
「ぐっ!!」
「アルテミス!!」
確かに、ルシファーの攻撃は重い。
しかし私達が『種族補正』を得た分、天使族の『種族補正』が少ないルシファーとは、相対的に差が縮まったのかも知れません。
「これなら、いけます!スカジ、集中を切らさないで!ルシファーの力は確かに強大だけど、私達なら抑え込めるはずです!」
私は、月光の弓を召喚する。ルシファーの翼や手足を狙い、遠距離から動きを制限しようと試みる。
「アルテミス、奴を抑えてくれたか!この一撃で、『正気』に戻してやる!」
スカジの攻撃が迫る中、ルシファー覇気を滾らせる!
「我は倒れるわけにはいかない!我が『主』のために、この身を捧げると誓ったのだ!」
スカジのバトルアックスが振り降ろされる!
しかしルシファーは柄を掴んで、その勢いを止めてしまう!なんたるデタラメ!
ならば、私は月光の弓を引き絞る!
「ルシファー、あなたは『信仰』を勘違いしている!我らが『主』が望むのは、破壊や狂信ではなく、安定と繁栄です!目を覚ましなさい!」
月光の弓矢を射ようとする、その瞬間、ルシファーから権能の覇気がほとばしる!!
あまりの圧力で、スカジも私も吹き飛ばされてしまいました。
「……アルテミスよ、我が『主』を気安く語るなど、万死に値する!!」
倒れ込む私に、ルシファーが迫ります!
光と闇の奔流を最大限に高めるルシファー。
「アルテミスよ、我が『主』の覇道の礎となるがいい!!」
ルシファーの殺意が私を捕らえた、その時……




