『鉄壁魔都』第2話・暴走!獣人族の勇者!
ここは『魔族の都』の『魔王の城』の前。
『結界』に『魔王様』の映像を投射することになっていたけど、多くの人が訪れている。
皆、『魔王様』の演説を心待ちにしているようだった。
ボク、ニョルズも『魔王様』と一緒に壇上に上がる。
「どうも、みなさん。『魔王』です」
『魔王様』が挨拶する。『魔王』と名乗るのもどうかと思ったが、訪れた方々は拍手したり「『魔王様』!!」と声援を上げたりしていた。
「今回のこと、非常に不安に感じてると思います。
私達は異世界に迷い込み、この土地の『特殊な魔力』により、姿形が変わりました。
具体的には、角や牙が生えたり、目つきが変わったりしてると思います。
ですが、どうか『自制』をお願いします。
今のところ、魔力や膂力が強化されるだけであり、命に別状はないと言えます。
どうか落ち着いて、普段の生活を維持することを心がけてください。
不審な点、困った事があれば、お気軽におっしゃってください。
『結界』の外の様子は未だに不明です。どうか私を信じて、冷静な対応をお願いします」
『魔王様』は丁寧な口調で皆さんに語りかけ、集まった方々も『魔王様』の言葉を受け止めているようだった。
そこには、確かな信頼関係があるように思えた。
「皆への説明は、これくらいで良かろう。そもそも『強制的な魔族化・魔王としての狂化』なぞ、我には効かないのだ!」
『魔王様』は、そう言い、覇気をたぎらせる!
「……さあ、『ゲームマスター』よ!次は、どう出る!?」
『魔王討伐』の旅に出た、私、アルテミスとドワーフ族の『勇者』スカジ。
「ところで、オレ達は、どこに向かっているんだ?」
スカジが、聞いてきます。
「風の噂によると、今回の『勇者召喚』は、私のよく知る者達が多いみたいです。我々の知恵袋たる人物に会いに行きましょう。葛葉様は、獣人族かホビt……フィッツ族に『勇者』として召喚されたはず……」
なぜか、フィッツ族を言い間違いそうになると訂正されます。
フィッツ族とは、大人になっても子どもくらいの背丈の種族のようです。
軽快な身のこなしと幸運値が高いようで、ダンジョン探索の専門家と言えます。
この世界では、妖精の子孫だとか、ゴブリンが魔に堕ちる前の姿だとか言われているそうです。
「私達の世界では、伝承にあるホビt……やはり、発言することができないようですね。『世界の強制力』が働いているのかも知れません」
「……アルテミス、じきに慣れる。黒い丸を三つ描いては、いけない事と同じだ」
スカジは、同情するように私を見ます。
獣人族とフィッツ族の領地の境界で、小競り合いが発生しているようです。
「……えぇっとぉ?」
小競り合いと言えど、中心部では、凄まじい権能の覇気で二人が争っているようです。
「どちらが、その葛葉なのだ?」
私達は人集りをかき分けて、その様子を見ますが、さらに混乱してしまいました。
「どちらも葛葉様なのですが……これは、いったい?」
「どちらも、だと?」
なんと、小柄でピンク髪で白衣を着た封印状況の葛葉様と戦っているのは、褐色肌に金髪で黒衣を着た解放状態の葛葉様だったのです!!
スカジは困惑した表情で、二人の葛葉を見比べます。
「二人とも『勇者』だと?ありえない話だ。それとも魔王の罠か!?」
私に、葛h……小葛葉様が、私に話しかけてきます。
「アルテミス殿!ちょうど良かった! この黒色の偽物を、取り押さえる手伝いをして欲しいのじゃ!」
可愛らしい小葛葉様が、泣きそうな顔で訴えました。
一方、褐色肌の大葛葉様が妖艶に微笑みながら、話しかけてきます。
「このチビ獣人と妾を一緒にするなんて、片腹痛いわ。さぁ、お前達、どちらが本物か試してみなさいな!」
攻撃的なオーラを放ちながら、大葛葉様が牙をむく。
「こやつ、『勇者召喚』の際に葛葉と分裂して、さらに妖力に自我を乗っ取られて凶暴化してるみたいなのじゃ!」
「つまり『妖狐』の権能が強大すぎて『勇者召喚』された拍子に分裂してしまった、と?」
何となく話がわかってきました。ここは小葛葉様に加勢すべきかも知れません。
「そうじゃ!!そして、その状況にかこつけて、ワービースト族とフィッツ族が領土争いをしてるのじゃ!……そこのドワーフ族の『勇者』よ、あっちの黒い葛葉を止めて欲しいのじゃ!」
スカジと私は、黒い大葛葉様に向き直り、身構えます。
「……ふふふ。妾らは、こうであったではないか!強大なる力を長年、封じられていたのだ!今まさに、その力を取り戻し、天下に覇を唱える時が来たのだ!!」
スカジは大葛葉様に目をやり、バトルアックスを強く握りしめる。
「なるほど、分裂した上に『暴走』しているのか……ならば、止めるしかない!オレが黒いお前を打ち倒してやる!」
スカジは決意を固め、勇敢に大葛葉様へ向かって突進する。
「ほう、妾を止めるだと?力を封じられた、昔の妾とは違うということを、思い知らせてやる!!」
妖しい笑みを浮かべ、大葛葉様は強大な狐火を放ち、スカジに向かって襲いかかる。
「これくらいの火遊び、オレには効かん!」
スカジは、バトルアックスを横に振り、狐火をはじき飛ばす。
さらに一気に距離を詰め、大葛葉様に斬撃を加えようとする。
「覚悟しろ!!」
ドゴーーーンッ!!
スカジが振り下ろす斧による、強烈な一撃!!
衝撃は大地を裂く……が、大葛葉様の姿はない!
「くくく、妾の身体能力を侮ってもらっては困るな!」
なんと、スカジの後ろに回り込んでいた!いつの間に!?
「その速さ……権能によるものと獣人族の『種族補正』によるものか!?」
「いかにも、ドワーフ族の『勇者』よ!妾は、獣人族……ワービーストの『種族補正』により、素早さと筋力を得たのだ!!」
獣人族。別名、ワービースト。
彼らは、主に狩猟を行う種族と聞きます。
その驚くべき特徴は、身体能力。
素早さと膂力に優れ、獲物を逃すことはないと言われています。
妖狐の『権能』と獣人族の『種族補正』が高次元で噛み合っている……強敵と言えるでしょう!
「獣人族の『勇者』でありながら、領土争いを煽るのか!?確かに、獣人族は粗野でケンカっ早いが、ガルザークはそうではなかった!!」
「ガルザーク?知らんな……妾が求めるのは『闘争』。その目的のために『勇者』の地位を使っているに過ぎない」
どう見ても『正気』では、ありません!
大葛葉様を倒し、獣人族とフィッツ族の領土争いを止めないと!!
「がぁぁぁぁっ!!」
スカジが、果敢にも大葛葉様に挑むも……
「遅いっ!!」
大葛葉様の素早さの前に、バトルアックスは空を切る。
「ぐっ……!さすがに手強いな……」
大葛葉様に、翻弄されるスカジ。
「スカジ、こちらも協力しましょう。力を合わせて大葛葉様を抑え込むのです!」
私は、スカジの隣に進み出る。
「頼む!この戦い、負けるわけにはいかん!」
スカジの決意は揺るがず、大葛葉様との激戦はさらにヒートアップする。
「かかってくるがいい!妾の力、受けてみよ!」
大葛葉様は妖艶に微笑み、炎を纏った爪を構える。




